Chapter7.
「聞き取りって……一体どんなことを聞かれるんですか?」
緊張した面持ちで清水が口を開く。
「聞き取りっていうと堅苦しく感じるかもしれないけど、カウンセリングみたいなものだから緊張しなくて大丈夫ですよ〜」
相変わらずの軽い口調で西紀が対応する。
望月が正確に心を読むために、相手をリラックスさせる役は柏木がやるとは限らない。
その望月は、落ち着いた様子で清水の一言一句に集中している。
一方、佐倉は黙ってやり取りを聞いている。
「えっと、まずはお悩みについて軽く教えてもらってもいいですか? 小さいことでもいいですよ」
西紀が切り出す。
「実は、恋愛のことで……って、こんなこと、人様に話すようなことじゃないですけど……」
「それを聞くのが私たちの仕事ですから、気にせずに話していただいていいですよ! むしろお願いします!」
「それに、ただの乙女の悩みって感じの事でもないんだろう?」
望月が口を挟む。
予定外の行動に西紀は視線で彼を咎めるが、当の彼は知らないふりをする。
「そ、そんなに核心の部分から話さなくても――」
「もうそこまでバレてしまっているんですね。そうです。私の彼氏は、二股をかけているんです」
(この人……ちょろい……?)
「えっと、彼氏さんっていうのは西園寺夕貴さんで合っていますか?」
「はい。それで、相手は七海京香……私の幼馴染なんです」
聞いてないことまで話し始める清水に若干引きながらも質問を続ける。
「七海さんって、清水さんから見てどんな人なんですか?」
「それが……悩みの種でもあるんです……」
「七海さんが悩みの種……?」
「京香は……独占欲の強い、重い子なんです……」
探偵部の面々が驚く中、柏木だけはまるで知っていたかのように落ち着いて言う。
「なるほど……その事を西園寺さんは知りませんよね?」
「は、はい。夕貴くんが心配で、私は二股になるって分かっていて告白したんです。守ってあげたくて……」
「そうでしたか……あ、そうそう。このぬいぐるみ、知ってますか?」
西園寺から依頼されているぬいぐるみの写真を見せる。
「……今は私が持っていますけど、西園寺くんのものです」
清水はカバンから小さなぬいぐるみを取りだす。
西園寺に依頼されていたぬいぐるみだ。
「えぇ! な、なんで清水さんがそれを?」
「萌絵、話を聞くのは得意分野じゃなかったのか? 流れ的に、七海が西園寺に送ったそれには、何らかの細工がされてあったんだろう?」
「そうです。このぬいぐるみの中に発信器が仕込まれていて、夕貴くんの居場所が送られていたんです」
「それって、七海さんは浮気に気づいていたってことですか……?」
「そうみたいなんです。まさか発信器まで使うとは思ってなかったんですけど……夕貴君には申し訳ないけど、少し調べたら返すつもりでした。でも、発信器が仕込まれていたから返して大丈夫なのかわからなくって……」
(うーん、この女も大概じゃないか……?)
恋愛に疎い望月は、少し恐怖を感じた。
女っていうのはみんなこうなのか……?
「聞き取りは以上です。……ぬいぐるみについては、こちらから返しておきましょうか?」
「はい、よろしくお願いします」
そうして、清水奈留への聞き取りは終了した。