Chapter2.
翌日の放課後、再び探偵部で会議が行われた。
「今日の会議では、昨日の葵生の尾行の結果を中心に今後の動きの仮決定をする。いいかな?」
柏木が議題を提示する。
「いいと思うわ。それじゃあ、報告するわね」
私物のノートPCにスマートフォンを繋ぎながら佐倉が話し始める。
「昨日、彼は言っていた通り彼女さんとデートに行ったわ。萌絵ちゃん、一応確認するけれど彼女さんはこの人であってるかしら?」
佐倉は後ろからスマートフォンで撮影した、西園寺と女が手をつないで歩いている写真をノートPCに映し出す。
「うん、あってるよ。西園寺さんとは同じクラスで、名前は...... 確か七海京香さんだったと思う。しっかりした人で、クラスでも目立つほうだね」
七海京香。
身長は西園寺より少し低い170cm程度。
女子の中では背が高く、スタイルも良い美人。
「なんで他の学年のクラスの情報がわかるんだよ...... まだ入学してから日も浅いっていうのに。しかもちゃん付けって.......」
望月が当然の疑問を投げかける。
「まぁ、だからこそここで探偵部の一員として活動できているわけなんだけどね」
「確かに、それもそうだな」
「本題に戻してもいいかしら。写真の女子生徒が依頼主の彼女さんであることは間違いないのね」
「そうみたいだな。んで、繋ぎ方はシェイクハンドか」
望月は二人の手のつなぎ方に注目した。
「手のつなぎ方ってのは二人の関係がよく出ることが多いんだよ。この二人の場合、七海さんが上で握ってるな... 主導権は七海さんのほうにあるみたいだな」
彼の言う通り、恋人の間での手のつなぎ方には二人の関係性が表れる。
シェイクハンドとは、その名の通り手をつなぐように繋ぐつなぎ方だ。
手のひらを上から下に向けて握っている人が主導権を持っている傾向にある。
「七海ちゃんのほうが立場が上かぁ。でもそれって今回の依頼に関係あるかなぁ?」
「普通だったら関係なさそうだけど、紅夜が気にするような案件だ。何かあるかもしれないんだ、一応頭の片隅に置いておこう」
そう言われた望月は困ったように頭をかく。
「そこまで重く見てもらわなくていいんだぞ?」
「いやぁ、さっきの萌絵の話にもつながるけど、この部にいるってことは特別な才能があるってことだからな。意外と直感も鋭かったりするんじゃないかな」
「そうよ。もっと自信を持ってもいいと思うわ。とりあえず、今日の私からの報告は以上よ」
「ありがとう。今日はどうしようか?」
「今日もデートに行くといった話はしていなかったわ」
そうか。と柏木は頷く。
「じゃあ今日は尾行は大丈夫かな...... 明日は二人の関係についてもう少し調べてみようか」
「それじゃあ私の出番だね! 二年生の先輩に二人のことについて聞いてみるよ」
待ってましたと言わんばかりに西紀が声を上げる。
「俺もこの引っかかりを解決したいから西園寺さんから話を聞きたい。萌絵、こっちも手伝ってもらっていいか?」
「もちろんだよ。えっと、明日は昼間は先輩たちから二人の関係について聞き込み、放課後は西園寺さんから聞き取りだね?」
「それで行こうか。西園寺さんは僕が呼んでおくよ」
話がまとまりかけたところで、ノートPCを片付けながら佐倉がつぶやく。
「これで、もしもただ失くしただけだったら逆に面倒ね........」
「そうだったら西紀の奢りで飯食いに行こうぜ」
「えぇ......」
そうして、今日の探偵部の活動は終了した。