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Epilogue.....07 〜 True will 〜

さて、遂に最終回も目前。

今回は本編もあとがきも力を入れて書いたつもりです。


実は最近無料動画製作・編集ソフトを使って動画を製作したり編集するのが凝っていたり。

まぁまだまだ初心者だし、時間も余りないので大したものは作れないんですが……

http://jp.youtube.com/watch?v=Baqp6WmHr9c

とりあえず初めて製作してみた動画をYoutubeに投稿してみたり。一分足らずの全然大したものではないのですが。低画質で文字が見えにくいかもしれませんし……。

この作品の特報みたいなのを試し的な感じで作ってみました。

本編のほうもよろしくです。


True will...真の志―――二人の本当の気持ち、そして決意……。全ての想いがそこにある。

 ―――好きな人ができたんだ―――


 いつか聞いた一人の女性が言っていた言葉を思い出していた。

 あれは自分が生まれて間もない頃。

 消え去ってしまった希望を託され、この国に生まれた。しかし誰にも祝福されず、ただただ日の陽光が当たらない暗い中で、自分は生を受けた。

 それはもう雪のような冷たさで、なにもかも孤独で、掴み取ろうとしてもなにも掴めない。

 そんな始まりだった。

 日の本の国に生まれた自分は、日の光を浴びないままに誕生した。

 何重にも覆われた眩しい日の光さえ差し込まない陰湿で暗いドッグの中で生まれ、軍極秘という理由でひっそりと祝されず生まれた自分。

 ただただ孤独に生きて、温もりという言葉を知らなかった。

 ただ知っているのは、自分がどうやら他とは違う特別な存在だということ。

 【護衛戦艦】―――自分でも意味がよくわからない。

 その言葉に含まれる意味と誇りでさえ気付いていなかった。

 やがて、突然のように扉が開いた。

 それは外の世界への、全ての始まりだった。

 生まれて初めて日の光を浴びて、自分と似た少女たちと出会った。

 初めて見た自分以外の女の子たち。

 その中心から手を差し伸べてくれた彼女。

 「ようこそ、神龍。私たち大日本帝国海軍艦魂一同は、あなたを歓迎するわ」

 少女たちの笑顔、自分に射す光、この出会いが全ての物語の始まりだった。

 差し伸べられた白い手を見詰める。

 そして私もゆっくりと自分の手を上げる。差し出した手が突然、強い力で握られた。

 「今日からあなたは私の【ともだち】だよっ」

 彼女はにっこりとそう続けた。

 「よろしくね」

 彼女の微笑みとともに紡がれた優しい言葉を聞いて。

 私は―――初めて、笑顔になった。




                              ●



 あの時護れなかった。

 彼女を死なせてしまった。

 だからやり直す。

 護りたいものを護るために。

 前世に戻り、起点からやり直そう。

 そして彼女と会うのだ。

 遡る。どこまでも………



 ザアアアアアアア………


 あの時と同じ雨がまた肌を打つ。

 護れなかった彼女を自分の背後に隠し、自らの身体を盾とする。そして握る刀身が目の前の敵から彼女を護る刃となる。

 目の前にいる奇怪な若武者、少女――棗玖深と同等の存在、棗劫火と対峙する。彼(?)こそが次の願いに繋がる権利を与えてくれる。

 彼を倒せば、権利をこの手に取れる。

 どちらともなく、二人は泥を蹴って駆け出していた。

 全てが一瞬―――

 大雨が泥と肌に打ちつき、走りにくい泥の上を駆けている間はスローモーションのように感じられる。聞こえてくる雨音もなにも聞こえない。ただただ、目の前にゆっくりと自分と同じように刀を構える相手が見える。

 ゆっくりと一閃に斬りかかろうとする動きもまるで時間が止まりかけているかのように遅い。

 しかし終わってみればやっぱり一瞬のように感じられた。

 すれ違う間際、お互いの白刃が斬りかかった。そしてすれ違った後、確かに一閃、その身体に斬り込まれた。

 つかの間の静寂。いや、雨の音だけが響いていた。うるさいほどに地面を打つような雨音が長く感じる。

 「………ッ」

 肩膝をバチャリと地に着ける。

 彼は――――棗劫火はその名のとおり火の如く、サァッと雨水に消火されるようにその身がかすのように消え去った。

 確かに一閃斬り込んだ相手は跡形もなく消え去り、雨がうるさいほどに地面を打ち続けていた。

 少女――舞は、呆然とその光景を見詰めていたが、はっとなって膝を付く彼のそばに駆け寄った。

 「菊政どのっ!」

 泥だらけになりながらも彼のそばに駆け寄り、下がった彼の瞳を覗く。

 彼の瞳が自分を映し出すと、泥と雫が伝う彼の顔が柔らかく微笑んだ。

 「……無事だったか、舞」

 「…はい。菊政どのも……」

 舞はぎゅっと彼に抱き付いた。敵を斬ったというのに返り血がなく、ただ泥だけに汚れている鎧。しかし彼の温かさが伝わってくる。その温もりを求めるためにぎゅっと抱き締める。

 「良かった…良かった……ッ」

 「舞……」

 抱き締める彼女の身体を、そっと自分からも抱き寄せる。雨に濡れた衣、添える自分の手も濡れて冷たい。しかし触れるととても温かい感触が伝わってくる。

 確かな温もりを感じつつ、彼は瞳を閉じて実感した。

 護れたんだと。

 護れなかった彼女を、今度こそ護れたんだ……。

 降り続ける雨。雨は無限のように、むしろ強さを増してずっと二人を打ち続ける。

 しかし二人だけの温もりがそこにある。雨なんかにこの温かさは奪われない。冷たくなんかない。寒くなんかない。お互いの体温がそこにある。

 だが、雨はずっと降り続ける。止んでくれない。まるで二人を引き離そうとしているかのようにずっと強く打ち続ける。

 雨はやまない。むしろもっと強く二人を打ち続ける。

 ありえない冷たさを感じ始める。

 背筋がぞっとした。

 嫌な感覚だ。

 護れたはずだ。今度こそ護ることができた彼女が確かにここにいる。自分の胸の中に顔を埋めている。抱き締めあっている。なのにこの寒気はなんだ。

 何故……。

 疑問を感じ始め、やがて嫌な感覚が蝕んでいく。そして―――

 

 ―――ドスッ


 ギクッと彼女の身体が震えた。そして抱き締める彼女の身体からスッと温もりが抜けたように感じた。そして添える手にぬるりとした液体が触れた。

 「………」

 抱き締めてくれる力が弱まり、彼女の身体がずるりと崩れる。完全に力が抜けた彼女の両肩に手を添えて支える。

 そして呆然とした表情で、前髪に隠れた彼女の顔を覗く。雨で貼りついた前髪を優しく分けて、彼女の閉じた瞳を見る。

 抱き締めていた手を再び彼女の背にまわす。ぬるりとした感触。そして彼女の背から生える長く伸びたもの。

 がくりと崩れた彼女を自分の身体で支える。そしてまっすぐに伸びた矢が彼女の背中から生えていることに気付いた。

 「…ま、舞……」

 弱々しく紡がれた言葉。彼女は瞳を閉じたまま反応しない。

 「うっ…! …ッ!」

 頭が動転しそうになり、気付いたときには彼女の背から生えた矢を引っこ抜き、捨てていた。崩れるようにして倒れ掛かった彼女の身体を支え、閉じた瞳に向かって声を絞り出していた。

 「舞…ッ 舞ぃ……」

 真っ白な肌に雨粒が弾けて、雫がいくつも伝う。閉じた瞳はぴくりとも動かず、ふっくらとした柔らかそうな唇は紫色になって、白い肌がさらに白くなっていて、それを見て背筋に悪寒が走った。

 「…ッ!」

 ぎゅっと抱き締める。ダランと下がる彼女の白い手を握り、嗚咽をかみ殺す。

 また、護れなかった。

 結局護れなかった―――

 今度こそ護れたと思ったのに、また彼女を護れなかった。

 自分は結局、彼女を護ることもできないのか―――?!

 ぽた、と彼の瞳からこぼれた雫が彼女の頬を打った。

 その時、彼女の閉じた瞼がピクリと動いたかのように見えた。

 「……き、く…」

 微かに聞こえた弱々しい声に、はっとなって彼女の顔を見る。

 閉じていた瞳は半開き、見える黒い瞳は彼の顔を映していた。しかし淡い光が儚く弱い。いつ消えてもおかしくないような瞳に宿る光。

 そしてその唇がゆっくりと動いて彼への言葉を紡いだ。

 「……これで、いいんです…」

 「……なにがいいんだよ…」

 「…これしか、【この私】の終わり方は……こういう終わり方しかないんです…」

 二人に迫る怒号と叫び声が聞こえる。

 彼女の身体に一矢を報いた方向から、ぞろぞろと武器を持った武士たちが現れた。それは二人の平穏な日常を破壊した者たちだった。燃え盛る屋敷を背後にした男たちは、雨に打たれる二人の男女を見つけた。

 「…【この私】が……ここで死なないと…」

 「なに言ってるんだよ…。俺は……元の元であるここで!ここでお前を助けるために…俺は……ッ」

 そっと彼女の白い手が彼の雫が伝う頬に触れる。それはふんわりとした温もりだった。

 「だって…私がここで……いなくならないと……【次の私】が【次のあなた】に会えなくなっちゃうじゃないですか……」

 男たちが、少女を抱きかかえてその場から動かない男のほうに駆け出し、その二人に迫った。

 「さぁ…次に参りましょう……今度は…」

 刀を振り上げた男たちが、すぐそこまで迫り来た。

 「来世で会いましょう……」

 「………」

 そうだ。自分は往かなければならない。

 すでに自分は次の願いに繋げる権利を手に取っている。

 ここにいる彼女は結局護れなかった。…いや、それが次に繋がる変えられない運命なのだ。

 本当の自分と、本当の彼女の願い、すなわち二人が出会うためにはこの時代を去り、次の本題と言うべき時空へと移動しなければならない。

 ――俺は、【この俺】ではない。

 俺は、【この俺】の【次の俺】なのだ。そして彼女も……

 さぁ、次に往こう。二人で次に旅立とう。

 

 ―――二人の魂を次へ誘う刀が、彼の首に振り下ろされた。


                            ●



 「そう!私は、この護衛戦艦『神龍』の艦魂―――艦魂の具現化した姿、それが私。神龍です!」

 彼女はにっこりと笑って言った。その笑顔は邪心もない可愛らしい笑顔だった。見てるこっちがどきりとしてしまうほどだ。よく見ると、まだ少女と言っても良い姿かもしれない。

 「あんたが、この『神龍』の艦魂だって?」

 「はい!そうです」

 艦魂という証明を見せ付ける彼女。

 二人は出会った。

 「では三笠二曹、よろしくお願いしますっ!」

 「ああ。よろしく、神龍」

 

 まだ遡る……。


 まだまだ……




                            ●

 


 夏加はそびえ立つくろがねの城を見上げた。

 思い出すのは初めての光と心に浸る温もりと、微笑み。

 それは、寒くて長い冬が終わろうとする、春の芽吹きが近づいた季節だった―――


 「好きな人ができたんだ」

 

 「………」


 ある二月の中頃。海が冷え込む寒い冬もそろそろ温もりが芽吹く春に変わろうとする前の時期。まだ冬の名残を残す冷たい潮風が吹く横須賀港で、神龍は唯一戦艦で同じたった一人の艦魂の長門と肩を並べていた。

 長門の突然の爆弾宣言に、神龍はぽかんとなった。

 ここは戦艦『長門』の防空指揮所。艦の一番高いこの場所は絶景のポジションである。

 「……神龍?」

 「………」

 長門に呼ばれて貰いうけた、食べかけのおはぎを片手に持ったままぽかんとなっている神龍に、長門はクスッと笑みを漏らした。

 「もうっ。なにぼーっとしてるのよ」

 「……すみません」

 「なんで謝るの」

 「………」

 戦況が激化する太平洋方面での戦いに身を投じている大日本帝国海軍が有する五大軍港のひとつ、横須賀港には戦艦『長門』、そして護衛戦艦『神龍』を含めた戦艦二隻を始めとした艦艇たちが停泊していた。

 戦況の悪化と物資の不足によって外洋に出ることなく港から出られないでいる彼女たちはもはやある者は対空砲台、ある者は特殊警備艦と、航海に出て荒波に戦う艦としての称号と誇りを失くしていた。

 そんな横須賀港に碇を下ろしている『長門』に、神龍は同じ戦艦の艦魂である長門とこうして二人で居るときも珍しくはなかった。

 「…私、そういうのわからないからどう反応すればいいかわからなくて……」

 「神龍……」

 「すみません…」

 シュンとなって落ち込む生まれて一年も経ってない幼い少女に、年上の大先輩にあたる長門は優しく言葉を紡いだ。

 「ううん。神龍は悪くないよ。神龍、まだ男の子と話したこともないもんね……」

 「男のかたと話したことがないというか、そもそも私がえるかたと会ったことがありませんから……」

 「…ごめん」

 「な、長門さんは悪くないですっ!謝らないでください…!」

 神龍は本当に申訳なさそうに頭を下げている長門に慌てた。

 「えっと、長門さんが好きになった人ってどんなかたなんですか?」

 「え、あ、私が好きな人……?え、えっとね……」

 「長門さんが好意を抱くかたですから、きっと素敵なかたなんでしょうね」

 「あ、あはは〜……」

 顔を赤くして照れ笑いしている長門は、「羨ましいです……」とぽつりと続けて呟いた神龍の言葉には気付かなかった。

 長門が好意を持つその人は人間なのだが、長門が最近彼と出会う時間が多くなっていることは神龍も知っていた。

 「…ッ!」

 突然、がばっとおはぎを食いついて飲み下した長門は、とんとんと苦しそうに胸を叩くも、ふぅと一息付いた。ちなみにその頬はまだ紅潮していて、口もとにあんこが付いていた。

 神龍もそれを見て何故か慌てて自分も食べかけのおはぎを急いで口に含んだ。

 「じ、実はその人ね……。え〜と……あっ」

 ふと、口もとに微小な違和感を感じて触れた指に付いたあんこに気付いて、顔をさらに真っ赤にしてそれをぱくりと咥えた。

 「…こほん」

 長門は咳払いし、まだ顔を赤く(別の理由で更に赤みが増したが)したまま口を開いた。

 「えっと、私の好きなヒトは……」

 顔を赤くした長門はチラチラと目を泳がせて下のほうを見ている。この下は艦橋で、艦長をはじめとした各長たちが指揮に立つ司令塔だ。神龍は長門のわかりやすさにくすりと漏らした。

 「わ、私の航海長さんなんだ〜。 阿賀野海翔少佐さんって言ってね……えへへ…」

 照れ笑いながら嬉しそうに話す長門を、神龍は微笑ましく聞いていたのだった。

 「へぇ、航海長ですか。 すごいですね」

 「まだ彼と一緒に航海に出たことはないけど、いつか彼が指揮する航海……ううん。彼と一緒に海に出たいなぁ〜……」

 乙女チックにうっとりと未来を思い浮かべて頬を火照らす長門。神龍は微笑ましく「きっと叶いますよ」と嘘のない言葉を掛けながら、どこか目を細めて寂しそうな表情をよぎらせていた。

 「いつから彼のことが好きになったんですか?」

 好きという言葉に長門は改めて顔を赤くするも、こほんと咳払いして、指を一本立てて丁寧に説明を始めた。

 「う〜んと…。彼が私に着任したのは二ヶ月前の十二月で、その間ずっと彼と一緒の時間も多くて……。 いつの間にか気になるようになって……。 彼のことを考えるとこう…胸が苦しくてね……。 他の子たちに相談してみたらそれは恋だって言われて……。 そう言われても私、よくわからなくて……。 でも、彼と会っているうちに、彼が好きなんだなって気付いたの……」

 「………」

 「えへへ…」

 照れくさそうに頬を火照らせ、にっこりと笑った恋する乙女を、神龍は目前にした。

 目の前にいる彼女は噂に聞いた歴戦の戦乙女でもなく、たった一人の恋する乙女だ。ただ恋愛する一人の女の子であり、自分の本当の気持ちに気付くことができた恋姫。ここに神龍は初めて本当の女性というものを見ていた。

 幸せそうな彼女。神龍はなんだか羨ましい感情に浸っていた。

 「………」

 微笑みながらも、自分の羨ましいというやましい感情が表に出るように、目を細めて暗く顔を下げていた。

 長門はそんな彼女を知った。

 生まれてまだ一年も経っていない神龍。時代錯誤となった大艦巨砲主義を未だに信じ続けた日本がその希望を託して軍極秘という名目で開発し、彼女を生み出して無謀な希望を彼女に託した。いや、押し付けたというべきか……。

 今の時代は航空機と航空母艦の時代。それは長門も理解していた。だからこそ自分は外洋に出ることなく出撃の機会も与えられないのだ。この巨砲を活かせたのも戦前まで。せいぜい活かせたのもあの犠牲が多すぎた決戦まで。その決戦の後に壊滅した連合艦隊に、彼女は生まれた。彼女は平和も希望も知らない、闇の中で生まれた女の子。

 彼女にはまだ定員に満たない乗員は乗艦していない。出撃も訓練さえ未経験だ。彼女はこれから危険覚悟で呉に回航することが決まっている。

 まだ自分を視てくれるヒトと出会ったことがない。

 だけど、必ずこれから、彼女のそばにいてくれるヒトが現れるだろう。

 もうすぐここからいなくなる彼女に、長門はそれを想って、優しく声を掛けた。

 「……神龍も」

 顔を上げた神龍に、長門は優しく微笑みかけた。

 「きっと神龍をいつまでも視てくれるかたが、そばにいてくれるヒトが神龍の前に現れてくれるよ」

 「長門さん……」

 「私は絶対にそういう未来があると思うなっ!だからさ、あっちに行っても元気でね」

 優しい笑顔。温かい言葉。

 何故か素直にその言葉が信頼できた。

 神龍の目には、一人の恋する乙女と自分の大好きな仲間が映っていた。

 「あっちには榛名たちがいるし、大丈夫よ。そうだ、あっちに着いたら榛名に手紙渡してくれないかな? 大丈夫よ、私はあなたが無事に呉まで行けることを信じてるから」

 「わかりました…」

 「榛名たちによろしくね。きっとあなたを大切にしてくれるわ」

 「…ありがとうございます。 ……本当に、ありがとうございます」

 受け取った手紙をそっと胸に添えて、神龍は柔らかく微笑んでいた。


 ―――そんな思い出があった。

 気がつくと、【この私】として、私は初めて涙を流していた。

 だけど小さな手に彼の温もりが触れられた。

 そして私は思い出を横目に流しながら、彼に引かれるままになっていた。


 

                             ●



 様々な記憶を映し出す鏡が巡りまわり、時が過ぎていく。

 想いと時間が交叉し、輪廻が紡ぎ、大きな歯車が軋みをあげて回りだす。

 それぞれの想いが、望みが先にあることを信じて。流れるままに身と心を任せて遡っていく。それは永遠ともいえるべき長い瞬間。

 自分はどこに行く、どこまで行く。確かなのはまだまだ遡ることだけだ。

 遡り、そこにたどり着くことが出来れば、願いが成就する。

 さぁ、手を伸ばそう。

 自分自身で掴み取れ。

 そして降り立て、時空を超えて、その場所に。

 自分が望んだ、再びその場所と時間に……


 焼ける匂いと肌をジリジリと焼く熱さ。炎の手が伸び、もうもうたる黒煙が天空を覆い尽くす。

 抱きかかえる身体からは温もりが抜け出し、冷たくなっていく。

 ただ顔を伏せて、その細い身体を抱き締める。その姿は引き裂かれ、露出した肌が赤く染まり、彼女―――神龍―――をぎゅっと抱き締める彼―――三笠―――。長い黒髪が乱れ、軍服のほとんどが破れてしまい、その身が露になっているが、それは赤黒い血で染まり、痛々しい。

 珠のように綺麗だったはずの肌は裂けて血で赤く染まり、さらさらと流れていた長い黒髪も乱れている。

 柔らかい桃色の唇からは血が流れ、もとの彼女の面影はない。

 再び、この時間と場所。この悲しき間。

 しかしこれが、自分が望んだ願いなのだ。

 「三笠、二曹……私……」

 「………」

 「私……もう、……だめ……みたい、です…」

 彼女の放たれる言葉が記憶通りに紡がれる。

 もちろんそんな言葉なんて信じたくない。彼女がこれからもうすぐいなくなるなんて。

 時間が止まって、ずっと彼女といられる瞬間が永遠になればいいのに。

 そう願えざるを得ない。

 ――しかしそれが、今、自分たちに巻き起こっている【奇跡】にこめた願いではない。

 今この瞬間が、【奇跡】。

 こうしてまた彼女といられている時間が再び来ていること。

 そして自分の願いが叶えられようとしていること。

 

 ―――『貴様は何を望む?』―――


 俺の、願いは……


 神龍に……会いたいんだ。


 「菊也さん……」

 「神龍……」

 あの時の姿、消えてしまう前の痛々しい姿。だけど確かに彼女とこうして再び会うことができた。このとき既に三笠の願いは叶っていた。

 「ずっと、会いたかった……」

 やっと絞り込めた声は震えていた。目の前にある神龍の表情は、肌と口もとがあの時と同じ赤い血で汚れていても、微笑む彼女のその表情は変わらない。その黒い瞳に自分を映し出してくれるところも変わっていない。本物の愛しい彼女が、神龍が目の前にいた。

 「私は……菊也さんのこと、ずっと見てました……」

 魂だけになっても、いつまでも三笠のそばで見守ってくれていたという神龍。しかしそれが結果的に神龍という魂を貶める結果になってしまい、三笠はそんな神龍に自分のために自分を不幸にすることなんてさせたくない。だから会えなかった神龍と出会い、自分という呪縛に縛られてしまった神龍を救いたかった。

 自分なんかのそばにいては、彼女は自分を貶めることになる。

 彼女といつまでもずっと生きていくことはできない。彼女の運命は変えられない。それは前世から刻まれた魂が証明している。

 


 ―――彼女には、安らかに眠っていてほしい。



 それが、三笠の本当の願いだった。

 自分が弱かったせいで、ずっとそばにいてほしいだなんて甘えたから、彼女は安らかに眠ることもできず、戦いから解放されたというのに彼女を休めさせてあげられず、自分という呪縛が彼女をいつまでも縛り付けてしまった。

 全ては自分のせい。駄目だ。せっかくこんな辛くて悲しい戦いという運命から彼女は解放されるのだ。彼女を休ませてあげなければならない。

 先にいった艦魂――大和や矢矧たち――、仲間たちのそばに彼女を送り届けてあげなければならない。

 だから彼女が安心して眠れることができるように、自分はここで彼女に誓うのだ。

 そう……


 ――これからは、強く生きることを―――


 そして彼女を笑顔でおくろう。見届けてあげよう。

 この奇跡の最後まで―――


 「……神龍、ごめんな…」

 「…なんで、謝ってるんですか?菊也さん……」

 「俺のせいでお前を鎖に繋げてしまって……。解放してやることができなくて本当にごめん…。俺は……馬鹿だった…」

 「菊也さん……」

 神龍はなにも言わず、黙って自分の声を聞いてくれる。肯定も否定も、反応することもせず、ただ聞いてくれるだけ。三笠はその彼女の優しさと心が嬉しかった。

 「俺は前……ここで、神龍と別れなきゃならないはずだった…。なのに俺の弱さが神龍を引き止めてしまった……」

 「………」

 神龍はゆっくりと、ふるふると首を横に振った。

 「……違いますよ、菊也さん…。私がそうしたかったから……。菊也さんのそばにいつまでもいたかったから……自分で決めて…」

 「……駄目なんだ。それじゃあ……。神龍の気持ちは嬉しい。俺だって同じ気持ちだ。だけど駄目なんだ……。俺たちはここで、それぞれの道に分かれなきゃいけなかったんだ…」

 生きる者と死ぬ者の分かれ道。

 それは運命という残酷さで決め付けられ、避けられない道。

 ここで、二人は本当に別れてしまうはずだった。

 だが半端な気持ちのせいで、いつまでも鎖に縛り付けるような結果にしてしまったのだ。

 「それは俺が弱かったからなんだ。……だから、神龍」

 「はい……」

 「俺は……」

 二人は互いの瞳を見詰め合う。こんな時間がかつてあっただろうか。あの時は互いを見詰め合うことさえできなかった。ただ半端な気持ちで死に別れたつもりになり、そして自分の弱さを露にして絶望に生きた。その後に希望を抱いたって、結局半端な気持ちを持っていたから遅かった。

 だからやり直し、ここから、この終わりという始まりから強い気持ちを抱かなければ駄目だったのだ。

 「――これからは、強く生きる」

 神龍の瞳をまっすぐ見詰め、はっきりとそう伝えた。三笠の心の底から言いたかったことを言えた達成感が湧き上がった。

 沈み往く彼女の艦体ほんたいの上でのあの時なかったはずの誓い。

 これが、自分たちのこの先を変える。

 「菊也さん……」

 ぽつりと呟いた神龍は、瞳の縁に綺麗な涙を浮かばせながらも、柔らかく微笑んだ。

 頬は火照ったように朱色に染まり、一筋の雫が白い頬を伝って肌に付いた血の上を滑る。その笑顔は、今までに見てきた中で一番可愛く、そして美しいものだった。

 三笠も微笑み、そしてその唇に神龍のほうから塞がれた。

 ゆっくりと三笠の顔に自分の顔を寄せた神龍は瞳を閉じて、そのままお互いの唇を合わせた。柔らかくて温かい感触が再び二人の間をやんわりと優しく伝わり、その瞬間だけ時間が止まったかのようだった。

 これほどまでにかつ純粋で温もりがあるキスはあっただろうか。あの最期の瞬間にしたキスよりずっと心が安心してとても気持ちがいいキスだった。

 ゆっくりと、どこからともなく離された二つの唇は綺麗に輝き、神龍の唇も火照った頬のように朱色で、そしてぷっくらとした柔らかいものだった。その口もとが微笑み、頬を伝う一筋の温かい涙、なにもかもが安心と温もりで包まれた彼女の笑顔が、そこにあった。

 「えへへ……」

 子供っぽく照れる神龍がとても愛おしく三笠は感じた。

 もう、また彼女と別れることになる。それが本当の、別れだ。

 あの時のような半端な別れではない。これで、心は決まった。

 それは神龍も同じだった。

 「…嬉しいです。……菊也さん、私、とっても今の気持ちが……軽くて気持ちいいです…」

 本当に優しくて温かい微笑み。

 三笠もまた微笑み、そして頷きながら彼女の瞳をずっと見続けていた。

 「…ああ。神龍、俺のことは心配しなくていい……」

 「…ふふ。それでも私は菊也さんがちゃんとやっていけるのか正直心配ですけどねぇ〜…」

 「おいおい……」

 「冗談ですよ…」

 小さく笑いあう二人。まるでこの空間だけが外と断絶しているかのようだった。海水に浸かって沈もうとする彼女の艦体からだとは相反して、その魂である彼女はとても安らかだった。

 「ありがとうございます……菊也さん…」

 瞳を閉じてほくそ笑む神龍。その肌がうっすらと透けていく。彼女の身体は光となってすこしずつ透けていく。その透けていく身体から光の粒子が天に昇っていく。

 それは本当に安心して、天に昇っていけるあかしだった……。

 「菊也さん…私の願い、なんだと思いますか……」

 瞳を細く開いて、その優しげに覗く瞳がじっと三笠を見詰めた。

 「……もちろん、私も菊也さんと会いたかったです。でも本当の願いは……」

 神龍は、愛しい彼女はそっと、人差し指を彼女の自分の唇に当てて、微笑んでそう言った。



 「いつまでも、私のことを大好きでいてください」



 「神龍……」

 「それが、私の願いです」

 そう言って微笑んだ神龍の笑顔は本当に無垢で純粋な、美しいものだった。まるで女神のような、大きな存在。その彼女の全ての存在が、本当に好きなんだと改めて気付かされた瞬間だった。

 三笠はなにか言いかけたが喉が震えて声が出なかった。顔を伏せ、肩が小刻みに震えた。

 「……当たり、前だろ…」

 そしてやっと絞り込んだ声が紡がれる。

 「…俺は神龍が大好きだ。この気持ちはいつまでも絶対に変わらないさ」

 「……それが、聞けて……良かったです…」

 光の粒子が神龍の身体から天に昇っていく。そのたびに神龍の身体は透けていく。その存在が消えていく。しかしそれは本当の本当に、安からに眠っていく過程だった。

 「私も……」

 三笠は聞いた。

 ―――彼女の、神龍の最期の言葉を。

 「菊也さんのことが、とても大好きです…っ!」

 その瞬間、神龍の唇が三笠の唇に押し付けられ、再び二人の唇が重なった。

 それはまるで初めてしたかのようなぎこちないもの、感触は僅かしか感じられない。重なる神龍の唇がほとんど透けていた。

 互いの唇を離し、三笠は目の前にある神龍の微笑んだ柔らかい表情を見た。

 それは本当に安らかに眠るような表情だった―――

 

 ……神龍は、光となって完全に天空へと昇っていった。


 三笠はさっきまで彼女を抱き締めていた手の平を広げた。はらはらと僅かに残っていた彼女の光の粒子が舞い、そしてそれも消えていった。

 彼女が光となって消え去った天を仰ぎ、三笠は意を込めた。

 「…今までありがとう、神龍。俺は……強く生きるよ…」

 その瞬間、海水に浸かった『神龍』はその巨艦を左舷に転覆させた。どーっと巻き起こった白波が三笠のその姿を完全に隠していった。

 護衛戦艦『神龍』は艦内への浸水と砲撃による複数の大穴によって耐え切れなくなり、転覆した。直撃弾で大穴が開いた艦橋は折れ曲がって海中に没し、奮戦したその主砲からはなにもかもを消失させる光は生じることなく、『神龍』はその身を海底八十メートルに向かって静かに沈んでいった。

 


 ……二人の願いは叶い、奇跡は終わった。

 

 ―――奇跡は終わり、奇跡を起こした当事者次第にそれは幕を下ろした―――


 それを見届けた世界の常識を超えたその存在は、満足げに闇の狭間へと消え去った。


 ―――これはバッドエンド?それともハッピーエンド?どう思うかは傍観者であるあなた次第―――


 最後に反響する少女の声は、それを最後にしてもう聞こえることはなかった。






 ……夢の最後に少女の声を聞いたような気がした。

 目が覚めると、少女の声など忘れていた。

 ……泣いていた?

 そっと指で触れると、涙が一筋頬を伝っているのがわかった。

 しかし気持ちはなにか重いものも抜けたようで清々しい気分だった。

 「起きたか」

 聞き覚えのある声のほうにゆっくりと顔を向ける。阿賀野の真剣な表情がそこにあった。

 「……具合はどうだ?」

 冷静に通ったその声には心配をしてくれている部分が見えた。

 前を見据えようとすると白い天井が見える。そんな前にも見たことがあるような光景。三笠はベッドに寝かせられ、そしてここは病室だということを白い天井と薬品の独特のにおいが物語っていた。

 「…ここは」

 「お前、『三笠』の上に倒れてたんだからな。見つけたときはびっくりしたよ」

 「阿賀野さんが俺をここに…?」

 「倒れてたお前を運んで帰ってきたんだ。急いでこうして医務室に運んだが、見る限り大事には至ってないらしいな」

 阿賀野は安堵したかのような表情をしてから、いぶかしむような表情になって三笠に問うた。

 「だけどお前、なんであんなところで倒れてたんだ?」

 「………」

 三笠は頭の中に鮮明に残っている奇跡を巡った記憶を思い出させる。

 再び彼女と出会うことが出来、そしてやり直すことが出来た。もう、自分のそばに彼女はいない。彼女は、自分のそばにいなくたって、ずっと見守ってくれる。そして彼女の願いも自分はここに受け止めた。

 思い返せば信じられないことばかりだが、確かに実際に体験したことだ。

 正に奇跡。彼女と真の意味で別れ、しかし永遠を誓った、有意義ある瞬間をもらった。

 何故だろうか……。夢の最後に誰かの声を聞いたような気がするが、全然思い出せなかった。そしてそれが誰のかも。さらに、誰が自分たちに奇跡というチャンスを与えてくれたのか。その存在がまるで枯れ落ちた木の葉のようにあっけなくひらりと舞い落ちたかのように三笠の記憶から消え去っていた。

 そして、夏加のことは三笠は覚えていても、阿賀野は覚えていなかった。

 「いきなり一人で飛び出すんだからな。慌てて追いかけてみたら倒れてるし……。一体なんなんだか」

 阿賀野はまるでアメリカ人演出よろしく肩をすくめて笑った。

 「…わかりません」

 三笠はただ虚空を見詰めて呟くように言った。

 「…覚えてないです」

 彼に対して、そう答えるしかなかった。

 「……そうか」

 「ただ……」

 三笠は真実を告げることができない阿賀野に向かって、感謝するように微かに口もとを和らげて、微笑んだ。そしてその瞳には強い決意の炎が見えるようなものがこもっていた。

 「進むべき道をこれから探していこうと思います。そしてそれがこれからの俺が生きていく過程だと思っています」

 「……そうか」

 阿賀野はじっと三笠の瞳に見えるなにか決意を見透かすように見詰めていた。

 「…彼女と約束しましたから」

 三笠は阿賀野の反対にある窓の外に視線を移し、星が煌く夜空を仰いだ。きらきらと輝く星の数々。その中で半月が淡い光を灯っていた。

 あの星空の向こうで、彼女は見守ってくれている。三笠はそう信じていた。

 もうなにも臆することも恐れることも弱くなることもない。

 彼女と約束した。それだけで、自分自身は強くなるのだ。

 ――これからは、強く生きる――

 そして彼女の望みどおりに、自分はいつまでも彼女を想い続け、好きでい続ける。

 それは永遠に。いつまでも――彼女を愛する。

 そばにいない。ここにいない。姿が見えない。声も聞けない。だが、彼女は見守ってくれている。そんな彼女を自分は愛する。

 愛しくて、大好きな彼女。三笠の心にもう迷いなどという弱さもなかった。

 「神龍……見てくれているか…? 俺は……強く生き続けるからな……」

 淡い月の光が闇夜に浮かぶ夜空。その時、一瞬の流れ星が流れていった。

 その流れ星が流れる夜空に、彼女が――神龍が自分を見守りながら優しく微笑んでいるような気がした。

伊勢「伊勢と〜」

日向「日向のぉ」

伊勢・日向「艦魂姉妹ゲストお呼び出しラジオ〜」


――本番組は、北は樺太、南は台湾まで、全国ネットでお送りいたします―――

――大本営・海軍省・大日本帝国海軍支援協会・艦魂同盟の提供で、お送りいたします―――


日向「今回も本編の空気を読まずに始まったこの番組。このラジオ番組は、ぱー?ぱー…ぱーそるなるてぃは私たち伊勢型姉妹、伊勢姉さんと私、妹の日向、そして愉快な仲間たちがお送りするわ(棒読み)」

伊勢「最終回も目前。ということはこの私たちの番組も次で終わりなのね。今回は最終回目前ということで神龍もお呼びしてるわ」

神龍「よ、よろしくお願いします…っ」

作者「さて、では皆さん。お気づきかと思いますがここはどこでしょう?」

日向「どこって…。ドームよね?」

伊勢「東京ドームほどではありませんね」

神龍「いつもより数十倍広い収録場って聞きましたけど、完全にドームですね。野球とか陸上とかサッカーをやるような……」

榛名「なんだ。野球でもするのか?」

作者「いえいえ。実はもっと広い空間にするように向こう側のご要望がありましてね」

日向「なんで?」

作者「私もよくわからないんですけど……ん?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


日向「な、なにっ?」

榛名「地震かっ?!」

ズドォォォォォォォォォンッッ!!!

(巨大な艦首がドーム内に突っ込む)

日向「な、なによこれぇぇぇっ?!」

榛名「せ、戦艦?!」

天城「でもどこか違うよぉぉ〜〜っ?!」

神龍「あれって…!」

雪風「きゃああああ!」

矢矧「雪風ッ!」

作者「あれはまさか……」

バシュッ!

(ドアが開き、なにかが発砲される)

ズキュウウウウウン

大和「む…ッ!」

(大和、紙一重で避ける)


???「ちょっとなにいきなり撃ってるの?」

???「ええい黙れ!我は大和(伊)を殺しに来たのじゃっ!」

???「…日本人って荒いのね」

???「そう言うエリーゼさんもRPG−7を構えるのはやめなさいっ」


榛名「な、なにかあのふざけたような戦艦から声が聞こえるが…」

雪風「あっ。誰か降りてきましたよ」

撫子「もうっ。現れていきなり撃つなんてなに考えてるの」

京子「ふん。大和(伊)を殺すことだけじゃ」

エリーゼ「………」

日向「誰?」

作者「この子たちは紀伊(草薙先生)から来た艦魂たちだよ」

撫子「初めまして。今日は私たちをお招きいただきありがとうございます。さきほどは本当に申し訳ありません」

京子「挨拶初っ端からなにを謝っておるのじゃ」

撫子「あなたのせいでしょ…っ」

エリーゼ「自覚ないのですね」

撫子「あなたもですっ!」

日向「この子たちがゲスト?また複数で来たわねぇ」

撫子「当初はこの二人がそちらにお伺いになるはずだったのだけれど、私たちの作者さんから二人だけで行けせると暴走の危険があるって懸念されて、それを阻止する義務を私にお任せになられたの」

天城「それはご苦労様だね〜」

葛城「…ご愁傷様」

京子「それより大和(伊)はどこじゃ。どこにいる!」

大和「おお、京子殿。久しぶりだな」

京子「ふん。ここで会ったら百年目。覚悟しろ、大和(伊)!」

大和「私の名前は大和なんだが……」

京子「あの時の屈辱、今こそ晴らしてやるわ……」

撫子「ちょっと京子…!」

京子「さがっていろ。我はなんのためにここに来たと思っている。――それは憎き大和(伊)をこの手で殺すことじゃぁぁぁっっ!!」

撫子「だからやめなさぁぁぁいっっ」

京子「というわけじゃ。覚悟するのじゃ、大和(伊)」

日向「…ちょっと。あまり暴れられるとこちらとしては迷惑なんだけど?」

京子「安心しろ。我が狙うのはそこの変態のみ。汝らは大人しく見学でもしとれば危害は及ばん」

榛名「自分たちの司令長官が殺されるところを大人しく見学できるかぁぁぁっっ」

大和「私なら大丈夫だ、榛名。心配するな」

榛名「長官…」

京子「ふん。仲間の前では司令長官面か」

大和「あぁ、相変わらずそのツンツンぶりがいいなぁ。お姉さんが可愛がってあげよう」

京子「ぬあっ? ちょ、またかっ?! や、やめろぉぉぉっ!!」

エリーゼ「哀れですね…」

榛名「おい、そこの欧米人」

エリーゼ「…私?」

榛名「貴様以外に誰が居る」

エリーゼ「それもそうですね…」

神龍「は、榛名姉さん…ッ」

榛名「安心しろ神龍、なにもしない」

エリーゼ「…初めまして。私はドイツの未来戦艦フリードリッヒ=デア=グロッセ。真名はエリーゼ。よろしくお願いします」

榛名「…ドイツ人か」

神龍「わ、私、ドイツ人って初めて見ました。綺麗なかたですね〜。ドイツって同盟国ですよね?」

エリーゼ「…あなたがたの世界では。しかし私たちの世界では史実と大幅に異なりますので、日本とドイツは敵同士です」

神龍「え、そうなんですか…」

エリーゼ「…はい。私たちのWW2ではソ連を解体してスターリンを抹殺し、イギリスに上陸。私たちドイツ第三帝国はフレドリク様とともにヨーロッパを制圧し、日本やアメリカと交戦しながらも目的を着々と進めております……」

榛名「…ふむ。同盟国であるドイツが敵というのは個人的には悲しいが……。そっちの世界にもそっちの事情と情勢というものがあるのだろう」

作者「ちなみに彼女は外伝のもうひとつの物語であるドイツ視点、魔王のメインヒロインでもあるんですよ」

神龍「へぇ〜、そうだったんですか。すごいですね。エリーゼさん、よろしくお願いしますっ」

エリーゼ「…よろしくお願いします」

作者「うんうん。仲良しになるのは良いことだよ」

エリーゼ「目標発見」

作者「…へ?」

エリーゼ「排除する」

作者「え、ちょ…。た、対戦車兵器は人間に向けるものじゃないですよ……」

エリーゼ「排除」

作者「ひっ?!」

ズドォォォォォォォォォォンッッ!!!


日向「さぁ始まりました。ここからの実況は私たち姉妹がお送りいたします。実況は私、妹の日向。解説は元金メダリストの伊勢姉さんです。よろしく姉さん」

伊勢「元気があればなんでもできる。皆さん元気ですか?」

日向「1、2、3ダーとでも言いそうな解説よ。ありがたく姉さんの解説を耳の穴かっぽじって言葉のひとつひとつを聞き漏らさないようにお願いね」

伊勢「1、2、3ダ〜」

日向「それにしても作者、意外と足速いわねぇ」

伊勢「彼はリレーの選手に選ばれてきたこともあり、中学まではサッカー部だったようね」

日向「馬鹿作者のどうでもいい解説でもありがとう姉さん。テメェらちゃんと聞いてたかぁぁっ」

雪風「はい!」

天城「伊勢サイコー!」

榛名「…なんなんだこれは」

日向「そしてスペシャルゲストとして撫子さんにお招きいただいているわ。さて、彼女たちを止めるために同行してきたという撫子さん、止めなくていいの?」

撫子「もう私の手に負えないような気がしますから諦めます」

日向「見事な潔い諦めっぷりのコメントをありがとう」

作者「お前らぁぁっ!見てないで助けろぉぉぉっ!!いや助けてください!!」

神龍「あの…。本当に助けなくていいんですか?」

日向「いいのよ。ていうか馬鹿作者って足速いけど、てことは運動神経はどうなのよ?」

伊勢「彼は確かに中学まではサッカー部だけど、運動のほうはあまり得意ではなく、文系のほうよ。本を読むのも書くのも好きだって」

日向「じゃあなんで運動系の部活だったのかしら…」

伊勢「それにはどうでもいいような事情があるけど説明する?」

日向「別にいいわ(あっさり)」

作者「ひええええっ?!何故私を狙うぅぅっ!」

エリーゼ「…あなたはあの変質者を生んだ張本人。彼女による被害は各地で増大。よって生みの親であるあなたに責任を取ってもらう」

作者「なんだそりゃぁぁぁっっ!!」

大和「ほぅ。変質者とは私のことかな?」

エリーゼ「…ッ!」

作者「や、大和ぉ…。助かった…!」

大和「なんなら私が相手しよう。ああ…やはり外人の子もいいなぁ。特にあの蒼い瞳が……はぁはぁ…」

エリーゼ「………(チラリ)」

(エリーゼ、大和の後方で跳躍して構える京子に視線の合図を送った)←日向の実況

京子「(本来は敵だが、この状況はやむをえん…)」

エリーゼ「(…今回は一時休戦並びに共同戦線)」

(大和、手をわきわきさせてエリーゼに歩み寄る。エリーゼ、後ずさる。エリーゼどうなるのかっ?)

(あー。ラムネー。ラムネはいかがっすか〜)

(あ、天城さん。ラムネください)

(あいよ雪風)

(天城、なにをしている…)

(いやぁ。やっぱりドームだとこういうのは常識じゃん〜?本当ならビールを売りたいところだけど)

(ちょっとそこ静かにしなさい。…あ、もしかして音声マイク拾ってる?あーあー…。テステス。先ほど余計な雑音っぽいものが聞こえましたがなんでもございませんので構わないでください)

大和「はぁはぁ…」

ジリジリ…

エリーゼ「(コクリ)」

京子「(よし!)」

(京子、銃口を大和の背後に向けたっ!)

京子「もらった大和(伊)ッ!死ねぇぇぇっっ!!」

ズキュウウウウン

大和「ふ…」

バッ!!

(おぉっと大和!それを華麗に跳躍してかわしたぁぁっ!)

京子「なにぃっ?!」

エリーゼ「………」

(大和、一回転して着地)

大和「ふ。こんな程度で私が倒せると思ったか。私はかつて世界最強の連合艦隊旗艦を務め上げ、今までも彼女達の司令長官として立つ、超弩級戦艦『大和』の艦魂、大和だぞ。舐められたものだな」

京子「…腐っても司令長官というわけじゃな」

大和「さて…仕方ないがどうやらお仕置きが必要のようだな。なに、すぐ終わる」

(あーっと大和、腰の日本刀を抜いたーっ!)

京子「…くっ。上等じゃ。我は逃げも隠れもせんわ」

大和「いい心がけだな。……参るッ!」

(大和、足で地を蹴って京子目掛けて跳躍ーっ!)


シュバッ!!


(え?な、なに…?って、なにあれっ?!)

榛名「なんだあの影は。は、速いッ!」

伊勢「まっすぐ京子さんのところに……」

バッ!!

(影が一瞬、見えない速さで京子に通りかかる)

大和「…ぶはっ!」

(大和、何故か鼻血を出して撃墜される)

京子「な、なんじゃ…?」

大和「か……かわい…すぎ…る…(ガク)」

京子「な、なんじゃ…?ていうか、なにやら身体に違和感を感じるのだが……って、なんじゃこれはぁぁぁっっ!!」

(な、なんと京子!ネコミミ付きのメイド服を着ているぅぅっ!ていうかなにあれ?)

京子「ぬおおおっ?!なんじゃこのふざけた格好はぁぁっ!我がこんなものを着ようとはなんという羞恥…!」

エリーゼ「落ち着きなさい」

京子「これが落ち着いてられるわけないじゃろうっ!……って、汝もなにか着ているではないかぁぁっ!!」

(エリーゼ、スク水姿)

エリーゼ「…不覚です」

京子「だ、誰じゃ!我にこんなものを着せたのは…!」

榛名「なあぁぁぁっ?!な、なんだこれはぁぁっ!!」

日向「榛名、どうしたの?――って、ぶっ!!」

榛名「何故私が上に水兵服、下にスカートなんか履いてるのだぁぁぁっっ」

日向「ていうかそれ、セーラー服っていうのよ!あはははは、おっかしいわねそれ。あははははっっ」

榛名「笑っている貴様も同じものを着ているではないかっ」

日向「え?まっさか〜。…って本当だっ!?ていうかなんでっ?!いつの間にぃぃぃっっ」

伊勢「あら、私も…」

(古参三人組、セーラー服姿)

作者「う〜ん。日向は胸があまりないから現役女子高生みたいで似合ってるけど、榛名はサイズがすこしあわなくてヘソ見えてるし……伊勢はある部分が膨らんでてエロいなぁ…――ぐほっ?!」

日向「なに見てるのよぉぉぉっっ!!」

雪風「きゃああああ!?なんですかこれぇぇぇ」

矢矧「雪風、どうし――ッ!」

雪風「な、なんで私、ブルマにニーソックス履かされてるのぉぉっ?!わ、私の巫女服はどこぉぉっ?!」

矢矧「ドクドクドク(鼻血)」

雪風「…って矢矧さん鼻血鼻血!…というか鼻血出してる矢矧さんもなにか着てますよっ?それ、まさかバニーガールですかっ!?」

天城「私はチアガールだ〜。可愛い〜。しゃかしゃかっ」

葛城「その擬音はおかしいと判断する…」

天城「そういうかつらちゃんは……えっ?!ウサミミに体操服ってなんなの〜?!」

葛城「…対ソ服?」

天城「体操服ッ!」

龍鳳「わ、私なんかナースさんですよ?看護婦さん?!なにこれぇぇぇぇ」

神龍「皆さんはまだいいじゃないですか!制服とか職業服とか……。私なんて上からネコミミ、体操服、スク水、猫の尻尾、ニーソックスですよっ?!すっごく卑猥なんですけどっ!」

作者「うわ…。カオスな光景が広がっている…。まるで年に二回のお祭りのようだ」

京子「おのれっ!誰だッ!!」

スタッ!(影が着地する)

???「ある時は他人に好みの服を着させる特技を持つ謎の影ッ!」

日向「とうとう姿を現したわね…。って、なにあれっ!?」

榛名「じ、侍女…?」

天城「メイドさんだー。可愛い〜」

???「ある時は神速の速さで飛躍するメイドさん。その実態は……」

作者「………(滝汗)」

神龍「あ、あれは…」

翡翠「私は新太平洋戦争(零戦先生)からやって来たコスプレ大好き人間、翡翠参上よっ!!」

日向「はぁっ?!もしかしてまたゲスト…!?っていうか人間じゃないっ!」

京子「…人間風情が我をこんな姿にするとは…。許せん……」

エリーゼ「でもなかなかやりますね、あのかた」

京子「…何故汝はまんざらでもない顔をしているのじゃ」

大和「う〜ん……。…お、おぉ…。目覚めるとそこはまるで夢の続きのようなパラダイスひゃっほう!」

翡翠「大和(伊)こんにちは。あなたに会えて嬉しいわ」

作者「(あの人もそういう呼び方なんだな…)」

大和「おお、翡翠殿ではないか。私も会えて良かったぞ。 …はは。本当に言っていたとおりに己もメイド服を着て来たのだな」

翡翠「当然よ。まず自分自身が着ないとコスプレは始まらないわ」

大和「うむ。まぁ私はただ可愛いものに目がないだけだがな」

翡翠「というわけで、あなたも着なさい」

大和「え…?やっぱり私も着るのか……」

翡翠「当然でしょ?あとはあなたが着ればコスプレパラダイスの完成よ。はぁはぁ……」

大和「しかし自分となるとそういうのは経験ないからなぁ」

翡翠「任せなさい。私が着せてあげる。その道着姿も良いけどやっぱり女の子は可愛くなきゃ。それっ!」

シュバババッ!(目に見えない速さで大和を着替えさせる翡翠)

翡翠「出来たっ!」

大和「…変わった服だが、これはなんなのだ?」

翡翠「私が希望したとおりの綾波スーツよ。というわけで大和(伊)、『私があなたを守るから』ってセリフ言ってみて。ちゃんと綾波風にね」

大和「よく知らんが……。ん、こほん…」

翡翠「どきどき…」

大和「わ、『私があなたを守るから』……」

翡翠「GJ!」

京子「おいこら、そこの人間。いつまでふざけているつもりなのじゃ」

翡翠「あら。やっぱりツンツンしてるところが可愛いわねぇ。はぁはぁ…」

大和「だろう?はぁはぁ…」

京子「最悪のコンビじゃぁぁぁぁ!!両者ぶっ殺ぉぉぉぉすっっ」

エリーゼ「落ち着きなさい」

京子「これが落ち着いていられるわけないじゃろぉぉがぁぁぁ!!だから汝は何故にそこまで冷静なのじゃ!」

撫子「だ、駄目ですよ乱暴は〜」

京子「む? うおっ?!なんじゃその格好は!」

撫子「な、なんで私はスーチーなの…。あらあらじゃすまないわ…」

エリーゼ「まだマシなほうかと思いますが…」

翡翠「いやぁ最高ね。うんうん」

作者「あのー…。翡翠さん?」

翡翠「なにかしら。あなたもなにか着たい?」

作者「いえ。私にはそういうのよくわからないし、こんなこと書いてるけどそういう趣味もないので」

翡翠「あらそう?残念ねぇ」

作者「まぁ着るとしたらナチスの軍服か帝国海軍士官服、もしくは海自だね」

翡翠「似たようなものだと思うけど…」

作者「それよりさ、そろそろ戻し……ぎゅうっ!」

日向「そうよ戻しなさいよっ!」

榛名「いつまでもこの格好は耐えられんッ!」

神龍「は、早く戻してくださ〜いっっ(涙目)」

翡翠「え〜?どうしよっかな〜…」

大和「…ふむ。まぁそろそろいいんじゃないか?翡翠殿」

翡翠「何よ、大和(伊)まで…」

大和「十分楽しんだろう?この辺で終わりにしよう。私も楽しかったぞ」

翡翠「仕方ないわね…。ま、私も楽しかったし。そうね、そうするわ」

(翡翠によって全員元の姿に戻る)

日向「やっと戻ったわ…」

雪風「ふええ〜〜」

矢矧「…やっぱり雪風は巫女服がいい」

雪風「え?矢矧さん、なにか言いました?」

矢矧「…ッ! べ、別に…」

神龍「もう私、お嫁にいけません…。ぐすっ」

翡翠「悪かったわよ。いや〜でも楽しかったわぁ。ありがとね、みんな」

榛名「ありがとうではないわっ!」

翡翠「大和(伊)、今日は本当にありがとう。楽しかったわ」

大和「私は特になにもしていないが、楽しんでくれたようで良かったよ」

翡翠「うん。それじゃまたの機会に。じゃあね〜」

ダッ!(逃げ)

エリーゼ「逃げましたね」

京子「待たんかぁぁぁ!!我に恥をかかせるとは生きて帰さんっっ」

撫子「それじゃあ皆さん、色々とありましたけど今回はありがとう。私たちもそろそろ帰ります。あ、ちゃんと私が操縦してまっすぐ帰るから、心配しないで(コソッ)」

京子「追撃じゃ〜っ!」

エリーゼ「私はさっさと帰りたいです…疲れました…」

撫子「それじゃ皆さん、ご機嫌よう」

(三人、時空戦艦に乗り込む)


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


日向「行っちゃったわね…」

榛名「本当になんだったのだ今回は…」

日向「ていうかよくもまぁ二つの作品のキャラを同時に出したわね」

作者「まぁね。そういう面白いこともやってみたかったし、この作品も次回で最終回だしね。今回は本当に疲れたよ。本編とあとがきを同じくらい力入れて書いたつもりですから。草薙先生、零戦先生、ありがとうございました。如何でしたか?もう罵倒も抗議も覚悟の上です。ご意見や感想お待ちしております」

神龍「この作品もいよいよ次回が最終回です。ここまで来れたのも皆様のおかげ…。これはまた終わりに言いたいと思います。では、次回は最終回。最後の最後までどうかお付き合いくださいねっ」



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