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作戦会議

 夕方に予定通り船が迎えに来てくれた。

 別れてからもずっと海の上にいたらしい。船には大量の魚が溢れていた。

 俺とアッシュさんの顔を見ると、船員のオッサンたちは明らかにホッとした顔をする。

 心配してくれていたのかな。ありがたいよ。


「竜頭苔は取れたのか?」


 一番年配の船員が発した言葉に、俺とアッシュさんは頷いた。

 竜頭苔を袋からちらりと見せると、船員たちがわっと声をあげる。


「すげぇ! ホントに一人でやったのか!」

「あんた、マジでBランクなのか!?」

「これでマルシュさんも安心できるな!」


 船に乗るとすぐに大量の酒が出てきて、あっという間に宴会のようになってしまった。

 酒の席ではアッシュさんがどうやってドラゴン(恐竜)を倒したのか語ることとなり、かなりの噓を交えて話した。

 フィアーは陽族から失われた魔法言語を使うため、使ったことを話すとまずいからだ。ついでに俺が囮になっていたという部分も怒られそうだからまずい。

 結果として地形を利用しつつマルシュさんから貰った木剣を使って倒した、という話に落ち着き、マルシュさんの優しさが巡り巡って自分に返ってきた、という美談になったものだから、大いに盛り上がった。

 その後も嘘かホントか分からないアッシュさんの冒険譚が披露され、勢いとテンションに突き動かされた船員たちに俺は酒を飲まされ――。


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「えーと、どうなったの?」


 明らかに船上ではない、ベッドの上で目が覚めた俺は、いつの間にやら姿を変えていたアッシュちゃんに質問をする。


「望は酔い潰れて今まで爆睡。船は予定通りにトラモントについて、今は適当な宿屋で休憩ってところだよ」


 窓の外はかなり明るく、嫌でもかなりの時間が経っていることを教えてくれる。


「そっか。いやー……ごめんね。まさかあんなに飲まされるとは思ってなかった……」

「あれは仕方ないよ……。空気的に僕も助けられなかったからね。というか、全員酒に強すぎ」

「どれくらい宴会続いたの?」

「4~5時間くらいだったと思う。それくらいでお酒が無くなったからね。あの調子なら多分、酒があったらトラモントにつくまで飲んでたんじゃないかな」


 うっへぇ……。

 よくそんなに飲めるよ。潰されなかったアッシュさんも凄いな。

 どの酒も結構強かったと思うんだけどなぁ。

 海の男たちはやっぱり酒を飲みなれてるのかね。


「じゃあ望、竜頭苔を届けに行こうか」

「おう。まだ猶予は結構あるはずだけど、できるだけ早く届けてあげたいしな」

「ちなみに、どうやって届けるか決めてるの?」


 どうやって届けるって、そりゃ。


「普通に渡せばいいんじゃ?」

「望がそれでいいならいいんだけどさ、なんとなーく怒られそうな気がするのは僕だけかな?」


 ……あー。

 自分のランクが届いていない依頼を、こそこそと勝手に達成したんだもんな。

 しかも依頼を受けようとすらしていなかったから、確信犯ってばれるよなぁ。

 他の依頼のついでで、偶然取れるような品物じゃないわけだし……。

 確かにマルシュさんなら、「何でそんな危険なことをした!」って怒りそうだ。

 こっちは安全だと確信していても(実際どうだったかは置いておくが)それはマルシュさんに伝わらないしなぁ。

 下手すりゃ冒険者ギルドにも伝わって、かなり絞られる……?


「よし、やめよう」

「ん、僕も怒られたくないし、その方がいいと思う。とはいえ代案がねぇ。下手な人に頼んで持ち逃げとかされたら困るしなぁ」

「アッシュちゃんがアッシュさんかアッシュになって渡す、とかはどうだろう。マルシュさんはアッシュちゃんしか知らないはずだし」

「見知らぬ人から急に何かを渡されるってかなり不気味だと思うけど……。他に案がなかったらそうするしかないかな」

「確かに……。アッシュちゃんは何か案ないの?」


 俺の言葉にアッシュちゃんは、んー、と言葉を詰まらせる。


「こっそり家とか職場に置いていく、くらいしか思いつかないね」

「急に出現した物品とか、見知らぬ人から渡されたのと同じくらい不気味だね……」

「だよねぇ。薬の作り方を知っていれば、作ってその病気の子に無理やり飲ませるという選択もあったけど」

「えーと、出来れば病気の子には優しくしてあげて?」


 そりゃ無理やりじゃないと急に来た人に渡された薬なんて飲まないだろうけどさ。

 説得する気とか全くなさそうだなぁ、この言い方。

 どっちにしろ薬の作り方は知らないからいいんだけどね。


「うーん、やっぱり僕が渡すしかないかな。望が渡される側だとして、オッサンとお姉さんのどっちに渡されたい?」

「お姉さん」


 即答する。

 アッシュが俺に何かを渡す=からかおうとしている、だとは思うが、それでもこの2択はこれしかない。

 やっぱり女の人に何かをもらうって嬉しいからね。仕方ないね。

 ましてや、アッシュさんとアッシュを知らないという前提で考えれば、もうこれはアッシュしかないだろう。


「じゃあそっちの姿で行くとして。渡しに行くとき、父親が元凄腕の冒険者で家に偶然竜頭苔があって、この前息子がお世話になったからそのお礼にーって流れはどう思う?」

「あー、ありそう。特に息子の設定辺り。それなら父親は薬師ってことにして、故人ってしたらどうだろ? 凄腕の冒険者って人の記憶に残りそうだしさ」

「いいね。薬の材料の場所が把握出来てなかったから、竜頭苔を探すのに手間取ったと言えば遅れた理由にも繋がるし」


 相変わらずの噓だが、仕方がない。

 渡すことができればそれでいいんだ。

 自分に言い聞かせて、一人うんうんと頷く。


「じゃあそういう方向で。細かい部分は任せるよ」


 返答の代わりとでも言うかのようにアッシュちゃんはアッシュへと姿を変え、艶やかな笑みをこちらに投げつける。

 ちょっとドキッとするけど、砂浜でのことがあるから今までと比べて気持ちに余裕があるな。

 こちらも不敵な笑みを投げ返して、アッシュと一緒に宿屋から出て行く。

 多分ちょっと不気味な光景だったと思う。

 ついでに宿屋から出て行く際、アッシュちゃんが消えてアッシュが出てきたので、宿屋の店員がちょっと混乱していたのはご愛嬌だろう。

 単純なミスだけども、まぁすぐにトラモントを出るから大丈夫なはず!

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