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地雷

ちょっと前と比べて短めにしました。これくらいを基準にしようかと考えています。また変わるかもしれませんが。

「望、ごめんね。大丈夫?」

「あー……大丈夫。うん、チートはもう諦めるよ」


 項垂れている俺にアッシュちゃんが優しく声をかけてくれる。

 なんかさっきからこのパターンが多くないか。

 そもそも(見た目が)小さい子に慰められ続けるって情けないよな。

 確かにチートがないのは残念だけど、夢の中でも異世界に来れたことはラッキーだし、高望みしすぎだったんだろう。


「よし!」


 ちょっと気合いを入れよう。

 夢が終わるまでは流されながらも全力で楽しもう、うん。

 そういえば、結構時間は経ってるよな。

 後どれくらい時間残ってるのかな。

 普通の夢よりは現状でも圧倒的に長い時間過ごしている気はする。

 ただ、起きたら普通夢の内容なんてほとんど忘れている。

 実際の夢も実はいつもこのくらい長いという可能性はあるだろう。

 他にも、明晰夢は普通の夢と時間間隔が大きく違うという可能性もある。

 正直分からない。

 今終わってもおかしくないし、数カ月このまま……はさすがにないか。

 それでも数日とかはありそうだ。

 いつになってもいいように、後悔しないようにしよう。


「えっと、この後はどうするんだ?」

「今日はもう終わり。この後は寝るだけだよ。望も慣れないことやって疲れただろうしね」

「そうか」


 ちょっと気疲れしてるくらいだけどって……あれ?

 これって夢だろ。

 そういえば、夢の中で眠れるものなのかな。ちょっと不安になるんだが。

 あり得そうなパターンとしては、

 1.問題なく眠れて、起きても状況は変化せず夢の中のまま。

 2.眠れるけど、起きたら現実で起きる。あるいは眠った時点で現実で起きる。

 3.そもそも眠ることが出来ない。

 ってくらいか。

 一番助かるのは1だな。次点で3。2は勘弁。

 あぁ、でも眠る必要があるかは別問題なのかな。

 基本は眠らずに活動出来て、眠ったら現実とかならありか。

 帰るタイミングを任意に決められるなら、それがベストだしな。

 となると、どう転んでもいいように今日は眠らないようにしないと。


「じゃあ、俺が寝るところに案内してくれるか?」

「うん。こっちだよ」


 庭に出てきた際のルートを戻るアッシュちゃんについていく。

 軽い足音を鳴らしながら館に入り、おもむろにアッシュちゃんは口を開いた。


「望は、聞かないんだね。僕の種族のこと」

「種族って……アッシュちゃんは魔王なんだろ?」

「うん、魔王だよ。でもそれは役職みたいなもので、種族じゃないから」


 あぁ、そういえばそうだ。

 寝る前に読んでいた本では魔王がそのまま種族だったから、ついその感覚で流してた。


「ちょっと勘違いしてたんだ。そういう言い方するのは、聞かないで欲しいって意味? それともその逆? 言いたくないなら聞かないけど」

「知ってもらうこと自体はいいんだ。ただ、うちの種族の一部が昔バカなことやってね。

 その時についた別称――まぁ僕は蔑称だと思ってるんだけど――が、大嫌いなんだよ。しかも今となっては別称の方が有名でね。

 僕にとっての地雷みたいなもんだから、そのことだけは知っておいて欲しいんだ。隠し続けるのも無理だろうし」

「なるほど。確かにそれは知っておいた方がいいね」


 わざわざアッシュちゃんの地雷を踏む気はないからな。

 どんな顔で怒るのかはちょっとだけ気になるけど、俺が嫌われる必要はないし。


「本当はさっきいろいろと説明したときに聞かれるかなって思って、内心ドキドキしてたんだよ?

 でも聞かれなかったし、自分から話題にするのも嫌だったから今まで黙ってたんだよね」

「え、じゃあ何で今話題にしたんだ?」

「さっきの望を見てたら仲良くなれそうだったから、地雷踏まれて嫌いになるのは勿体ないって思っちゃった」


 うーん。さっきの俺って、情けない姿しかなかったと思うんだけど。

 もしかしてアッシュちゃんはあれかな、ダメ男相手に母性本能がくすぐられちゃう、苦労するようなタイプなのかな。

 俺はダメ男じゃないと言いたいけど、さっきチートを求めてた俺は完全にダメ男っぽかったしなぁ。


「アッシュちゃん、ダメ男以外にもいい人はいっぱいいるんだよ」

「うん、とりあえず望が勘違いしていることは分かった。それは勘違いだから、そんな優しい目で見ないで」


 おや、勘違いだったのか。これ以外は思いつかないんだけどな。


「じゃあ、なんで仲良くなれそうって思ったの?」

「それは……言わないとダメ?」


 おおう、さすが合法ロリ。ここでちょっと潤んだ瞳の上目遣いとは。

 自分の武器をよく把握しているな。

 しかぁし、高校時代にこの目でよく厄介ごとを押し付けられた経験のある俺には通じない!

 こういう目をされても引いてはいけないと、過去の経験が叫んでいるのだ。


「ダメだね」

「ちょっと恥ずかしいんだけど」

「我慢しようね」

「望って……サド?」

「あんまり考えたことないけど、痛いのは嫌いかな。それで、理由は?」


 アッシュちゃんは数秒うぐぐ、と唸っていたが、一度深いため息をついてから口を開いた。


「頭撫でられたの、気持ちよかった」


 え、そこ?


「あと、顔真っ赤にして逃げていくの、可愛かった」


 お、おう……。


「それと、僕のために望がやりたかったことを結構あっさり諦めてくれたのが、嬉しかった」


 なるほど。

 こういうのは言われる側もダメージを受けるものなのか。

 別に愛の告白ってわけでもないのにこの気恥ずかしさ。

 アッシュちゃんが言いよどんだ理由が今更分かったよ。ごめんね。


「理由はこれでおしまい! 話を戻すね!」


 そういえば話がずれてたな。


「まず、先に別称の方を教えるね。もう一度言っておくけど、僕本当にこの名前嫌いだから、この名前では呼ばないでね」

「ああ。約束する」

「別称は、淫魔。そして、正しい種族名称は、夢魔だよ」

「夢魔か。サキュバスとかインキュバスとは呼ばれないの?」

「あー、たまに呼ばれるね。まぁ淫魔じゃなければいいよ」

「了解。今後種族名を口にすることがあっても、夢魔って言うね。ちなみに別称が嫌いな理由って?」

「んー、その話はまた今度ね。部屋についたよ。話がひと段落つくよう、ちょっと遠回りしたけどね」


 テヘペロ、みたいな感じで可愛く舌を出すアッシュちゃんの前には、確かに扉があった。

 何となく見覚えがある気がする扉と通路だ。

 アッシュちゃんが扉を開けると、部屋の中もやはり見覚えがある光景だった。

 デカいベッドが一つだけ。

 それはどう見ても最初に話をした部屋だった。

 あれ?

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