Chapter6. Teller : Sho Kashiwagi
今回の案件は、次第に結末に近づいて行っている。
それならば、そろそろ僕が動かないといけない頃かな。
西園寺さんの尾行に向かう葵生を見送る。
その後すぐに今日の探偵部の活動は終了した。
しかし僕は部室に残り、備品が収納された棚から便箋を取り出す。
おそらく、明後日にはこの案件は幕を閉じると思う。
ただ失くした訳では無く、誰かによって盗まれたと考えられるから。
「うーん… やっぱり手紙を書くのは苦手だなぁ… なんかこう、他のやり方はなかったのかな…」
不必要に探偵部のことを広めないため、呼び出しには基本的に手紙を用いる。
でも正直、文字を書くのは苦手で、あんまり好きじゃないな。
悩みながらも簡単にまとめて書き上げる。
苦手とは言っても、何度もやってることだからさすがに慣れてきたよ。
後は、葵生からの報告を受けてその人を呼び出す手紙を届けるだけ。
まぁ誰なのかは大体目星がついているけど、一応連絡を待とう。
二十分から三十分ほど経っただろうか。
雨が降り始め、次第に強まる。
スマートフォンが鳴った。
葵生からの着信だ。
「もしもし? リーダ―。こっちは終わったわ」
「ありがとう、どうだった?」
尾行の時の様子を教えてもらった。
七海さんの幼なじみの清水奈留という女子生徒とも付き合っていること。
西園寺さんと清水さんが揉めていたことなど。
「清水さんね… 了解したよ。雨が強いけれど、大丈夫かい?」
「うん、大丈夫よ。ありがとう」
「良かった。それじゃあ、また明日」
もう一人の彼女さんも分かった事だし、呼び出しの手紙を届けないと。
封筒に"探偵部"とだけ記す。
そのまま帰るつもりで、荷物をまとめて部室を出る。
誰もいない廊下を二年生の下駄箱に向かって歩く。
すぐにたどり着き、清水さんの下駄箱を見つける。
後輩の女子の下駄箱に手紙を入れてるってやばいよね。
ま、まぁ部活の仕事だから仕方ないよね。
翌日、放課後の探偵部。
彼氏が二股をしていることに関しての相談ということで清水さんを呼び出す。
「リーダー、私は何を聞けば良いのー?」
「清水さんには、彼の二股の理由について聞いてほしい」
「二股って完全に西園寺が悪いんじゃないのか?」
「そうとは限らないわよ。七海さんと上手くいってないのが理由だとすれば、七海さんに原因があるかもしれないわ」
僕は七海さんの方に原因があると考えている。
それは、ぬいぐるみ探しにも絡んでくるだろう。
「そうだね。まぁ、誰が原因で誰が悪いのかは今日分かると思うよ」
コンコン――
控えめなノックの音が響く。
「すみません…ここは探偵部でしょうか…?」
おどおどした様子で清水奈留がやって来た。
「ようこそ、探偵部へ。ご依頼でしょうか」
「ご依頼でしょうかって…手紙を下さるくらいですし、ご存知ですよね?」
「決まり文句というか、形式的なものというか、そんな感じなのでお気になさらず」
うーん…出鼻を挫かれたな。
まぁ、たしかに手紙を送った以上悩みがあることは分かってるんだけど、カッコつかないなぁ。
「ちゃっちゃと依頼の話を進めちゃおうよー。立ち話もなんだし、座って座って〜」
そうして、清水奈留への聞き取りが開始された。