6
「お邪魔しまーす……」
指紋認証とか最新セキュリティ完備の、美綺のお家。
ロケでしか入ったこと無いような豪邸に、百合葉はおっかなびっくり上がり込む。
「なんで、そんなビクビクしてるの?」
「うるさいわねっ。わ、私、こう見えて小市民なんだってば」
いきなり迎撃センサーとかに引っ掛かって、撃たれたりしないだろうか。
そんな杞憂は、リビングへ通されたら吹き飛んだ。
「わ。ホテルみたい……」
窓の外、眼下に広がる太平洋。
地球の丸さが分かるほどの、雄大な大海原から吹く潮風が、純白のカーテンを揺らす。
部屋の壁、全体の調度品も白を基調に統一されていて、空と海の青に、よく映える。
あとテレビが100型ぐらい。すごく大きい。
急に百合葉は、ジャージ姿の自分が恥ずかしくなってきた。
一応、美綺に持ってもらったバッグに、部屋着も入れてきてはあるけど……。
「ね、ねえ。勉強の前にさ、シャワー借りていいかな?」
学園から、走ってここまで来た百合葉。初夏でもあり、汗が気になる。
「汗臭いまま、こんなおしゃれな部屋にいるとか、羞恥プレイかなって」
恥ずかしがる百合葉。その胸元へ、美綺は顔を近付けて、
「そう? 百合葉の……いい匂いだけど」
イケメェン女子にしか許されない態度で匂いを嗅がれては、百合葉も真っ赤になるしかない。
「そ、それはアイドルですし!? とーぜん、気を遣ってますけど!?」
ちなみに百合葉の身体から良い匂いがするのは、天寿の人気商品(以下略)のおかげ。
とにかくシャワーを浴びるべく、お風呂へGO。
まさかお風呂も露天風呂だったり……とか思ったけど、さすがにそこまでは無かった。
百合葉がジャージに下着も脱いで、裸になって……ふと振り返ると、美綺も一緒に脱いでいた。
「……なんでいるの」
「いや、僕も汗を流そうかなって」
僕の家なのに、何を言ってるんだ……と、逆にきょとんとされてしまった。
制服を脱いで、上品な淡いパープルの下着を外してる途中の、美綺の肢体。
均整の取れたプロポーションへ、百合葉はちょびっとの嫉妬と共に、つい見惚れてしまい、頬を染める。
百合葉だって、何たって現役アイドル。モデル体型に、胸もわりと有って、スタイルには自信有るほうだけど。
美綺は身長も高い分、よりスタイルの良さが際立って見える。
「あ、あのさ。ほら、私ってばこの名前だから、よくイジられるんだけど」
前を隠して百合葉、赤い顔で、くるくる自分の髪先を弄ぶ。
「でもホントのことだから、まあ、テレビとかでも、わりとオープンにしちゃってるけどさ」
首を傾げる美綺へ、百合葉は照れながらごにょごにょ。
「私、百合っ気あるっていうか。普通に、女の子が好きなのよね」
「へぇ。そういうキャラで売ってるのかと思ってた」
今どきそんなの、驚くようなこと?という表情の美綺。
その動じなさからすると、百合葉が、美綺の裸にドキドキしちゃってることは、全く通じてないみたい。
平気な顔で下着も脱いじゃう美綺へ、百合葉は。
そんな、堂々と脱いだりしないでと。精いっぱいの、警告を試みてみた。
可愛らしく小首を傾げ、上目遣いで。両手を胸の高さに上げて、子グマみたいなポーズで、赤面しながら、
「お、襲っちゃうぞ? がおー」
……今度は、いつもクールな美綺のお顔が、真っ赤になる番。
「ば、ばかなコト言ってないで! ほら、背中流してあげるから!?」
動転しながら、百合葉の背を押して。2人裸で、お風呂へ入っていった。




