初めての師匠
錬金術を続けると言いましたよね? あれは嘘です。
よし、それじゃ今日も錬金術やっていこう!
と言いつつまずはちょっとダンジョンに行く。
なぜかというと、単純に道具がないからだ。
バラバラから先のは売ってなかったため、それを探しに行こうと思う。
探すと言っても目途はたってるからなんとか今日中に見つけられるといいな~。
場所は「終わりを告げた理想郷」
ここは今から100年以上前錬金術で栄えた国で、その行いが世の理に逆らったのか、わずか数日で滅びた国だ。
いたるところで実験が失敗し、爆発、毒ガスなど様々な物が国中を包みこんだ。
それによってその国にある全ての錬金器具は破壊されたといわれているが、「国でもっとも優れた錬金術師が、今までの実験結果などを隠している」という噂があるらしい。
ちなみにこの情報は昨日の朝、町中の情報屋に1人当たり100万G払ってなおかつ丸1日調べてもらってやっと手に入った情報だから知ってる人はまずいないはず。
てことでそれを探しに行こうと思う。
高難度ダンジョンらしいけどきっと大丈夫だよね! ではレッツゴー!
「うひゃーーーーー!!!!!! 死ぬ死ぬ死ぬー!!」
私は今、キマイラ、レイスなど様々なモンスターの大群に追われている。
ヤバい高難度ダンジョン舐めてた。こうなちゃったらプラズマとかデカネードとかの爆発力が高い系は私も巻き込まれるし、神罰之爆撃や壊死榴弾とかじゃ攻撃力が足りなくて普通に耐えられる。
かといって幾つも出そうとしてもそんな猶予は与えられていない。
キマイラのブレスが迫ってきてる。あ、私死んだわこれ。
こうして私は、このゲームで初めて死んだ。
「ふぅー、復活完了っと」
いつものログイン場所に帰ってきた。
迂闊だった、私は本来待ち伏せる側なのに、自分からのこのこ出ていくなんて。
ちょっと最近勝ちまくってたから慢心してたのかも、反省。
う~ん、ヒバナを頼っても良いんだけど、それじゃなんか味気ない。
ていうかこれぐらい自分の力でクリアしたい。
というわけで特訓じゃ!
幸い町の瓦礫から、1個だけいいのを見つけることが出来た。例の錬金術師が隠した以外でもあったのはうれしい、てかそりゃあるか。なかったら普通の人には錬金術が出来ないことになっちゃう。
それがこの「変換の指輪(粗悪品)」。これはその名の通り「変換」を使用可能にする道具。
でも粗悪品らしく、ボーナスがマイナスでかかるらしい。
しかし! 私の極振りしたDEXとスキルレベルの前にはその程度どうってことない、はず。
まずアビリティ「変換」の効果はこうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「変換」
物質を、それに近いランク、属性の物に変換できる。
変換できるランクの差と成功率は、DEXとスキルレベルによって変わる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ランクっていうのは例えばいしころより鉄の方がランクが高いみたいな素材のレベル的なもの。
属性は、植物だとか鉱物だとかそういうやつだ。
私ぐらいだと砂を鉄に変換できる。
しかもこのアビリティのすごい所は、「好きな形にして変換できる」ということだ。
細かい操作などはDEX依存になるが、例えば……というか私が今しようとしてるのは「砂×たくさん」を「鉄の刀」に変換する事だ。
これによってついに私も近接戦闘ができるようになる!!
まぁ大変だから近接戦はできるだけしないけどね。
足りないSTRは、鉄なら高周波ブレードにするとかで補う。幸いそれをするだけのDEXはあるから。
それに実戦ではもっと面白い事もする予定だし……ふふ、今から楽しみ。
といっても今の私じゃたぶんってっか絶対まともな近接戦闘は出来ないと思う。
いくら私が廃ネトゲプレイヤーだったとはいえ、流石に実際の体を動かすのはできない、どういう動きをすればいいかは分かるからそれを実行する技術とかを学べばいいだけだからまだマシだけどね。
というわけで……
『ねぇヒバナ』
『ん? な~に?』
『ヒバナの知り合いで今ログインしてて双剣スキルが高い人っている?』
『うん、いるけど……なんで?』
『ちょっと近接戦闘したくなって』
『そりゃまた唐突だね、わかった』
『ん、返信来たら教えて』
『は~い』
よし、これで師事を受けることはできるだろう。
今日は日曜でまだ午前中、時間はまだあるしね。
『連絡ついたよ~』
『ホント!? どうだった?』
『オッケーだって、今からでいいならいつもの噴水広場前集合でいいかだって』
あそこの広場もあれいらいすっかり有名な待ち合わせ場所になったね。
『うん、大丈夫』
『それじゃ今からでおっけーって伝えとくね』
『ん、ありがと』
『あ、あと彼女男性プレイヤーだからね』
『ん、わかった』
それじゃいっちょ、行ってきますか、2刀流を学びに!
……ちょっとまって今彼女って言った?
「あ、あの、君がトーカさん?」
「うん、そうだよ」
私を待っていたのは、まだ幼さが残る顔立ちをした男の娘だった。たぶん。ヒバナが男性プレイヤーっていってたし。
だってすっごい可愛いんだもん、たしかにこれは「彼女」だね、うん。
目にかかるぐらいの黒髪、透き通るような白い肌、どこか儚げな瞳、うん可愛い。
これが男だってんだから世の中信じらんないよね。
へ~、この子、といってもこのゲームはキャラクリだいぶ弄れるから中身はおっさんの可能性もあるけど、まぁこの子でいっか。この子がヒバナがいってた双剣スキルに長けてる人なんだ。
「ごめんね、ボクみたいなのが先生で、女の子みたいで頼りなくない?」
「ん? それならなんでもっとかっこよくしなかったの?」
「こっちの方が面白いからって、友達が……」
面白いからって……その友達、見込あるわね。
「ううん、全然気にしないよ、ゲームに見た目は関係ないからね」
「うん、ありがと! ボクはシンっていいます。よろしくね、トーカさん」
「ん、こちらこそよろしく、シン君」
しっかしこんな子と交友関係を持ってるなんて……ヒバナ、恐ろしい娘!
こうして、私とシン君の師弟関係は始まった。
ごめんなさい、なんかあんまりすんなりクリアしちゃうのもあれだな~って思って流れをちょっと変えました。
あとPVが20万、ユニークが4万超えました! いつも見てくれて本当にありがとうございます!!




