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Chapter9.

「ちょっといいですか。あなたが七海京香さんですよね??」


翌日、柏木は彼女のもとを訪れた。


「そうですけど……あなたは?」


「僕なんかの事より大切な話があるんです。実は、あなたが親しくしている男子生徒――西園寺さんの事なんですけど……」


七海が動揺を見せる。


「夕貴の事……?」


「そうです。と言っても、おそらく心当たりはあるのでは? 立ち話もなんですので放課後、これくらいの時間にここに来てくれませんか?」


そう言って、柏木は彼女に一枚のメモを渡した。

そこには、探偵部が活動する際に使用する教室の場所、呼び出しの時間、そして今日するつもりである話の概要が書かれている。




「リーダー! 西園寺くんと清水さん、もうすぐ来るよー。準備は終わったー?」


放課後、柏木が部室に着くとすでに他の三人は揃っていた。

今日、依頼が終了する。

ここにいる全員、いつも通りの様ではあるもののどこか独特の緊張感を持っていた。


「うん。こっちは大丈夫だよ。いつも通り、僕が終わらせる」


「そうやって汚れ仕事を全部自分で引き受けようとするのはどうなんだ」


望月が怪訝な目を向ける。


「いいんだよ。僕がリーダーなんだから」


「でも、リーダーでも会話の流れを見失って先走ることはあるわ。その手助けをすることに徹しましょう」


「どうだかな……」


探偵部の部室にノックの音が響く。

この依頼が始まったあの日と同じノック。


彼らを迎え入れた瞬間、彼らは終わり始める。

柏木が終わらせる。

覚悟をもって返事を一つ。


「ようこそ、探偵部へ――」




「えーと……どうして俺と清水が一緒に呼ばれたんですか?」


「それはこれから説明します。その前に、これを」


依頼されていた物を渡す。

それは七海によって細工をされたままのぬいぐるみ。


「あ……ありがとうございます。ちなみに、どこにあったんですか?」


「まぁそれが一番大事な所なんですけど――」


「私よ。私が持ってたの」


柏木が説明をする前に、清水が割って入った。


「聞いて、西園寺……いえ、夕貴君」


そのまま彼女は、探偵部に依頼をしていること、七海の強い束縛ことを話した。



「……そうだったんですね。まさか発信機なんて入っていたとは……」


「それはつまり、あんたの浮気が薄々バレてたってことだよ」


信じられないと言うような表情をする西園寺に望月が補足する。

発信機を仕込んでくるような女に浮気がバレているという事が何を意味しているのか。


「西園寺さんは今、結構危険な状況かもしれないわ。七海さんか、清水さん、もしくは両方と別れるか。早急に選ぶべきだと思うわ」


「他に方法は無いんでしょうか……。どちらかを選べなんて……」


「西園寺さん、君が蒔いた種なんだ。僕らにはそれ以上の提案はできそうにない。グズグズしてると……」


ちょうどその時、部室にノックの音が響く。

それは、なんとなく焦りを感じさせる音。


「新しい依頼かしら? 今忙しいと断ってくるわ。……誰が依頼を――」


佐倉がそう言い終えるのを待つことなく、部室のドアが荒々しく開けられる。


「夕貴! 本当に浮気を……!」


「なっ……京香! どうして――」


「どうしてじゃないよ! なんで浮気なんか!」


二人とも完全に興奮してしまっているが、それを宥めるように清水が口を開く。


「京香、落ち着いて。悪いのはあなたなのよ?」


「……そういうこと。あなたがそうして夕貴を(たぶら)かしたのね?」


「違うんですよ、七海さん。彼はあなたの束縛に手を焼いていたんです」


「リーダー! そんな言い方しなくても!」


「萌絵、少し静かにしておけ。このままなら大丈夫だ」


柏木が冷たい声音のまま続ける。


「確かに七海さんは西園寺さんに対して()()重いところがあった。本人がどう感じていたのかはわからないけれど、ね」


「じゃあ、まずは西園寺さん。どうして清水さんの告白を受けたんですか?」


「あなたが言った通り、七海に別れるなんて言ったらどうなるかわからなかったからですよ」


「次、清水さん。どうして西園寺さんに告白したんでしたっけ?」


「夕貴君が困っているようだったから。私が守ってあげないとって……」


柏木がニヤリとする。

まるで全てを見通しているような表情だ。


「最後に七海さん、この状況をどう思ってますか?」


「どうって……どうして私が悪者みたいにされなきゃいけないのって……」


「そうですよね、仕方ないことです。そうだよね?」


そう言うと、柏木は探偵部の面々に視線を向ける。


「え? 私たち?」


「お前……まだわかってなかったのかよ……。西園寺と清水を見てみろよ。どう見ても動揺してるじゃねーか」


望月はそう言うが、それは普通は気づけないような小さな変化を指していた。


「この一連の被害者は七海さんなんだよ。二人を呼び出すとき、すんなりとは行かなかったでしょ?」


「確かに……。普通だったら断られちゃうような感じではあったけど……」


「ちなみに、私も普段から七海さんを気にかけるようにしていたけれど彼女もまた西園寺さんを気にしていたわ」


彼らが話している所に西園寺が割り込む。


「ちょっと待ってくださいよ。ずっと気にしてたって、発信機があったんだからそんな必要ないじゃないですか」


「無かったんですよ、発信機なんて。でたらめだったんです」


「七海さんにも重いところがあった。西園寺さんはそれを快く思っていなかったのに七海さんに相談することなく逃げてしまった。清水さんはそこに付け込んで、発信機の偽装までして西園寺さんを奪った。それだけの話ですよ――」






「あんな終わり方でよかったのかな……」


全て終わり、探偵部では反省会のようなものを行っている。


「恋愛沙汰なんてこんなもんじゃねーの。特に今回は特殊すぎたしな」


「大切なのはこの後彼らがどうして行くか次第よ……」


「きっと大丈夫。すっきりと洗い流して、新たに関係を築いていけると思うよ。」


そうして、探偵部に舞い込んだ依頼は終了した。

これにて一章(Case1.)は終了となります。

今のところ続きの予定はありませんが、もし続くことになった時はまた探偵部をよろしくお願いします!

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