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Epilogue.....05 〜 The near future 〜

日数を数えてみるとまた前回の更新から一週間程度ですね。

なんだか一気に艦魂作品が増えて、艦魂の世界が幅広く広がりましたね。私も他の先生がたの作品を読むのに専念して、自分の作品への執筆はさらに思うように進まず……(笑)

って、ただの言い訳ですね。もちろん艦魂作品が増えたことは同じ艦魂作品を書く者としては嬉しい限りです。

皆さんも頑張ってますから、私も頑張らなければ。

最近、遂にめっきりと寒くなってきました。冬です。マジで雪が今にも降りそうです。実際山のほうで初雪が観測されました…。道理で寒いと思った……。

しかも明日から街中でも初雪が降るという予報。

………。

これからどんどん寒くなっていくんだなぁ。


The near future...【近い将来・目前】


今回のゲストは、あの平成の艦魂がご登場です!

ではご覧ください。


 廃ビルが並ぶ廃墟で、三笠は元帝国海軍軍人の少佐だった阿賀野に出会った。進駐軍の軍服を着る阿賀野は、GHQに身を寄せている日本人職人なのだという。阿賀野のお願いによって、三笠はGHQの占領政策の一環である作業に手伝わされることになり、互いの記憶を掘り起こすように会話していた。二人は互いに似た境遇を共感した。

 作業が終わり、工場の跡地から賠償対象として接収した機器等は進駐軍が所有するトラックに何処へと運ばれていった。

 山のように積まれた機械類を乗せたトラックが去るのを見届けると、三笠はその夜を阿賀野の誘いによってともに過ごすこととなった。

 給料袋を三笠に手渡した阿賀野は、三笠に声を掛けた。

 「なぁ。お前、明日もうちでやってみないか」

 「はぁ…」

 「どうせサイフ失くして行く場所もないんだろ? うちにいればこうして金も出せる。 今の日本は戦争の後で貧しいからな…。 ここで金を得るところを見つけられたことはラッキーだぞ」

 確かに阿賀野の言うことは間違っていない。今の終戦直後の日本は飢えと貧困の国だ。かつて大国を討ち、欧米諸国の植民地支配に怯えるアジアの中で唯一希望の光として栄光に輝いていた大日本帝国の面影はどこにもない。

 日本は、植民地支配が根強いアジアの中で唯一の独立国だった。

 しかしまた日本も、アジアの共栄圏を抱えた戦争に負け、日本自身も、占領される身となっている。

 日本もまたこうして植民地支配の王である欧米に占領された。

 そして救おうとしていた植民地のように他国に支配され、飢えと貧困に苦しんでいる。

 しかし日本がやってきたことは無駄ではない。

 すでにかつての戦争で、開戦からの戦争初期の間に日本は欧米列強の勢力を排除し、東南アジアの国々を独立させた。

 身を持ってアジアの国々を救った日本は、自らが犠牲になっても、当初の目的を達成した。

 だから今度は、日本が自分自身を取り戻していく番である。

 今はかつての敵国に占領され、国が変貌を遂げようとも、その国に生きる国民たちは焼け跡から立ち上がり、復興を目指している。

 復興を目指すには、想像を絶する苦労を要する。

 焼き尽くされた国土のように消滅した経済を養おうとしても、人々は食べて生きていこうとしても、肝心の職業も就くには困難だった。

 職業は見つからず、これでは復旧の鍵である経済を豊かにすることもできない。

 そしてなにより、食べて生きていくという生活を人々は手に入れることはできない。

 まさに貧困大国に堕ちてしまった日本で、職を見つけることは【ラッキー】である。

 「…俺が所属する部署、覚えているか?」

 三笠は阿賀野に視線を上げた。

 阿賀野の言っていた言葉を思い出す。

 「日本軍―――いや、無条件降伏した元日本軍を解体する役割を持つ部署だ。 かつて国のために戦った軍隊の軍人が、その軍隊の解体だなんて皮肉な話だが……、だからこそ元軍人だった俺が選ばれたわけだけどな」

 「………」

 「それで、お前に見せたいものもある」

 「…俺に、ですか?」

 「そうだ。 明日そこに行くんだが、そこで見せたいものがある。まぁ、それが明日の仕事に繋がるんだが……。 ―――俺と同じお前だからこそ、見せたいんだ」

 「………」

 二人は、同じ―――

 それは作業の際に交わした会話の中で共通した部分。

 それぞれ、大好きだったものが、同じ存在だったこと。

 似た境遇。

 言葉に明らかに出さずとも、二人は分かり合っていた。 

 三笠は阿賀野の瞳を見る。

 その瞳は自分と同じみたいだった。

 その瞳は、三笠も同じ、大切な人を見てきた瞳。その瞳の奥には、今映っている三笠とは別の、彼にとっての、【彼女】が在る。

 そして見せたいものとは、おそらく目の前の彼と自分にしか見えないものだ。

 三笠は、気を引き締めた表情で頷いていた。

 


 翌朝、阿賀野が運転するジープの助子席には、いつも隣にいるアメリカ人同僚ではなく、三笠だった。

 ジープの助子席に座ろうとしていた同僚を、阿賀野が引き止めていた。

 「待て。今日はこいつが乗る」

 阿賀野が親指でクイッと指差した方向には、阿賀野の左肩の後ろに立つ三笠がいた。三笠の顔を訝しげに見詰めた同僚は口を開いた。

 「はぁ? じゃあ俺はどうするんだ」

 「走って付いてこい」

 同僚が呆気に取られている。阿賀野は英語で会話しているため、三笠は二人がなにを喋っているかわからないが、どんな会話をしているのか状況で大体わかっていた。

 「…無茶言うな。ジープは一台しかないんだぞ。前に一台破壊されたしな」

 三笠が英語をわかっていれば青ざめる場面であろう。知らなくて幸せなところもある。

 「だから走って付いてこいと言っているだろう」

 「お前、いつからそんなに偉くなったんだ…」

 同僚は、目の前にいる偉そうな日本人を見詰める。本当に敗戦国側の人間なのかと疑いたくなるほど戦勝国側の自分より偉そうというか、立場をわかっていないような振る舞いである。

 雇われている立場のくせに、何故自分が降りなければならないのか。

 「いいから。俺はこいつと二人だけで先に行かなきゃいけない用事があるんだ。頼むよ」

 「……負けた側の人間とは思えねえぜ、相変わらず」

 その皮肉めいた言葉に、阿賀野は笑って返した。

 「関係ないだろ。俺はお前なんかよりこいつと二人で乗りたいんだ」

 「同じ日本人同士仲良くしたいってか」

 阿賀野の笑顔に、同僚はちっと舌打ちし、乗りかけたジープから足を下ろした。

 ずかずかと不機嫌そうに歩む同僚に「悪いね」と言う阿賀野とすれ違う間際、「ホモ野朗はドイツ人だけかと思ったぜ」と根拠があるかどうかわからない言葉を吐いてから、三笠をひと睨みして去っていった。

 「あの…いいんですか?」

 「ああ、なんか誤解されちゃったようだけど気にするな。あいつの偏見がよくわからないよ」

 「? そういえばなにか言っていたようですけど……」

 「あいつはドイツ人相手に喧嘩したいそうだ。俺たち日本人としかしたことないからな。ただそれだけだ」

 「はぁ…」

 阿賀野が運転席に乗り込み、続けて三笠も助子席に乗り込んだ。と、三笠は乗り込んだ直後、閉じたドアのそばに立ってこちらを見詰めてくる夏加に気付いた。

 「お前…」

 「ん?」

 阿賀野も気付いたように夏加を見た。

 「連れ添いの子か」

 「はい… あ…」

 ガチャ。

 ドアを開けて無言で入ってきた夏加は、ただでさえ狭い中で三笠のほうに身を乗り出して三笠の膝の上に座り込んだ。

 ちょこんと三笠の膝の上に座る夏加。

 「留守番してろって言ったんですけど…」

 「いいじゃないか」

 三笠は驚いて阿賀野のほうを見た。

 「一緒に付いて行きたいんだろう。このまま追い返しちゃ可哀想だし、連れて行こう」

 「…いいんですか?」

 「構わんさ」

 阿賀野は優しげに微笑み、三笠の膝の上にちょこんと乗る夏加の頭を撫でた。

 阿賀野の大きな手が優しく夏加の頭を撫でていると、夏加の変化に三笠は気付いた。

 それは、自分が撫でてあげたときと同じだった。

 どこか嬉しそうな雰囲気があった。

 頭を撫でられ、その無の内から、どこか嬉しそうにしている夏加。阿賀野は優しい微笑みを変えないまま、夏加の頭を優しく撫でていた。

 三笠は、そんな少女を見て、思った。

 まるで―――

 「(神龍に似てるな……)」

 頭を撫でたら嬉しそうに微笑んでいた彼女。「子供扱いしないでください!」と言うも、それでも嬉しそうだった愛しい彼女。大好きだった彼女のひとつの記憶。頭を撫でてあげると、安心する。彼女のその嬉しそうな笑顔に、自分がどれだけ救われ、温もりをもらったか。

 忘れられない、最も忘れられない記憶だった。

 阿賀野は夏加の頭から手を放してから、ハンドルを握った。「まぁ、向こうはつまらないと思うけど大人しく待っていてくれたらいいさ」と言う阿賀野の横、三笠の膝の上に乗る夏加はやはりジッと前だけを見ていた。

 三笠は夏加の頭を見詰める。さらさらしていて、艶のある綺麗な黒髪。

 撫でてあげたら、彼女をまた思い出せそうだった。

 「行くか」

 アクセルを踏み、エンジンが震えて、ジープは走り出した。



 二人が乗ったジープが向かった先は、かつて日本海軍の拠点だった五大軍港のひとつ、横須賀港だった。

 横須賀港は、戦前は海軍鎮守府が置かれて【軍都】として栄えた街で、終戦後に進駐軍としてやって来た米軍によって接収されている。戦時中は五大軍港のひとつとして軍港機能を発揮させ、多くの艦艇が停泊し、外洋の戦場へと出撃していった。戦後米軍に接収された横須賀港は、これから日本を間接的に巻き込むことになる朝鮮戦争・ベトナム戦争などの戦争と紛争に有効活用されることになる。軍都横須賀のシンボル、大日本帝国海軍の過去の栄光を象徴する戦艦『三笠』も保存されている。

 そして今、米軍の所有地となった横須賀港には、かつての軍港の持ち主だった日本海軍の遺産である日本艦艇があった。

 ジープを降りて、阿賀野の後ろを付いていくように三笠も初めての場所にやって来た好奇心旺盛の子供のようにあたりを見渡しながら歩いていた。

 空襲の傷跡が残っており、所々に残骸が放棄され、焼け跡も色黒くある。破壊を免れた施設が戦時中の面影を現しているような雰囲気をかもし出していた。

 実は『神龍』も横須賀から呉に回航したことがある。『神龍』が呉に回航された直後に乗艦したので、三笠は横須賀には初めて訪れたことになる。

 巨大なドッグや工廠も健在だった。

 そんなドッグや工廠の中、そして港には、生き残った日本艦艇があった。

 湾岸沿いを歩いていると、やがて山のように巨大な鉄を見つけた。

 「あ…」

 感嘆の声を漏らした三笠。

 天にそびえ立つ城のような艦橋。しかし艦長や各長たちが居座る司令塔は空襲の傷跡が残り、素直に綺麗だとは言えない。後部マストや副砲、煙突等は撤去され、かつて大和型戦艦に次ぐ主力艦として在った超弩級戦艦は外見的に物足りなさがすこしだけありつつも、かつての威厳さは欠けていなかった。

 日本の象徴して君臨し、沈没した『大和』『武蔵』に次ぐ超弩級戦艦、―――『長門』。

 帝国海軍の象徴だった旭日旗ではなく、星条旗が掲げられているのが虚しい。

 それもその筈、持ち主だった大日本帝国海軍は消滅し、現在は米海軍が所有しているからだ。

 そしてその艦は、三笠は知らない、悲しい運命が待っていた。

 「まだこんな戦艦が日本に残されていたなんて……」

 足を止め、そびえ立つ鉄の城を見上げる三笠とは別に、阿賀野もどこか細い目で『長門』を見詰め、そしてすぐにその場を去るように歩き出した。

 三笠は気付いて置いていかれないように小走りするも、まだ立ち尽くすように『長門』を見上げて見詰めている夏加の存在に気付いて、声を掛ける。

 「夏加、行くぞ!」

 夏加の無反応さに改めて呆れつつも、三笠は夏加のもとに引き返した。

 「おい、夏――――ッ?!」

 三笠は驚愕に目を見開き、夏加の肩を掴もうとした手を止めた。

 目の前の光景が驚愕に値した。

 日本最後の戦艦を見上げる夏加―――

 その無機質である黒い瞳―――

 その瞳から……

 一筋の涙が白い頬を伝っていた……。

 普段は無の真骨頂である少女の初めて見た涙。普通の女の子なら泣きたいときは泣くときもあるだろう。普段の夏加だからこそ、涙を流しているのが驚きであり、そして何故泣いているのかもわからなかった。

 一人の不思議な女の子は、目の前の戦艦を見詰め、涙を流していた―――

 「おい、夏加……?」

 「………」

 白い頬を伝う涙を指で拭ってやると、夏加はビクンと震えた。

 涙の跡をくっきりと頬に残した夏加が、ゆっくりと三笠に視線を向けた。

 「どうしたんだよ?」

 「………」

 「なにか悲しいことでもあったのか…? なにか話してみろよ……」

 膝を曲げ、目の前にいる女の子の背丈と合わせる。目の前にある女の子の顔は歳相応の子供だった。頬に涙の跡を浮かばせ、漆黒の瞳からはもう涙は流れていない。

 「………」

 三笠は黙って、ゆっくりと手を差し出した。

 三笠の大きな手が夏加の頭に近づくと、夏加はまたビクッと反応したが、三笠のその手が夏加の頭に乗ったとき、雰囲気が和らいだ。

 三笠の手が優しく夏加の頭を撫でる。わしゃわしゃではなく、艶のある髪の毛を綺麗に乱れないように丁寧に流すように撫でていく。

 また、三笠は既志感を覚えた。

 さっきまで泣いていた少女を、自分がその頭を撫でて慰めてあげる。

 こんなことが、昔に何度もあったような―――

 確かにそんな記憶が鮮明に残っている。

 まるで彼女がまた自分のそばにいてくれているような気がした。

 そんなことを思っている自分に気付き、三笠は苦笑した。

 そして目の前にいる少女の頭を一頻り撫でてあげた後、立ち上がる。頭を撫でられていた夏加は三笠を見上げた。

 「行くぞ」

 優しげに微笑む三笠を見詰め、頷く夏加。

 三笠はそのとき、消えそうな柔らかい力を感じた。

 三笠の裾を、夏加がその小さな手で摘んでいた。

 三笠はそんな小さい女の子を見て、クスリと微笑んだ。

 そして三笠は先に待っている阿賀野のもとに向かって歩き出し、その後を一人の小さな女の子が裾を摘んで付いていったのだった。


 ふわり。


 白い布が宙をふわりと舞い、細い足が着地した。

 長い黒髪がばさりと垂れ、続いてもうひとつの影が降り立ち、銀髪が靡いていた。

 ドッグの上に立った二つの人影は、三人を見下ろしていた。

 ひとつの影が、一人の少女がいた。

 その口もとは、笑みを浮かべていた。


 三笠と夏加が阿賀野に連れられた先、そこは横須賀海軍工廠であり、そして巨大なドッグが並んでいる場所だった。

 艦艇の建造はなかったが、ここは主に修理などに使われてきた施設である。

 「今は米軍が接収しているけどな…。今は横須賀海軍施設として米空母の母港になる予定だ」

 三笠は先ほど見た戦艦のことを思い出した。

 「……先にあった日本の艦はどうなるのですか?」

 「………」

 質問を投げた阿賀野の横顔はどこか思いつめた表情で、その細くなった目が悲しげに揺れていた。

 しかしそれは一瞬で、すぐに平常に戻って答えが投げられた。

 「捨てられる」

 「っ!?」

 「見ておけ」

 阿賀野が先導に、三人は薄暗い中に入った。巨大な戦艦を収容できそうな広々とした中。しかしそこは残酷な光景だった。

 「――――ッ!」

 収容されている日本の艦艇。吊るされた潜水艦は修理が完全になっていないらしく、抜けたところが多いまま放置されてる。そして艦の残骸や一部が無造作に放置され、積まれている山もある。小さい艦が何隻か見えるが、どれもみすぼらしいものばかりだった。

 傷だらけのまま放置された日本艦艇。

 又は別の工廠から運ばれてきた建造途中に中止された不完全状態の艦もあった。

 正に、艦の墓場である。

 「さっきの戦艦も見ただろう…。戦争で傷を負って、この艦たちは修理を受けるはずだった。だけど戦況の悪化や物資も足りずに中々修理できず、放置され、そして戦争が終わってそのままになっている。……これらはいずれ、処分又は解体される予定だ」

 「……ッ」

 三笠は下唇を噛んで、ぐっと拳を握った。

 他の元船乗りだった者たちもこんな光景を見れば、悔しく、そして悲しくなるだろう。

 しかし、その艦に宿る存在を知っている者としては、それとは別段の思いも生まれる。

 国のために戦って傷ついた、もしくは護るために戦うはずだった艦たちが、今はこうして無責任にも放置され、そのままにされ、しかもいずれ捨てられるなんて酷な話だ。

 艦が―――艦魂かのじょたちが可哀想すぎるではないか。

 「俺の仕事は元日本軍を解体することだ。無論元日本軍の所有していた兵器も撤去する。……だから、ここにある艦艇も、彼女たちも、葬らねばならない……」

 「そんなことって……」

 三笠はふと、それらの放置された艦艇を見て、あるものに目を見開いた。

 「――ッ!」

 その艦を見たとき、その艦に宿る、艦魂を見てしまった……。

 普通の女の子に見える少女たちの姿が、それぞれの本体に確認できる。しかしその姿はどれも消沈したような重苦しい雰囲気だった。それぞれ階級に見合った軍服を着ているが、その姿はどれも、半透明化している者、身体の一部がすでに消失しているもの、それぞれだった。

 そんな絶望の塊のような少女たちの姿に、三笠は目を背けたくなった。

 そのとき、一人の艦魂と目が合った。

 その艦魂は自分たちが見えていることに気付いたのか、すこし驚いている風を見せていたが、冷静にぺこりと頭を下げていた。

 そして「こっちに来ませんか」という合図をしているように見える。三笠は阿賀野と見合わせ、その艦魂のそばに歩み寄った。

 すると他の艦魂たちも三笠たちを囲むように見詰め始める。周りの放置された艦艇に宿る艦魂たちに見詰められる中、一人の艦魂と、三笠たちは向かい合った。

 その艦魂は微かに口もとを微笑ませて、挨拶した。

 「…初めまして、私は呂号第五八潜水艦の艦魂です。……皆さんからは五八イツヤと呼ばれています」

 うっすらとした影を落とす表情に微かな微笑みを浮かべる少女。その肌は薄くなったり濃くなったりと、それをゆっくりと繰り返していて、不純だった。その瞳は深海のように闇が深かった。

 その少女のそばには、全長七十メートルほどの黒い鯨があった。しかし老廃し、手も付けられず状態だった。

 しかし少女はそんな本体に相反して微かに微笑んで言った。

 「…男の子みたいな名前でしょう」

 「いえ。番号から名前をつくるとは、それも素敵な名前だね」

 先ほどの悲しげに見せた雰囲気も一変して、平常に戻っている阿賀野が柔らかな口調で返した。

 「そんなことございません……。でも、ありがとうございます…」

 力なく、しかし微かに明滅を繰り返す頬が朱色に染まり、微かに口もとを緩ませる。

 「…まさか私たちがお見えになる人間と出会えるなんて、思ってもいませんでした…。とても懐かしい感じがします。それは、きっとここにいる皆さんが同じ気持ちでしょう……」

 自分たちを見詰める多くの視線を放出させる少女たちを見渡した。

 みな、かつて日本のために戦い傷ついた者たちばかり。又はこれからの戦いに備えていた者たち。しかし再び日の光も浴びられず、ただ自分たちの存在が解体又は処分されるまるで死刑執行の日を待つ囚人のような日々を過ごすだけ……。

 そんな酷すぎる運命を背負った艦魂である少女たちが、こんなにも大勢いる。

 そしてそれらの彼女たちの視線が三笠にとって物凄く痛かった。

 まるでなにかを訴えているような。

 鋭利な刃物のように突き刺さる数々の視線。

 心の中で、謝罪の言葉を述べる自分がいた。

 「(すまない……すまない……っ!)」

 ぐっと目を瞑って、下唇を噛んで何かに必死に絶える三笠を、そばで裾を摘む夏加はジッと見詰めていた。

 「こんな陰湿なところで申し訳ないな…。お前たちも、最期のときまで太陽の光が照りつける海がある外に繋げてやりたかったんだが……」

 阿賀野のすまないという風に放たれた弱々しい言葉に、イツヤと名乗る潜水艦艦魂である少女は小さく首を横に振った。

 「いいのです。私たちは敗戦国の兵器……。扱いが丁寧ではないのは十分承知です」

 「………」

 阿賀野がなにか言いかけようとしたとき、三笠が先に口を開くことによってそれを制した。

 「…恨んでないか?」

 三笠の静かに通った言葉に、その場の雰囲気がシンとなった。

 「俺たちは、日本のために最後まで戦ってくれたにもかかわらずにこうして君たちを……捨てた。君たちがせっかく日本を護ろうとしてくれたのに、君たちを殺そうとしてしまっている……」

 三笠は頬に温かいものを感じた。

 それは、瞳から頬を伝う涙だった。

 涙が頬を伝う三笠を正面から見詰め、シンとなった静寂の間が置かれてから、少女イツヤが口を開いた。

 「……私たちは、誰もあなたたちを恨んでなんかいません。こうして処分されるのを待つ身であっても、この国のために今まで戦えたことを誇りに思っています。もう満足だとも思っています。このままこの存在が消えようと悔いはありません」

 三笠はその言葉にバットで頭を殴られたような衝撃に駆られた。

 「…それに、それはあなたたちも同じじゃないですか。あなたたちも、私たちと共にこの国を護ろうと勇猛果敢に戦いに身を投じられたのではありませんか」

 立ち尽くす二人の人間に、彼女は柔らかで優しげな言葉をゆっくりと続けた。

 「…私自身、母国日本国によってこの世に産み落とされ、二十年以上もの間この身を母国と陛下、そしてあなたたちに捧げてきました。他の艦魂たちも同じです。皆さんが、この国に生まれたことを本当に幸せであったと思っています。このまま母国で朽ち果てるなら本望です……」

 最後に、彼女は胸に手を添えて、ニコリと微笑んだ。

 日本を長く護り続けてきた彼女(呂号第五八潜水艦は姉妹艦が全部で三隻で大正十一年(一九二二年)から翌年にかけて竣工した。第二次世界大戦時にはまだ就役していたが、老齢であったため予備艦として扱われ、主に練習潜水艦として活用された)―――その微笑みに嘘偽りはなかった。

 それは周りの艦魂たちも同じ。

 この先自らが処分される運命が待っているというのに、少女たちの表情はなんと心温かいものか。

 もちろん死ぬのは怖い。死にたくない。心の内では皆がそう思っている。

 しかし反面、素直に微笑むことができる。恨みもない、ただ安らかに表情を柔らかくできた。

 彼女たちは誰も恨んじゃいない。

 その先に待つ死を恐れても、それを逸らさずに受け止めている。

 とても、とても強かった―――

 彼女たちの強さを身に染みた三笠の肩を、ぽんと阿賀野が叩いた。

 振り返って見えた阿賀野の表情に、迷いはなかった。

 三笠も、もう二度と悲しげで暗い表情を出すことはなかった。

 ―――ふと、三笠は裾を摘んでいた小さな力がいつの間にかなくなっていることに気付いた。

 振り返り視線を下げると、そこにいるはずの夏加の姿がなかった。

 「夏加…?」

 三笠の異変に気付いて、阿賀野が問いかけた。

 「どうした?」

 「…夏加が、いないんです」

 「なに…?」

 あたりを見回しながら言った三笠に、阿賀野も周りを見渡した。しかし艦魂たちがいる中で、あの小さな女の子の姿は確認できなかった。

 「…どうかしましたか?」

 三笠たちの異変に気付いたイツヤが訊ねた。

 「ここにいた女の子がいないんだ。どこかに行ったのか、見てないか?」

 「…女の子?」

 イツヤは目を丸くしてきょとんとした表情を見せた。

 「俺のそばで裾を摘んでた女の子、知らないか?」

 「……すみません。気付きませんでした…。私はお二人だけかと……」

 「誰かッ! 女の子を見なかったかッ!?」

 三笠は困惑した面持ちで、周りにいる艦魂少女たちに叫んだ。

 しかしざわつくも、誰も隣同士で顔を見合し、「見たよ」という返事を誰一人返してくれない。

 おかしい、と三笠は思った。

 確かにこの中に三人で入ってきた。彼女たちが自分たちをずっと見ていたのに、一人の女の子がいなくなるのを知らないはずがない。そもそも気付かないのがおかしい。それは自分たちにも言えた。あれだけそばにいたのに、離れるところを気付かないなんてありえない。

 三笠は背筋に嫌な寒気を感じて、阿賀野のほうに振り返った。

 「阿賀野さん! 俺、捜してきます…っ!」

 「お、おい…!」

 返事も待たずに、三笠はその場を駆け出した。

 外を出て、日の光が視界を眩ますも、あたりを見渡す。しかし人一人いなかった。

 三笠は入り口のそばから駆け出した。

 「どこに行ったんだ、あいつ……」

 誰もいない不気味な港。ただ聞こえるのは波の音だけ。まるで自分一人だけが、誰もいない世界に取り残されたみたいだった。

 先ほど見た戦艦『長門』も、まるでただの鉄の塊にしか見えない。静寂が湾岸を支配し、人一人姿を見ることがない。ただ波打つ音が微かに聞こえ、そしてなにより自分が駆け出す靴の音だけが三笠の耳に届いて聞こえていた。

 そんな彼を、遠く上から、見下ろす二つの影があった。

 「―――導かれなさい、人よ。あなたはもうすぐ出会うことになる―――」

 一つの影は少女、その口から紡がれる言葉が奇妙に吹き入れる潮が漂う空間に通っていた。

 「―――奇跡。そしてそれを起こすには貴方次第―――」

 彼はまるで、なにかに誘導されるようにある場所へと向かっていく。

 それを見て、少女は口もとを吊り上げた。

 「さぁ、最後の試練を与えよう。人と人ならぬ魂が交叉する瞬間を期すために」

 二つの影は舞い落ちて裏返った木の葉のように空間の狭間に消えていった。

 


 「はぁ…はぁ…はぁ…」

 三笠は呼吸を整えるために足を止めた。ぽたぽたと汗の雫が地に滴った。

 気が付くと、さっきとは全然違う場所まで来てしまった。まるでなにかに誘い込まれるように。

 しかし三笠はそれを自覚していない。ただあの子の存在を捜し求めていただけである。

 ようやく荒かった息を整え、顔を上げると目の前には鉄の塊があった。

 それがなんであるか、理解する時間を長く要するまでもなく、驚愕に目を見開いた。

 それは、誰もが知る栄光の象徴だった。

 「これは……」

 かつて大日本帝国海軍の栄光の原点となった象徴。全ての始まりを掲げたと言われる古き鉄の魂。

 威厳と栄光に輝くその姿を未来永劫残されようとした日本人の象徴。

 しかしその姿は見るも無残に変わり果てた有様で、兵装や上部構造物は全て撤去され、以前の威厳さは欠けていた。しかしその存在感は健在だ。そして日本人の中で、いや元帝国海軍軍人の心の中では軍神のような存在だったその存在。


 ――――戦艦『三笠』が、そこに佇んでいた――――

 


伊勢「伊勢と〜」

日向「日向のぉ」

伊勢・日向「艦魂姉妹ゲストお呼び出しラジオ〜」


――本番組は、北は樺太、南は台湾まで、全国ネットでお送りいたします―――

――大本営・海軍省・大日本帝国海軍支援協会・艦魂同盟の提供で、お送りいたします―――


日向「はぁ…こんな馬鹿らしいラジオ名の企画も五回目かぁ」

伊勢「色々あったわね〜」

日向「たった五回で思い出を振り返るのは早い気がするけど、まぁ確かに色々あったわね……」

榛名「で、その色々の悪い意味で代表的である元凶は?」

作者「あぁ、大和なら出場停止処分です」

全員「………」

『ええええええっっ?!!』

日向「ちょ…っ!なにそれっ?」

作者「今まで紀伊(凛)さんを連れ去ったり大和様を連れ去ったり、この時点でイエローカード二枚。ここで退場しても良いくらいだったんだけど、さらには陸奥さんや霧島さんを拉致って、完璧にレッドカード。しかも一枚どころか二枚」

日向「サッカーのルールをわかっているんだかわかっていないんだか微妙な言い方ね……」

作者「ちなみに言っておくけどサッカーのルールはわかってるよ?ていうか野球より簡単だし、私自身も経験者だし」

日向「そんなことはどうでもいいとして、大和長官を出さなくなったら各方面から苦情が殺到しそうなんだけど……」

作者「仕方ないじゃん…。あいつ、可愛いとあればなんでも拉致るんだもん…」

榛名「まぁ仕方あるまい」

日向「榛名ッ?!」

榛名「あれだけ重ねた罪だ。いくら大和長官といえど、すこしは反省してもらわないと困る。長官の行動を許してしまえば対応する私の身もいくらあっても足りなくなる……」

伊勢「榛名はいつも大和さんの相手してばかりでしたものねぇ…」

葛城「…仕方ない」

天城「まぁすこし寂しいかもしれないけど、仕方ないね〜」

日向「…なんだかいまひとつ納得できないけど、それよりゲストを待たせたらそっちのほうが悪いわ」

伊勢「あら日向。珍しくゲストさんを大切に思っているのね」

日向「べ、別にそういうわけじゃないわ…!」

雪風「今回のゲストさんはどなたなんでしょうか?」

作者「今回は極上艦魂会参謀・火星明楽少尉の『艦魂物語.魂の軌跡〜こんごう〜』から、この三人です!ではっ!どうぞ〜っっ」


しまかぜ「こんにちは。失礼します〜」

むらさめ「ほら、こんごう。そんな無愛想な顔してないで早く来いよ」

こんごう「………」


日向「前回みたいに、今回もまた複数で来たわね」

榛名「…というか、見慣れない奴らだな」

天城「私たちと着てる軍服もどこか微妙に違うしね〜」

こんごう「………」

天城「うわっ。なんかすごい睨まれてる!」

こんごう「…じろじろ見るな、無礼者が」

天城「こわっ!」

しまかぜ「ごめんなさい。この子、普段がこうですからお気になさらずに……」

むらさめ「お前ももうちょい礼をわきまえろよ」

こんごう「…ふんっ」

榛名「な、なんだあいつは……」

雪風「堅いかたですねぇ…」

作者「紹介するよ。火星先生の艦魂作品に登場する艦魂たちだよ。メインヒロインが護衛艦『こんごう』の艦魂です。平成、いわば現代の艦魂さ」

榛名「平成?」

日向「馬鹿作者が生きている時代よ。私たちが生きるている世界は昭和」

雪風「護衛艦って、なんでしょうか…?」

作者「海上自衛隊の自衛艦の分類のひとつだよ。えーと……君たちでいう旧日本軍の名称でいうと、駆逐艦・巡洋艦あたりのクラスだね。戦艦というのはないんだよ。『駆逐』だとかは攻撃対象の名称だから自衛隊用語で『護衛艦』って呼ばれてるんだ」

矢矧「…海上自衛隊。大日本帝国海軍ではなく…?」

作者「あー…」

こんごう「戦後日本に創設された日本の防衛組織だ。法令上では国軍(軍隊)と位置付けられてはいないが、その保有する戦力は世界的に展開する戦力投射能力以外では実質その能力を備えており、軍隊並ではある。だが憲法では自衛隊を軍隊と認めていない。我々は、旧海軍の生まれ変わった海上自衛隊の持つ国防の(かなめ)だ」

全員「………」

作者「あはは…。時代錯誤の彼女たちには難しい話だったかもね」

こんごう「…ふん。これだから頭の古い奴らのところに行くなどごめんだったのだ」

日向「なんですってぇぇっ!」

伊勢「日向、落ち着きなさい」

榛名「…要は、我らと同じく国を護るためにあるということだろう?それは、自衛隊とやらと我が帝国海軍とどこも変わらない部分だ」

むらさめ「まぁな。私たちは確かに日本を護るための国防の盾だ。ま、実際に戦ったことはねぇけどな」

しまかぜ「それだけ私たちが生きている時代の日本は平和ということよ」

むらさめ「たまに近所のうざい野郎どもの不審船やら潜水艦やら航空機やらが日本の領内に不法侵犯してくることはあるけどな。ま、それは主に海保の奴らの仕事だし。結局私たちの出る幕は災害派遣と国際献上くらいだ」

伊勢「…いいことじゃないですか。戦争もなく、争いもなく国を護り、人のため、世のために働いている姿なんて羨ましいです」

日向「そうかしら?そんなことで国を護れているかどうか疑わしいし、あまり自分たちが出る幕がないなんて、存在の意味あるのそれ?」

作者「結構酷いこと言うんだなお前……」

こんごう「…ふん」

日向「なによ…」

こんごう「圧倒的差があるアメリカに戦争を仕掛け、コテンパンにやられた軍隊に言われたくないな」

日向「な、ななんですってえええぇぇぇっっ!!!」

伊勢「お、落ち着きなさい日向!駄目よ!」

日向「あんた、ぶっ殺ぉぉぉすっっ!!」

しまかぜ「こ、こんごう!なんてこと言うの!」

こんごう「事実を述べたまでだ」

むらさめ「こんごう〜。いくらなんでも、世の中には言っていいことと悪いことがあるぞ?」

こんごう「私は日本国を護る由緒正しい海自の最新鋭のイージス艦『こんごう』だぞ。侮辱されて黙っているわけにはいかない」

むらさめ「そりゃそうだけどよぉ…。でも、私は今の海自のことを旧日本海軍の末裔だと今も信じて疑わないぜ?」

こんごう「…貴様も奴らと同等ということか」

むらさめ「…んだよ」

榛名「――組織を侮辱されて黙ってられない。…それは我々も同じだぞこんごうとやら。…私の姉上と同名らしいが、我が姉の名を受け継がれし者とて、あまり我が誇り高い栄光の帝国海軍を侮辱するならば、容赦はせんぞ?」

こんごう「…ふん。面白い、受けて立ってやろうではないか」

(こんごうと榛名、それぞれ軍刀と拳銃を取り出して対峙する)

作者「ちょっ待て!なにやってるんだお前らっ?!」

葛城「…互いの誇りを賭けての戦い」

天城「これは誰にも止められないね…!やっちゃえはるちーん!」

榛名「はるちん言うなっ!!」

作者「待て待て!元々同盟のもとでの友好の印としての企画なんだから戦ったりしないでくれよぉぉぉっ!!」

榛名・こんごう「いざっ!」

(榛名が地を蹴り、こんごうは拳銃を発砲する)

パンッ!

(それを素早い動きで駆け出す榛名が避ける)

パンッ!パンッ!

(冷静に何度も発砲するこんごう。それを避け、そして白刃で銃弾をいなす榛名)

チュインッ!キィンッ!!

(目の前まで榛名が迫り、こんごうが後ろに飛びのく)

「はぁっ!」

(それを逃がすまいと刀を一閃斬りかかる榛名。しかしこんごうは軽々とそれを飛んで避ける)

「――ふっ」

(着地し、次の瞬間には榛名に飛び掛るこんごう)

「ちっ」

(榛名も真正面からこんごうに向かって突撃する)

(二人は互いの武器――榛名は刀を、こんごうは拳銃――ーを構え、正面から衝突するっ!)

ガキィィィンッ!!

全員「……ッ!」

(寸前のところで、榛名とこんごうの間に飛び出した影が二人を受け止め、着地した)

???「両者、そのまま」

榛名「く…っ」

こんごう「………」

???「心配で来てみれば、なんだこの騒ぎは。お互い非があるようだがここは冷静になれ」

榛名・こんごう「………」

(それぞれの武器を収める榛名とこんごう)

???「ふむ。互いに気が入らぬところがあったらしいが、貴様らは同じ日本人だろう?同じ国を護るもの同士が敵対してどうする。そこのところは落ち着き、そして大人になれ」

榛名「…申し訳なかったな」

こんごう「……ふん」

???「祖国を護る。これはみなが同じだ。共に戦い、共に護り、共に良き戦友として認め合おうではないか。……いや、君たち平和な時代では、戦友ではなく友達かな?」

しまかぜ「そうね。友達、ね。あるいは、仲間よ」

むらさめ「ま、今更こんなこと言ってちょい気恥ずかしいところはあるけどよ。こんごうも私たちも、ここにいないあいつらも大切な仲間だぜ」

???「いい心がけだ。我々も、大勢の仲間がいる。そして、我々と君たちも大事な仲間だ」

こんごう「………」

榛名「…フッ」

作者「うんうん…」

日向「――って、いい感じで締めくくろうとしているのはいいけど、なんでここにあなたがいるのっ!?」

大和「いやいや。やはり私も出なきゃ客人に失礼だろうと思ってな」

(???の正体は大和でした)

こんごう「……大和?」

しまかぜ「このかたが……?」

むらさめ「あの大和…ッ!?」

大和「いかにも。大日本帝国海軍大和型戦艦一番艦『大和』の艦魂、大和だ。よろしく、日本国海上自衛隊の護衛艦艦魂の撫子たち。貴殿らの来訪は深く歓迎するぞ」

こんごう「……ッ!」

(突然、整列して敬礼する三人)

大和「な、なんだ…?」

こんごう「先ほどまでのご無礼をお許しください…!大和司令長官…!」

しまかぜ「お、お会いできて感服ですっ!」

むらさめ「…えっと、その…。け、敬礼…!」

大和「なんなんだ一体?」

作者「…こんごうさんたちは大和のことを軍神だと思っているようなものだからね。『大和』が沈んだ東シナ海の坊の岬で花束を投げ入れてくれたこともあるんだよ…」

大和「そうだったのか…」

こんごう「かつての日本を護るために特攻に身を捧げられた超弩級戦艦『大和』は我が海自の中でもその武勇伝は受け継がれております。我々が護る今在る日本があるのは大和司令長官と散っていった彼ら兵士たちのおかげ。我々は……」

大和「もう良い。わかっている」

こんごう「………」

大和「…ありがとう。私の沈んだ海に花を投げ入れてくれている人たちは知っていた。君たちも花を投げ入れてくれたとは……私は君たちに礼を言いたい。本当にありがとう…」

こんごう「いえ…」

(固く握手する大和とこんごうたち)

榛名「…多少の礼儀はあったようだな」

伊勢「彼女たちも私たちと同じなの。どこも変わらない、同じ国を、そこに生きる人たちを護るために在る存在」

葛城「…時代は違えど、宿す心は同じ」

龍鳳「国を護るという気持ちに、時代なんて関係ないんですね……」

雪風「そして仲間だという気持ちも過去現在未来永劫

変わることはないと思います…」

伊勢「…さて、それじゃお茶を出しましょう。みんなでお茶を飲んで楽しみましょう」


で……


わいわいわい……

(お茶とお茶菓子を囲んで談笑しあう昭和と平成の艦魂たち)

むらさめ「それでよぉ、粉川(こがわ)の奴がこんごうに縛られてなぁ……」

日向「気の毒ねぇ…」

こんごう「ふん…(お茶を口に運ぶ)」

むらさめ「でもこんごうの顔、赤くなってたふうに見えたのは気のせいかな〜?」

こんごう「(吹きそうになったのを堪えつつ)……貴様、覚悟は出来ているか」

むらさめ「んだよ、冗談じゃねえかよ〜。……可愛くないとか気にしてるのか?未だに」

こんごう「よし死刑決定そこに直れ成敗してやる叫べ喚けそして泣け」

榛名「そっちもそっちで大変なのだな…」

こんごう「…特にあの汚染生物(粉川)が来てからしらねが調子に乗り出したりと、色々と騒がしくなっている」

むらさめ「騒がしいほうが楽しいと思うけどなぁ。私はあいつが加わっているときは楽しいと思えるぜ?」

こんごう「それは貴様の感覚がおかしいのだ。きっと五感あるところが足りない部分があるのだろう」

むらさめ「なんだよそれ…」

大和「はっはっはっ。面白いな、君たちは」

こんごう「………(頬を朱色に染めるこんごう)」

大和「…ふむ。クールな女子が頬を赤らめるなんてこれもまた格別に可愛いなぁ……」

ぎゅっ。

こんごう「…ッ?! …ッ!」

日向「あーあ、本性現したわね。こうなったら逃げられないわよ」

しまかぜ「な、なにこれ…?」

日向「あなた達が尊敬する大和司令長官様は可愛いものに目がないのよ。可愛いものを見つければ極度の変態と化すわ。狙った獲物は逃がさない。だからあなたも気をつけ……」

しまかぜ「あぁ、こんな大和様も素敵ね…」

日向「………」

むらさめ「ははは。こんごう、良かったな〜。尊敬する大和様に可愛くしてもらっちゃって」

こんごう「むぐぐ…ッ!」

(大和の豊富な胸に顔を埋められるこんごう)

大和「うりうり〜」

こんごう「………ぷしゅ〜(頭から湯気?)」

むらさめ「あーあ…。大和司令長官の胸にやられて顔真っ赤にして気絶してら……」

作者「大和〜…。君、本当は出るはずじゃなかったんだから頼むからすこしは自重してくれよ〜」

大和「はっはっはっ。私は十分普段より控えているつもりだが?それに先ほどの騒動を事前に回避することができたのだから良いではないか」

作者「うう…」

天城「ねーねー。気になるんだけどさぁ」

葛城「…なんだ、姉者」

天城「思ったんだけど、なんで護衛艦…だっけ?の名前ってみんな平仮名なの?」

こんごう「………」

しまかぜ「これ、現役帝国海軍の戦艦の艦魂たちに話してもいいのかしら…」

むらさめ「…まぁいいんじゃねえの?いいか?伊東とやら」

作者「あはは…。よ、よろしくお願いします」

全員「………?」

こんごう「…自衛隊の護衛艦が何故平仮名明記かというと、旧軍艦との同名により侵略的なイメージを避けたいという主旨……というのがあるらしいからだ」

全員「……え?」

しまかぜ「私たち自衛隊は他国を侵略したり戦争をしたりしないため、軍隊ではなく、ただの国防組織。だからかつての旧帝国海軍の軍艦名をそのまま受け継いだりしたら、帝国主義の復活だとか戦争アレルギーだとかの諸々の事情で出来ないのよ」

むらさめ「戦後日本っていうのは色々と面倒を抱え込んじまってるんだよ…」

榛名「…なんだそれは。私はてっきり漢字が読めない馬鹿のためか、平仮名のほうが平和っぽいという呆れた理由だと思ったが、…そうか。そんな理由か、くだらん」

日向「…私たちにとっちゃ迷惑な話よねぇ。私たちの名前が侵略をイメージさせる?冗談じゃないわ」

こんごう「…それが戦争に負けて生まれ変わった日本の現状だ。…実際、私が『こんごう』という名前で竣工されたとき、軍国主義復活と批判された」

日向「…自分が生まれることに批判されるなんてたまったものじゃないわね」

こんごう「…ふん。屁でも思わんがな」

むらさめ「…軍国主義復活とか言うけどよ。実際、すでに『こんごう(金剛)・ひえい(比叡)・はるな(榛名)・きりしま(霧島)』とか、旧戦艦の名称が護衛艦に揃っちまってるのに今更軍国主義とか言われてもなぁ。馬鹿みたいじゃねえか。まぁそんなことを言っていたのは国内の反日勢力と近所の野郎どもだけどな」

日向「前もここで北方領土とか、現代の話で盛り上がったことがあったけど、平成の日本っていうのは色々と問題やら面倒を抱えているのねぇ…」

しまかぜ「平和なところが何より良いけどね」

伊勢「そうですね」

しまかぜ「いや〜…それにしてもお茶美味しい……」

伊勢「お気に召して何よりです」

むらさめ「これから寒い時期だなぁ。海ってのは陸地より冷えるから困るぜ」

日向「本土のほうはまだそんなに言うほどでもないと思うけど……そっちはもう寒いのよね?」

作者「はいっ!最近いきなり冷えてきました!寒いですはい!でもまだ序の口で、これから雪が降ってもっと寒くなるんですっ!この季節、家から学校まで遠いのでマジできついです!ちなみに私自身寒いのは苦手です!」

日向「北の住人のくせにねぇ…」

榛名「情けないぞ伊東殿。日本男児たる者、寒さに耐えず、暑さに耐えず、心身共々芯まで強くあらねばならん」

作者「うぅっ〜」

大和「ははは。寒いときは私の胸をいつでも貸してやってもいいぞ。ふっかふかで温かいぞ?」

作者「遠慮します…(汗」

こんごう「う、う〜ん…」

大和「お、起きたか」

こんごう「むむっ… ――ッ?!」

(大和の膝枕から起き上がるこんごう)

大和「どうだ?私の胸も膝も柔らかかっただろう?」

こんごう「………(ペコリ)」

(顔を赤らめながらもとりあえず頭を下げるこんごう)

大和「ふむ。外見はクールなところを見せているが、やはり普通に可愛いところも持っているではないか。もっと自信を持て。粉川という彼もきっと気付いてくれるぞ」

こんごう「…ッ! あんな汚染生物、知るか…!」

むらさめ「お、気が付いたんだな」

こんごう「むらさめ!しまかぜ!たしかまた対潜訓練が予定されていたなっ!」

しまかぜ「う、うん…。でもまだ時間は――」

こんごう「そろそろ行くぞ。すっかりご馳走も頂けただろう。これ以上の長居は無用。帰還するぞ」

むらさめ「あ、おい…!待てよっ」

しまかぜ「じゃあ、ということで皆さん、今回はどうもありがとう」

伊勢「こちらこそ、わざわざお忙しい中来ていただきありがとうございました」

しまかぜ「ううん。楽しかったよ」

天城「こっちも楽しかったよ。また機会があったら会おうねー」

榛名「同じ国を護る同士、武運を祈る」

日向「今日はどうも。じゃあね」

しまかぜ「では、さようなら」

むらさめ「あばよっ」

こんごう「…ふんっ」



天城「いやー。帰っちゃったね。あれが未来の日本を護る艦魂たちかー。いい人たちじゃない〜」

伊勢「そうね。あの人たちなら任せられるわね」

大和「うむ。特にこんごうというものは大和精神を忘れていない確かな武人であり、そして軍人だった。将来が期待できる人材だ」

榛名「我々は日本を護る為に戦い、そして敗れた…。だが我々の後を、あの者たちが引き継いでいるのだな」

龍鳳「大日本帝国海軍……海上自衛隊……時代と組織に誤差があれど、祖国と国民、そして平和を護るという意義ではどこも変わらないんですね」

日向「そうね…。私たちの思いは、あの子たちに託されていく…」

葛城「…しかし、我々はずっと日本を見守り続ける」

雪風「まだまだ引退なんて早いですよ。だって私たちの物語はまだ続いていくんですから」

矢矧「世界は広がっていく…。それは無限に…」

作者「そうだね。艦魂作品を書く先生がたも増えてきましたし、同時に極上艦魂会の入会者も増してきましたし……。艦魂ワールドは色々な方面で展開し、拡大中だね。私もこの作品を書き終えたら外伝書いてもっと自分の艦魂ワールドを広げていきたいよ」

日向「そういえばいつ終わるのよこのグダグダした世界は…」

榛名「真にな。しかも先がまったく読めん」

作者「…ごめんなさい。今まで言ってきたことですが、本当の本当にあともうちょいで終わる予定ですから……たぶん」

日向「たぶんかよっ! てか、この先どうやって話が進むのかしら?先が読めないおかげでどのあたりで終わるかなって予測できないじゃない!」

作者「え、えーととりあえずはですね……。その…。き、禁則事項です〜〜っっ!!」

日向「あ、逃げた!こらぁぁぁっ!待ちなさぁぁいっ!」

ドタバタドタバタ……



作者「ゼェゼェ…。え、えっと!今回はこの通り、火星先生のこんごうから、平成の艦魂たちから選ばせていただきました、こんごう・むらさめ・しまかぜをお招きいたしました! しらねさんたち、呼べなくてごめんなさい〜っ! 火星先生、これで良かったでしょか…?キャラを引き出せたかどうか、相変わらず他の先生がたが生み出したキャラを自分で書く不安はありました〜。なにかご指摘や感想があれば遠慮なく申し出てください。

 えー、前回この作品の艦魂の中で誰が人気なのかな〜と思って良ければ感想やご意見と一緒にランキング書いてくれれば嬉しいということで、これまでに黒鉄元帥や草薙先任参謀からどの艦魂が好きなのかランキングを感想と一緒に書いてくれましたが、本当にありがとうございました〜っ!! 結果、お二人がたそれぞれでしたが、やはり一位が我がメインヒロイン・神龍がお二人のランキングでどちらとも独占していたのがとても嬉しかったです!さらに意外なキャラが入っていたりと、すごい参考になりました〜。感謝致します! また、良ければ感想とご意見と一緒にランキングもお待ちしていますので、贅沢に大勢の方々から頂けるとは期待しておりませんが、どの艦魂が好きなのか書いてくだされば嬉しいです。

 感想とご意見も待ってます。

 では。私のほうでは、いきなりめっきりと気温が下がって寒くなってまいりました(遂に雪まで降る始末)が、皆さんも体調に気をつけてくださいね。…って、寒いのは地方的に私のほうぐらいか…? 

 多種多様の艦魂作品がどんどん現れてきておりますが、艦魂ワールドが広がるばかりで良いことですね。 お互い頑張りましょう! ではでは〜!」


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