白神ハジメは縮んでる。
朝目が覚めると、体が縮んでいた。
(ア〇トキシン4869!?)
──遡ること数分前。
「ふぁぁあ……」
俺は、いつも通りの朝を迎えていたと、その頃は未だ思っていた。
……あれ、自棄に服がブカブカ。てか、なんか視線が低いな……。
(風邪か?)
俺は、欠伸をひとつすると、何故かブカブカになっているジャージの紐を結び直して、ベッドから降りた。
なんか、矢鱈とベッドが高いような感じがするんだが……。
「ま、いっか」
俺はそう一人呟くと、顔を洗いに洗面所へと向かった。
俺の名前は白神一。
現在高校一年で、両親は海外出張中。妹は寮制の私立中学に住んでいて、家には俺一人だけ。
この機会だし、バイトでもしてみようかと思ったが、コミュ症気味な俺には荷が重く、未だそこには至っていない。
主にアフェリエイト(?)とかいう奴で稼いでいる。
あんまり金は入らないのだが、両親からの仕送りとかで、何とか三ヶ月は生きている。
そんな、ある意味どこかに居てもおかしくないような、普通の高校生男児ではあるのだが……。何の因果か、目が覚めるとなぜか、俺の身長は縮んでいた。
「……なんで?」
元々身長は高い方ではなかった。
身長166㎝と小柄な体躯で、その身長ゆえか、周りから苛められることが多々あった。
そんなことが続いていた為なのか、俺はいつの間にか人とのコミュニケーションを取りづらくなってしまっていた。
けれど、流石に今のこのこれは無いだろう。
「夢か?」
いわゆる明晰夢とかいう奴ではなかろうか?
ちょっと頬をつねってみる。
「……痛い」
どうやら夢ではないようだ。
そういえば、歳を取ると身長が縮むと聞いたことがあるな。
もしや、更けたのか?
「……そーいえば最近、物忘れとか酷かったしなぁ」
昨日の夕飯は何食ったっけ?
腹が減りすぎててあんまり記憶がないなぁ。
口に出して呟いてみるも、当時の記憶を思い出すことはなかった。
「待てよ?じゃあ、俺今日学校どうすればいいんだ!?」
少なくともこの体のまま登校というのは流石に無理がある。
洗面台から頭一つ分くらい出た程度にまで身長が縮んでしまっている今、着ていく制服も無いし……。
(風邪と言って休むか)
少なくとも、この体のままでは、普段通りの生活は厳しい筈だ。
まずは、元の体に戻る方法を探さなければ!
俺はそう結論付けると、SMSで担任に学校を休む旨を連絡しておいた。