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白神ハジメは戻りたい。  作者: 記角麒麟
2/6

メリー・ハーワイヤードは居座りたい。

 とりあえず学校には連絡したので、とりあえず朝食にすることにした。

 何を考えるにしても、先ずは腹ごしらえというものが重要なのだ。

 人は食わねば死ぬ。それは自然の摂理であって、何も人に限った話ではない。

 この世は弱肉強食が基本。

 俺は弱い人間だが、弱者が必ず獲物になるとは誰も言ってない。

 なる確率が高いだけの話で、知略を組めばそんなことはないのだ。


 ……まぁ、そんなことを考えている時点で、俺はどうやら冷静さを欠いているらしいんだが。


 俺は洗面所からダイニングキッチンに移動した。


 今日の朝食は、冷凍のハンバーグと目玉焼きと白ご飯にレタスのサラダである。

 主に電子レンジで暖めるだけでできてしまう簡単な料理なので、朝にしっかり食べておきたい日にはもってこいだ。


 俺は冷凍庫から、霜のついたパックと、冷凍ハンバーグを取り出した。

 身長が幼稚園児並みにまで縮んでしまっているためか、今までより取り出すのに少し苦労した。


 やっぱり、生活に支障が出る。

 早めにもとに戻る方法を模索しないと。


 続いて、食器棚から皿とお椀を取り出そうとする。が、身長が足りない。手が届かない。


 まさか、この歳になって、椅子の上に立って食器をとろうとする事になろうとは、微塵も思ってなかった。

 ちょっと悔しい。


 筋力も相当量減少しているらしく、今まで軽々と持てていた皿が、少し重かった。


 ちょっとだけ苦労して、俺は朝食の支度を終えた。


 目の前には、湯気をたてて俺のいただきますを待っている朝食。


「……いただきます」


 合掌して、そう唱える。

 すると、次の瞬間だった。


 ──ガッシャアン!


「いったぁーい!!」


 中空から、何やら魔女のコスプレをした少女が落下してきて、今まさに食べ始めようとしていた朝食の上に着地したのだ。


「……」


 唖然も唖然。

 開いた口が塞がらないというのはこういうことかと実感した。


(な、なんだ?何が起きたんだ?)


 暫く停止した思考回路が、常温で氷が溶けるようにゆっくりと回復し始める。


「うわぁ、何これベトベトぉ~。ていうかここ何処よ……」


 少女は立ち上がると、ローブの裾についているソースを気にしながら、そんなことを愚痴った。


「だ、誰?」


 漸く現状を理解し始めた俺は、とりあえずそう聞くことにした。


「ん?あぁ、そうね。失敬失敬。私は魔女見習いのメリー・ハーワイヤードよ。メリーって呼んでね☆」


「は、はぁ……」


 魔女?

 確かに、それを想起させるようなコスを着てはいるけど、それ自分からいうかな……?


「あ、いま胡散臭そうな顔したでしょ?」


 少女はそのぬばたま色の髪を揺らして、こちらにズイと顔を近づけた。


「……ん?貴方、呪われているわね?」


 すると、ふとその小鼻をひくつかせて、彼女はそんなことを聞いてきた。


 なんだろう、セリフだけ聞くと新手の霊媒商法にしか聞こえないんだけど。

 ……でも、急に空から降ってくるヤツなんて、そんな所にはいないだろうし……。


「もしかして、この姿からもとに戻る方法、知ってるんですか?」


 急に現れたと思えばこの展開!

 まさしく、棚からぼたもちだ!


 いやしかし、青天の霹靂を食らった直後に棚からぼたもちとは、これ如何に?


(怪しい……)


 しかし、メリーは肩を竦めるとそれは知らないわと答えた。


「そんなぁ……」


(やっぱり、新手の霊媒商法だったのか……)


 最近の詐欺師はレベル高いなぁ……。


「あ、でも、変化の呪文を重ねがけすれば、一時的にでも元に戻れるかも」

「本当……?」


 とかいって、呪文教えてあげるからってお金をセビたりしない?


「でも、変化の呪文知らないんだよねぇ……」


 そう来たか……。

 もうほぼ予想通りだったよ……。


 俺は、落胆した風に肩を落とした。

 そんな様子の俺を見かねたのか、メリーはテーブルの上から床に降りると、仕方ないわねとため息をついた。


「わかったわ。私、貴方を元に戻すことに協力してあげる」


(うーっわ、胡散臭え!)


 そう怪訝そうな顔で見つめ返すと、彼女は心外だと言わんばかりに呟いた。


「何よ?これでも中等部は次席で卒業したのよ?それに……」


「それに?」


 聞き返すと、なぜだか顔を明後日の方向へそらした。

 ……これ、絶対罠があるぞ。


「なんでもないわ。その代わり、約束しなさい!」


 彼女はそう言うと、汚れたローブで仁王立ちして、こう続けた。


「私をここで養うのよ!君の事情が片付くまで!」


(ほらやっぱり新手の霊媒商法師だ!)

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