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謎展開

 それからも店の形式を問わずに複数の店を見て回ったが、残念ながら他に候補は見つからなかった。

 そこそこ美味しいお菓子とかは見つけたけど、それならさっきの3つから選んだほうが良さそうだしな。

 そろそろいい時間だし、決めてしまわないとまずい。


「問題はどれにするか、だな。どうしたもんか」


 うんうん唸りながら歩いていると、横道から薄汚い格好の男が飛び出してきた。

 あまりに急だったので避けることも出来ず、思いっきり左肩をぶつけてしまう。

 こけるまではいかないものの、大きくよろけてしまう。


「うおっ!」

「あ、悪ぃ! 兄ちゃん大丈夫か?」

「あ、ああ。衝撃はあったけど痛くはなかったし、大丈夫だ」

「え……本当に大丈夫なのか?」


 男は一瞬ぽかんとした顔を浮かべ、焦ったかのように再度聞いてくる。

 勢いはあったけどぶつかったのは若い男なんだし、そんなに不安がらなくとも。

 そりゃ小さい子供とか、ご老人にさっきの勢いでぶつかってたなら心配だけどさ。


「ああ、大丈夫だよ」


 安心してもらうために、笑顔で答える。

 ぶつかって何も言わずに逃げられたらイラっとしただろうけど、ちゃんと謝ってくれたからな。

 さらっと流すのが正しいだろ。


「そ、そうかい……。あー、じゃあ俺は行くわ。わ、悪かったな」

「気をつけろよー」


 小走りで去っていった男の背中に声を投げかける。

 男はそれに答えず、人の流れに紛れて見えなくなった。

 ふう、ちょっとビックリしたな。まあ今はそんなことよりも、どれを買うか決めないと……ってまさか!

 道を歩いていたら急に見知らぬ人にぶつかる。

 この流れって、漫画とか小説だと高確率で財布が盗まれてるパターンじゃね!?

 俺は慌ててお金を入れていた小袋があった場所に手をやる。

 ……ある! 良かったぁ……。

 念のため横道に移動し、小袋の中身を確認。

 ひいふうみい……うん、減ってもいない。

 ふぅ……嫌な汗をちょっとかいた。

 まーでも、普通はそうだよな。こういうのがデフォルトのはずだ。

 さっきのは偶然急いでた人にぶつかっただけ。

 アリスがいるときみたいに、少し変わったことがあったらトラブルかトラブルの前段階、なんてことは早々ないんだよ。

 はっはっは!


「な……なんなんだ!」


 ん?

 声のした方を見れば、さっきぶつかった男が横道の奥の方にいた。

 あれ、また戻ってきたのか?


「お前、一体何なんだよぉっ!?」


 男の顔はこちらを向いている。

 一応後ろを確認するが、通り過ぎていく通行人しかいない。

 ってことは俺に言ってるってこと?

 気になるのは、男が明らかに動揺しているということだ。

 さっきぶつかっただけで、俺は何もしてないというのに。

 誰かと人違いしている、というような感じでもないんだよなぁ……。

 正直、意味が分からん。


「その言葉は、俺がお前に聞きたい言葉だなぁ」


 え?

 急に後ろからした声に振り向くと、そこにいたのはアッシュさん。

 なんでその姿なの? とか、3秒くらい前にはいなかったよね? というような疑問が頭を駆け巡る。


「教えてもらおうか。お前が誰で、何故こんなことをしたのか」

「ちぃっ! この化け物どもが!」


 男は俺らに背を向けて、一気に逃げ出す。


「何があったかは後で話す。今は気にすんな」


 そうとだけ告げると、男の後をアッシュさんがハンターのように追いかけて行った。

 あっという間に2人の姿は見えなくなる。


 ……。

 …………。

 ………………。

 えーと……うん。言われたとおり、今は気にしないでおこう。

 どうせ考えても分からないんだしな。うん。それがいい。

 横道からさっきいた通りへと戻ると、ふうっと息を吐く。

 一応周囲を注意深く観察してみるが、アリスの姿はなかった。

 ついてきてはいない……んだよな。

 まぁ罠にかけられそうになったことはあっても、嘘を吐かれたことはないから大丈夫だと思うんだけどさ。

 そんなことより、何をしようと――ってそうだ、お土産! お土産を決めないとな。

 ピューラムネは所詮お菓子、食べたら終わりだよな。

 お土産として考えると無難なんだけど、考えてみたら今までたまにお菓子を渡す以外にアッシュちゃんに何かをあげた記憶がない。

 結構長い付き合いになってきたし、どうせならそろそろ1つくらいは形に残るものをあげたいよなぁ。

 絵本は形に残るけど、アッシュちゃんが喜ぶかは運次第になるか?

 魔法王に関連する中身だけど――あ、ダメかも。

 完全な作り話だったらまだいい。

 でも、もしそれなりに史実に基づいて作られていたとしたら。

 最後のほうで、アッシュちゃんの地雷を踏み抜く可能性があるんじゃないか。

 思い出すのは、鬼人がアッシュちゃんのタブーを口にした瞬間のこと。

 いやー、あの時は怖かった。恐竜狩った後で釣りしてた時とかも結構怖かったしなぁ。

 昔に関連するものは避けたほうが無難かね。

 っとなると、消去法でアクセサリー、か。

 サイズの問題に関しては、他の店を回っている最中に、ネックレスかイヤリングなら多分平気だろうと思い至った。

 ただ、そこで別な問題点に気づいたんだよなぁ。

 アッシュちゃんだろうが、アッシュさんだろうが、アッシュだろうが。

 誰がつけても似合う、もしくはそれほど違和感がないものを選ばなければいけない。

 美少女と、オッサンと、美女である。

 真ん中がなければまだ選びやすかったんだけどなぁ……。

 地味に難易度が高い。オシャレになんて元々大して興味がなかった俺に、果たして選べるのだろうか。

 やるしかないんだろうが……ダメだったら、やっぱりピューラムネに逃げようかね。

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