Chapter8.
七海を見送った後、柏木は言う。
「そろそろ決着を付けようと思うんだ」
「決着って言うと? 人形を返すだけじゃないの?」
「俺らは清水奈留の依頼も受けたんだ。三人の関係を改善させるまでが仕事だろう」
「確かにそうだね……でも、それって具体的にはどうするの?」
多少躊躇はしたものの、冷たく告げる。
「西園寺さんと七海さんには別れてもらうことになるよ」
それを聞いて、西紀が音を立てて思い切り立ち上がる。
「そんな……!そこまでしなくたっていいじゃないですか!」
「萌絵ちゃん落ち着いて。一度冷静になって考えてみて」
息を荒らげた西紀が大きく深呼吸をする。
「――確かに、彼らが今のままじゃだめな事はよく分かってる……でも、でも……」
「ちょっと待って。別に二人の仲を引き裂こうって訳じゃないんだよ」
「……え?」
「二人はお互いを知らなすぎるんだよ。だから、二人は知らなきゃいけないんだ。西園寺くんの二股、そして七海さんの束縛を」
「一度距離を置かせて、お互いを見つめ直してもらおうってことだな」
「なるほど……ね」
西紀は納得は行っていない様だったが、柏木が言っている事も一理あると引き下がった。
「別れさせるって言っても、具体的にはどうするつもりなのかしら」
「うーん。一応おおまかには考えはあるんだけど、本人たち次第なところが大きいからね。その時になってみないと分からないや」
「そんなに適当でいいの……? 大切なことよね?」
指摘され、柏木は困ったように頭を搔く。
「まぁね。でも、あの人たちなら大丈夫だと思う。信じてみようよ」
「リーダーがそう言うなら大丈夫なんだろうけど……」
「それじゃあ明日、三人に集まってもらおう。七海さんは僕が呼ぶから、他の二人は萌絵にお願いしてもいいかな?」
「りょうかい! 依頼のことで進展があったって言うよ?」
「うん。頼んだよ」
「――さて。僕も一仕事しないとね」
そうして、彼らは依頼解決の準備を整えた。




