ALT杯決勝 その3
「大丈夫だったか、トーカ」
「うん!」
ほんっとこの人イケメン、ヒロイン(?)のピンチに駆けつけるなんてやっぱこの人主人公。
しかしこのまるで計ったようなタイミングの良さ、ホント兄に似てるなぁ。
後ろを振り向くと、少し遠くの丘にカゲロウさんが見えた。
「援護は俺がやる、いけ」
「りょーかい!」
即座に2振りの刀を創り出す。
出し惜しみはしない、材料は例の『??????』で!
硬さは絶対あるはずだからひたすらに刃を薄く鋭くする。
それに向こうは片腕を失ってる、これなら勝てる!!
「はぁぁぁぁっ!」
しかしどうしてもAGIが足りないため速度が遅く、すぐに対処されてしまう……はずだった。
カゲロウさんの放った弾丸がザックスさんが持っている大斧を弾き飛ばす。
「ちっ!」
しかしザックスさんは驚異的な瞬発力を見せ、即座にバク転をすることで斬撃を回避する。
それと同時に大量の武器を周りに突き刺し、その中から大剣を抜く。
その大剣で袈裟切りに斬撃がとんできたためその大剣目掛け2本の刀を全力で振りかぶる。
結果……大剣が滑らかに切断された。
「「は?」」
私はこうなることを予想していた。なんせ伝説の金属2種類の合金なのだから。
しかしカゲロウさんとザックスさんの2人にとっては予想外だったらしく、間の抜けた声が聞こえてくる。
その隙に返す刀で右手に持った刀を振るう。
「うっそだろ!?」
両手で持つ大剣を振り切った後のため反応ができず、ザックスさんの体に刀が吸い込まれていき、そのままザックスさんを両断した。
「……勝ったーーーーーー!!!!!!!!」
「みゅ? あぁ、勝ったんだ。弟子ちゃんお疲れ~」
この子また寝てたの……まぁいっか、ねこだしね。
「よくやった、おめでとう」
「うん、ありがと!」
はぁ、あの人が来たときはホントに死んだかと思ったけどカゲロウさんが来てくれたおかげで助かった……。
また貸しが増えちゃったな。
「さて、どうする?」
「ん? どうするって?」
「共闘するか否か、だ」
あぁなるほどね。
「いいの?」
「もちろんだ」
な、なんていい人なんだ……! まぁ前から知ってたけど。
このゲームじゃ滅多にいないスナイパーが仲間になるのはすっごい心強い。
「それじゃあおねがいします、カゲロウさん!」
「あぁ、よろしくたのむ」
こうして私は、仲間を手に入れた。
「ニヤニヤ」
あれからとりあえずはここで籠城戦することに決まって、カゲロウさんは最上階に行って索敵をしている。
……してるんだけど。
「ニヤニヤ」
「……」
カゲロウさんがいなくなったあたりからずっとしらすがニヤニヤしながらこっちを見てくるのだ。
「……なに」
「いやー、青春っていいね~」
「は?」
いきなりなにをいいだすんだこのねこは。
「ズバリ、弟子ちゃんはカゲロウさんが好きなんだね?」
「へ!?」
ちょ、ちょっとどゆこと!?
いきなりなにをいいだすんだこのねこは!?
「もうさっきのを思い出すだけでニヤニヤしちゃって」
今思えばねこなのに一目見るだけで「ニヤニヤ笑い」ってわかるのすごいな。
「いつも私とかが声かけても『ん』としか言わないのにカー君の時は『うん!』だもんね! プッ」
「い、いや、あれはその……!」
「も~、素直になっちゃいなよ弟子ちゃん」
いまのしらすの顔を顔文字で書くと「(・∀・)」←こんな感じ。
……イラっと来る。
けど今はちょっとそこを指摘する余裕がない。
「ね、好きなんでしょ?」
「や、あの……えっと」
「まぁまぁ、私に全部吐き出してみてよ、きっと楽になるよ♪」
「……絶対誰にも言わない?」
「もちのろん♪」
「それじゃあ」
しらすに話した。
あの圧倒的なイケメン力に惹かれていること、いったいいくつフラグを建てられたかわかんない。
「むふー、弟子ちゃんもオトゥメだねぇ」
「うー……」
言わなきゃよかったって後悔もあるけど、たしかにしらすの言った通りスッキリした。
人に言うと、こんなにも気持ちが楽になるんだね。
「ホントに言わないでね!」
「当然でしょ? 私は師匠なんだから♪」
そのとき、カゲロウさんが帰ってきた。
「半径3㎞に敵影はなし、しばらくは接敵なしだ」
「りょうかい、ありがとねカゲロウさん」
「あぁ」
ヤバい、さっきあんな話をしたばっかりだから顔が赤くなるのがわかる。
でもそれを見られたくないからとっさに俯く。
「どうした、具合でも悪いのか?」
カゲロウさんが心配してくれるけど、こればっかりはどうしようもない。
「にゃっはっは、あのねえカー君」
「なんだ」
きっと恥ずかしかったからだろう、いつもなら絶対しないようなミスを、私はしてしまった。
「弟子ちゃんはねえ、カー君が好きなんだってさ♪ だから恥ずかしくって顔をあげれないの」
「っ!」
そう、しらす、いや、デージーさんの性格から考えて言わないわけがないということを、失念していたのだ。
だから私はまずしらすを抱きかかえて……
「お、どったの弟子ちゃん、あ、もしかして怒った? まぁまぁいいじゃん、むしろきっかけを作ってあげた私に感謝してほしいぐらいだよ」
無言で窓枠に近づいていく。カゲロウさんの銃弾で窓が割れたところに。
「ん~? いったいなにを……はっ!」
どうやらしらすも気づいたらしい。
ちなみにここは7階だ。
「ちょ、ちょっと弟子ちゃん、それは洒落になんないかな~? ね、だからさ、やめよ? 早まっちゃダメだって」
窓枠に到着した。
ちなみにカゲロウさんは軽くフリーズしてる。あれで案外初心なのかも。
「で、弟子ちゃん、私が悪かったから、ごめんって、許……」
「バイバイ♪」
外に向かってしらすを全力で放り投げた。
「
う
ひ
ゃ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
!
!
」
その日しらすは、鳥になった。
悪は滅びた。




