1/8
面会
「おじさん、おじさんってば」
「ん、ああ……」
「どうしたの? ぼーっとして」
「寝不足かな。昨日遅くまで映画観てたから」
「映画! どんなの」
「きっと君が知らない奴だ。インデペンデント系の」
「あー、じゃあ知らないや。私、ベタな奴が好きなんだ。興行収入ナンバーワン、全米が泣いた! みたいな」
「ははっ、昔よくあったな。そういうの」
「特にね、犬が出てくる奴。あれ、えっと、タイトルは……」
「愛しのマリリン」
「何それ、違うよ。百一匹わんちゃん」
「あれ、本当に百一匹いるのか」
「さあ? 知らない」
「数えてやれよ。犬、好きなんだろ」
「うん、ここから出たらやってみる。ねえ、頼んだの持ってきてくれた」
「それなんだが」
「うんうん」
「ここで買ったものしか持ち込めない決まりらしいんだ。だからできない」
「どうして……?」
「すまない」
「ねえ、謝らないでよ、私怒ってるわけじゃなくて、どうしてかって訊いてるのよ」
「……」
「どうして会えないのよ! ポコに会いたい。ポコと会わせて。会わせてよ!」