ネズ太郎、チュー次郎、チョ三郎
「そしたら次はバラバラをします」
「は~い」
ついにホラー系に入っていくんだ……
「使うのはこれ、テッテテー、かいたいしんしょ~」
「へ? 解体新書?」
「そそ」
解体新書ってあのドイツ人医師ヨハン・アダム・クルムスの医学書"Anatomische Tabellen"のオランダ語訳『ターヘル・アナトミア』を江戸時代の日本で翻訳した書。西洋語からの本格的な翻訳書として日本初。著者は前野良沢(翻訳係)と杉田玄白(清書係)。安永3年(1774年)、須原屋市兵衛によって刊行される。本文4巻、付図1巻。内容は漢文で書かれている。ってやつ!?
「それって医学の本なんじゃないですか?」
「? 違うけど、これは魔導書の1種だよ?」
「へ~、ここではそうなんだ」
医学書を錬金術に使う道具にするって何考えてるのあの運営……
「え~と、まずネズミちゃんを用意してっと」
「チュイ♪」
「あ、かわいい」
ネズミってみんなばっちいとかいうけど結構かわいいよね。
「まず殺します」
「チュー!!」
「ネズミーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
なんで!? なんで殺す必要が!? 無益な殺生はやめて!
「だって生きてるのには使えないんだもんバラバラ」
「だからってネズミを殺す必要ないじゃん! 他のやつでもよかったじゃん!」
「まぁまぁおちつきなすって」
はぁ、はぁ……よし落ち着いた。ネズミ、君の犠牲は今日の晩御飯ぐらいまでは忘れないでやらんでもない……。
「んじゃするよ?」
「あ、はい」
「使い方はこう。まずは解体新書を適当なページに開いて」
あ、適当でいいんだ。
「そしたらこういうの。此よりは地獄。“わたしたち”は炎、雨、力――」
ん? これなんか聞いたことあるような……
「殺戮をここに。解体聖」
「わーわーわー!! 聞こえなーい聞こえなーい!!」
「むぅ、なんで止めるのさ弟子ちゃん」
「何言おうとしてるんですかあなた!? 会社違いますよ!? 別ゲーの話しないでください!!」
「ま、まさかここまで慌てるとは思わなかったよ。べつげえってのがわかんないけどね」
ほ、よかった。
「実際は言葉なんていらないんだ、念じるだけでOK!」
「じゃあなんであんなこといったんですか……」
「ん? そりゃあもちろん弟子ちゃんが恥ずかしい台詞をいって赤面するかわいい所を見るために決まってるじゃん」
「ほんとなにしてるんですかあなた」
「で、どう? 言わない?」
「いや言うわけないじゃないですか」
「残念」
そりゃ言わないってか言えないよ、いろんな意味で。
「そりゃじゃ使うよっと……あ、死体をバラバラする時はガラス瓶を近くに置いとくといいよ」
そう言うと故ネズミが赤黒い霧に包まれた。
そうして数秒後、完全にバラバラになった故ネズミが現れた。
どれぐらいバラバラかっていうと、皮や骨、内臓はもちろん、筋肉も筋線維レベルで分かれてる。それに血液も全部用意したガラス瓶の中に入っていた。
なんというか……すごいグロい。
「なにこれ……ヤバくない?」
「ふっふ~ん、すごいでしょ? このレベルで解剖するのは手作業じゃどんなに頑張っても無理だからね。でもこれを使うとほれこの通り、完全にバラバラになるのよ!」
うん、生物にこれを使うのはやめよう。
「はい、解体新書あげる」
「あ、ありがとうございます」
「生物以外にも使えるから、ぜひ多用してね。これすっごい便利だから」
「はい」
「そしたら次は、イケニエと魂魄摘出ね」
「ん、りょうかい」
「これは大雑把に言うと似たような効果で、イケニエは肉体を、魂魄摘出は魂を分離するの」
ふむふむ、なるほど。
「これらはどっちも使った後は対象がこんな宝石みたいになって出てくるんだ」
そういってデージーさんは紅い宝石みたいなのを見せてきた。
へ~、綺麗。
「さて、これらを使用するのに使うのはこれらの道具です! ババン!」
出てきたのは魔法陣みたいなのが書いてある杯と内側に棘がたくさんついてる2mぐらいの箱。
……これってもしかして鉄の処女?
「ねぇ、これってもしかして……」
「ザッツライッ! それぞれ『生贄の杯』と『鉄の処女』です!!」
そのまんまだったよ!
「さぁおいでチュー次郎」
「チュー」
まさかまたネズミを!! しかも名前まで付けてるし……。
「生贄の杯は、スキル使用を念じると液体がたまるから、それをチュー次郎に垂らします」
「チュ? チュ! チュア……」
「チュ、チュー次郎おおおおおおお!!」
なんか杯から垂れた赤い液体がかかったらチュー次郎が急に倒れた!
あ! チュー次郎が砂になってサーっと消えてったと思ったら蒼い宝石っぽいのが残った。
「はい、今のが魂魄摘出ね。次がイケニエ」
またネズミを連れてきた!?
「さぁチョ三郎、あのチーズを食べていいよ」
「チュー♪」
チョ三郎はチーズのところへ走っていった。そう、鉄の処女の中に……。
「はいガッシャーン♪」
「チョ三郎おおおおおおおお!!!」
こ、この人チョ三郎入った瞬間に扉閉めた……
「ネズミになんか恨みでもあるんですか!? この鬼! 悪魔!!」
「こうしてネズ太郎、チュー次郎、チョ三郎は再会を果たすのでした……天国でね!」
「うわーーーーん!!」




