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思ってたのと違う

 海の様子を眺め、漁の手伝い? をしたり、船員と話して半日を過ごした。

 ちなみに比率的には1:4:20ってところ。

 海を見るのは30分程度で飽きた。そんなに大きな変化がないし、イルカの並走みたいなイベントもなかったからな。

 漁の手伝いはちょっと粘ったけど、結局邪魔にしかならないと気付いたので途中で切り上げた。アッシュさんは元々海の男なのかと思うくらいに活躍してたけど。

 結局時間のほとんどは船員との雑談だった。酔った時の失敗談だとか、家にいるおっかない奥さんのことだとか、海賊から命からがら逃げたときの話とか。聞いているだけで楽しくて、時間があっという間に過ぎて行った。

 日が暮れだして、綺麗な夕陽に目を細めていると、遠方に黒い影のようなものが見えてくる。


「見えてきたな、望」

「あれがミテラ島?」

「ああ。ついたらあそこで一夜過ごして、そこから活動開始になる」

「明日の今頃、迎えに来るって船長が言ってたけど、それまでにドラゴンを見つけて竜頭苔を手に入れられるよな?」

「おう、余裕余裕。むしろ暇を潰す方法くらいは考えておいた方がいいぞ」


 俺の疑問に、アッシュさんが軽く答える。

 暇つぶしなぁ……。

 危険かもだけど、ドラゴン観察とかは興味あるな。

 あからさまに地球にはいません! って感じの動物にようやく会えるわけだしさ。陰族は動物という感じしないからな。ゴブリンとかは別枠だ。

 うん、安全にやれそうならやらせてもらおう。

 ダメなら釣りとかやっててもいいしな。今までやったことはなかったけど、漁の手伝いは新鮮でちょっと楽しかったからありだろう。

 そんなことを思っている内に、黒い影はどんどん大きくなり、島の全景が明らかになっていく。

 島って割と小さいイメージだったけど、結構デカいな……。

 山みたいなのも見えている。東の大山脈にもドラゴンがいるって話だったし、ドラゴンがいるのはあそこだろうか。

 山登りに備えて杖になるような棒とか適当に見繕った方が良さそうだな。

 木剣はあるけど、さすがに杖代わりにするのはマルシュさんに悪いし。

 一度もまともに使ったことはないけど。


「坊主はドラゴン相手に戦おうとすんなよ? こっちの兄ちゃんに全部任せて、やばくなったら逃げろよー」


 最近娘が冷たい、という話をしてくれた船員のオッサンが忠告してくれる。


「うん。そもそも俺は戦う能力自体がないから、やばそうなら即逃げるよ。戦おうって発想自体持てないし」

「それはそれで冒険者としてどうなんだ」


 半笑いで言われて、俺も苦笑いで返す。


「俺もちょっと情けないって思ってるんだから、そこはつっこまないでよ」

「ははは、そりゃすまん! でもまぁ、変な自信持ってるよりはよっぽどマシだな。明日迎えに来るけど、それまで変な怪我とかすんじゃねぇぞ」

「ありがと。気を付けるよ」

「おう。さて、そろそろ島に着く。坊主と兄ちゃんは降りる準備しろよー」


 言われて、俺は背負い袋を背負い、アッシュさんは背負い袋を肩にかけた。

 アッシュさんの背負い袋はアッシュちゃんのときに買ったものだから、サイズ的に背負えないんだよなぁ。

 娘のリュックを持ってあげているお父さん、みたいな感じ。最初は俺が持とうかと思ったんだけど、アッシュさんに別にそれほど邪魔じゃないからいい、と言われて結局そのままになっている。

 まぁ考えてみれば戦闘中とかで邪魔になるようなら捨てるだろうし、好き好んで野郎の荷物を持ちたいわけでもないからな。

 じゃあアッシュちゃんのときに持ったことあるのかと聞かれればそれもないんだけどさ。

 船はゆっくりとしたスピードである程度島まで近づくと、北に舳先を向けた。


「こっからは大分浅くなるから船じゃ無理だ。歩いて行ってくれ」

「了解。ありがとうね、迎えもよろしくー」

「世話になったな」

「無事で頑張れよー。マルシュさんを安心させてやってくれー」


 船の側面に縄梯子をかけてくれたので、それを使ってまずはアッシュさんが降りていく。

 海に浸かったら少しだけ泳ぐと、すぐにアッシュさんが立ち上がった。

 膝くらいの位置に水面がある。確かに浅い。

 俺も同じように海に入る。

 ああ、ここは足がつかないくらい深いのか。

 アッシュさんの傍まで泳いでいくと、途中で足が地面につく感触がした。

 大分急に浅くなってるんだな……。

 そのまま立ち上がると、俺とアッシュさんは船員のオッサンやお兄さんたちに一度手を振って、島の方へと歩いていく。

 冒険者の背負い袋は防水性に優れているからいいんだけど、服がびしょびしょだしさっさと島について一旦乾かしたいな。

 じゃぶじゃぶと音を立てて水をかき分ける。


「そいや、ドラゴンってどんな外見? やっぱ翼があって空を飛んだり、鱗が簡単な攻撃を弾いたり、口から火を吐いたりするの?」


 とりあえず西洋系のドラゴンのイメージを伝えてみる。

 複数いるってことを考えると、やっぱ西洋系のイメージなんだよな。

 東洋系の龍はどっちかってと神様とかそっち系のイメージだし。多分シェン○ンのイメージが強いだけなんだけど。


「全部兼ね備えてるのもいるし、一部だけ一致してるのもいるな。まー種類次第ってとこか」

「え、結構種類っているんだ」

「ああ。草食なのも肉食なのもいる。全部兼ね備えてるのはグランドドラゴンって言って――」


 詳しく聞いたところ、グランドドラゴンはやはり西洋系のドラゴンのイメージで合っていたらしい。

 ただこれはかなり凶暴で、東の大山脈の山頂付近にしかいないのだとか。

 高いところほど強いって話だったし、つまりこいつが最強のドラゴンなわけだ。

 他のは空を飛べるだけ、とか鱗があるだけ、とかそんな感じらしく、火は吐かないらしい。

 ブレスってカッコいいと思うんだけど見れないのか。残念。いや、俺に向かって吐かれるのはごめんだけどな。


「なるほどねぇ。この島で狙うのはどういうドラゴン?」

「んー、プテラノドンは空を飛ぶから面倒だし……やっぱステゴサウルスかな。まだ草食の方が楽だろうし」


 ……ん?

 何か変な単語が聞こえたような……。


「アッシュさん、ごめん。もっかい言って」

「ん? 草食の方が楽だろうし?」

「その前」

「ステゴサウルス?」

「それ!」


 聞き間違いじゃなかったようだ。

 え、何? それって恐竜の名前だったと思うんだけど? いるってこと?

 ていうかドラゴン=恐竜? いや、確かに竜ってついてるけど、それは違うくね? というかそれなら恐竜って翻訳されなきゃおかしいよな……。


「面白い顔してるけど、どうした?」

「いや、なんというか……ステゴサウルスって、元の世界じゃドラゴンじゃなくて恐竜って呼ばれてたんだよね。なのにドラゴンって翻訳されたから、ちょっと混乱して」

「へぇ……。望の元いた世界では、ドラゴンって種族とキョウリュウ? って種族がいたってことか?」

「そそ。まぁドラゴンは幻想上の生物だったし、恐竜も化石が残ってるだけなんだけど」

「カセキが何かは知らないけど、それはいいや。ドラゴンってどういう生物だったんだ?」

「さっきアッシュさんが言ってた、グランドドラゴンが正にぴったり来るけどって……もしかして、それ?」


 俺の言葉に、アッシュさんが頷く。


「あー、その可能性が一番高いだろうな。ヴァラドじゃグランドドラゴンもステゴサウルスもひっくるめてドラゴンって呼ばれてるから、グランドドラゴンの方のイメージに引っ張られてドラゴンって聞こえてるんだろう。なるほどなぁ、ラインってこういう場合もあるのか」


 アッシュさんは面白そうに呟いているけど、俺としては混乱するだけだから勘弁して欲しいよ。

 ていうかこれ、あれだな。

 ドラゴン退治が恐竜退治になったってことか……。

 ドラゴンが見れないことが残念だと思うべきか、恐竜が見れるのが幸運だと思うべきか……悩ましいよ。

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