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俺のチート

一回の投稿で出す文量、どれくらいがいいんですかね?

遅筆なことを考えると、一回の量を減らしてその分更新速度上げた方がいいのかな、とか思ってしまうんですが。

 というわけで、外に出てきた。

 アッシュちゃん曰く、元々は上から見たらロの字型の館で、ここはロの内側なんだとか。

 位置的には館の中庭らしい。

 今の館は「[」くらいしか残っていないそうで、被害の大きさが感じ取れる。

 前もって準備されていたのか、中庭の一角には剣や槍、斧、弓といった様々な武器が置いてある。

 中庭にあるものとしては不釣り合いかもしれないが、半壊した館の中庭として考えると、ありな気がしてしまうから不思議なものだ。

 しかし、それらがここにある意味を考えると、何となく嫌な予感がするのは果たして考えすぎだろうか。

 そんな俺を尻目に、アッシュちゃんは何かすることがあるのか、少し離れたところで地面に手をかざし、口を開く。


「地面・土・人・半径1m・10分・作製・指示に従う。クリエイトゴーレム」


 言い終わると、手をかざされていた部分が生きているかのように動き出し、人型になった。

 土で作ったにしてはカッコいい造形で、鎧を着た騎士という感じだろうか。

 右手には土で出来た剣、左手には土で出来た盾を持っている。

 まぁゴーレムなんだろう。思いっきりクリエイトゴーレムとか言ってたし。


「今の、魔法?」

「うん。ゴーレムを作る魔法だよ。望には、こいつと戦ってもらう」


 あぁ、嫌な予感が当たってしまったよ。


「そこにある武器、好きなの使っていいよ。使ってみてダメだと思ったら途中で交換してもいいし」


 もう一度置いてある武器に視線を向ける。

 当たり前だが、使ったことのある武器なんて一つもない。

 正直ダメな気がしてきてはいるが……。

 いや、召喚された時点でなぜか超凄い戦闘技能を身に着けているというパターンもあるのだし、そこに期待しよう!

 そろそろ都合のいい展開があるはず!

 まずは無難に剣かな。

 両手持ちと片手持ちがあるけど、とりあえず両手持ちから。

 見た目重そうだし持ち上がらないかもだけど……ふんっ!

 ……あ、あれ? マジで持ち上がらない?

 ホント重いぞコレ!

 よし、次にいこう。片手のならちょっとはマシだろうしな。


「んっ!」


 も、持ち上がったけど……ちょっとはマシだけど、ホントにちょっとだけじゃねぇか!

 片手剣を両手でギリギリ持ち上げられるってなんだよ……。

 こんなの振り回せる気がしないな。無理だ。次だ次!


 熟考した結果、武器は短剣になりました。

 時間をかけすぎたからか、ゴーレムは途中で一回崩れていた。

 すぐにアッシュちゃんが作り直してたけど。

 もうこの時点で半分以上心折れてますよ、えぇ。

 筋力が圧倒的に足りてないのに戦闘技能が身についているとは思えないからね。

 アッシュちゃんもちょっと苦笑いしちゃってるし。


「えっと、それじゃあ始めようか? ゴーレムには――うん、何もさせないから、これを倒してみて」


 元々は普通に戦わせる気だったんじゃないかな、この言い方。

 助かるんだけど、俺情けなさ過ぎるだろ、コレ。

 頑張ろう……。

 動かないなら俺でもなんとかなるだろうし。


「わかった」

「じゃあ、開始!」


 アッシュちゃんの声と同時に地面を蹴る。

 狙うのは鎧で覆いきれていない首部分だ。

 走って数mの距離を詰め、その勢いのまま腕を振りかぶる。

 2、1、今っ!

 どうせ人形なのだから、手加減などせず腕を思いっきり振る。


「あっ」


 それが悪かったのだろうか。

 ちゃんとゴーレムの首には当たった。

 俺の手が。


「いってええぇぇぇ!」


 マジ痛い!

 全力でなんてやるんじゃなかった!

 ていうか夢なのに何で痛いんだよ!

 明晰夢だからか!

 くっそ、夢か現実か確認するために頬をつねるなんてのは実は役に立たないのかよ!

 手がヒリヒリする感じは無駄にリアルだ。

 この痛みで起きそうなもんだけど、起きなくてよかった。

 痛みだけ味わって終わりとかやってられないし。

 とりあえず、初チャレンジを勢いだけでやっちゃダメだな。

 目測狂ってたし、腕を振るタイミングもおかしかった気がする。

 結論としてはあれか、やっぱり戦闘技能なんてなかった、と。

 はぁ……。


「の、望大丈夫?」


 アッシュちゃんが半分涙目な俺のところにパタパタと走り寄ってくる。

 別にアッシュちゃんが悪いわけでもないのに、凄く申し訳なさそうな顔をしていた。


「すぐ回復魔法かけるね」


 言いながら、アッシュちゃんは俺の赤くなった手をそっと握る。

 シチュエーション的には美味しいんだろうけど、守備範囲外だとやっぱりドキドキしないな。


「一人・光・円・0m・一瞬・回復。ヒーリング」


 唱え終わると、俺の手が光に包まれた。

 赤くなっていた手が元の色に戻り、痛みも消えている。

 いいなぁ、魔法。使えたら便利そうだし、カッコいい魔法もあるんだろうな。

 詠唱はすっごい微妙だけど……。もっと厨二っぽいのが詠唱のイメージなんだよね。


「ありがとう。魔法って凄いね。もう痛くないよ」

「え? ……あ、うん。なら良かった。ごめんね、無理させちゃって」


 なんだ今の間、ちょっと怖いんだけど。

 使う魔法間違えたとか、そんなオチないよな?

 いや、そんなオチだったとしても結果的に治ったんだしいいか。いいよな?


「いや、アッシュちゃんが謝ることじゃないよ。俺が勝手にドジっただけだし。ただ、戦闘能力が皆無なのはもう分かっただろうし、終わっていいかな?」

「うん。戦えないことくらい大したことじゃないから、心配しないでね。僕が望を守ってあげるから」


 おうふ……。

 どっちかってと俺が言ってあげたいセリフだよ。

 というか女の子にただ守られるってちょっと情けなくないか。

 実際は俺より年上だって分かってはいるんだけど、自分を納得させられない。

 よし、流される気満々だけど、強くなれそうな機会があったら狙っていこう。

 それまでに目が覚めるとかそんなことは考えない。

 十秒後くらいには一年経過してるとか、そんな謎時空があっても夢ならおかしくないんだしな。


「じゃあ次ね。望、準備はいい?」


 やっぱりそんな都合の良い展開ないですよねー。知ってた。

 今のところ俺に都合の良い展開は一切起こってないから、諦めるべきなんだろうね。


「ああ。次は何をするんだ?」

「口がどれだけ上手いか、かな」

「口?」

「うん。口が上手ければ情報収集とかしやすいからね。一人・闇・無形・1m・5分・幻影・好みの姿を現せ。イリュージョン」


 イリュージョンってことは幻かな。

 少し離れた位置に黒い煙のようなものがどこからともなく集まり、人型になっていく。

 煙はどんどん大きくなり、大体160cmくらいの大きさになったところで、一気に消えた。

 煙の下から出てきたのは――色鮮やかな和服を着た、まさに大和撫子という感じの女性。

 涙黒子が印象的で、ちょっとおっとりした感じで微笑んでいるのがたまらない。

 確かに好みの姿。どストライクです。

 ここまでどストライクだと幻って分かってても緊張するな。


「じゃあ、その子を口説いて」

「口説くの!?」


 口の上手さってそういう判断方法!?

 他にもうちょっとあるんじゃないかな!


「無理無理! 誰かを口説くなんてやったことないし!」


 年齢=彼女いない歴というか、女友達すらまともにいなかった野郎にそんなこと求めないで欲しい。

 適当に野郎だけで遊んでるのが気楽だったもんだから、ナンパなんかもしたことがない。

 というか、正直言うと相手が美人であれば美人であるほど緊張する。

 俺ごときが話しかけていいんですかねって気分になっちゃうんだよな。


「無理なら無理で、どういう風に無理なのか知っておきたいからさ。やってみてよ。じゃ、スタート!」


 これが無茶振りってやつか。

 悲惨な結果が目に見えているんだけどなぁ。

 幻相手だったら何とかなるんだろうか。


「え、えぇと、こんばんわ」

「こんばんわ」


 !?

 キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!

 幻じゃなかったの!?

 喋るなんて聞いてないぞ!

 しかも声も超可愛い。なんだこれ。なんだこれ!


「えとえと、あの」

「はい。なんでしょうか」


 やばいやばい、頭が真っ白になる。

 何か話さないとさすがに失礼ってああ違う幻なんだから失礼も何もないってじゃあなんで幻が喋ってるんだ!

 いかん、いかんぞ。ループしそうになっている。

 あああちょっと困った感じの顔しててそれも可愛いって違う、落ち着け。

 とりあえず何か。何でもいいから話題を!

 話題と言えばあれか、天気か。

 あれ、でもそれって昼間とかにするもんじゃないのか。

 夜だったら天体についてとか?

 おし、じゃあそっち方面でいこう。


「月、綺麗ですね」


 あれ、コレダメなやつじゃね?

 ほら、美人さんがきょとんとしちゃってる。

 というか異世界なのに通じるのか。やめようぜそういうの。

 スルーして欲しかった。


「くすっ。そうですね。お月見したくなっちゃいますね」

「ご」

「ご?」

「ごめんなさいー!」


 思わず逃げ出す。

 分かってて流されたのか分からずに普通に対応されたのかは知らないけど、思いっきり自爆かました気分だ。

 元の意味が分かっている自分としては、どっちにしろ恥ずかしい。恥ずかしすぎて死ぬ。

 せめてもうちょっと美人度が低ければまともな会話くらいは出来たかもしれないのに。


「の、望ー!」


 アッシュちゃんすまん、顔の火照りが静まるまで置いておいてくれ。


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 こちらのことを察してか、数分間を空けてからアッシュちゃんが俺を探しに来た。

 どんな人が見えていたとか、相手に何を言われたのかとかはアッシュちゃんは知らなかったらしい。

 俺の理想を俺に見せるだけの魔法なんだとか。

 ちょっとだけ救われた気がした。

 何があったのか軽く説明して、美人相手に緊張することを伝えると、アッシュちゃんは「じゃあ美人の女性に出会ったら僕が対応するね」とあっさり信じてくれた。

 リアルで女好きな友人に相談した時は、大爆笑された挙句信じて貰えなかったのに。

「純情ぶってもモテないぞ」とか言われたのに。アッシュちゃんホント良い子だ。


「能力測定はこれで終わり。お疲れ様、望」


 そうか、これで終わりか……。

 チートなんて無かったのか……?

 いや、待て。一つ大きいのが残っているじゃないか!


「まだ俺には知識チートが……!」

「知識チート?」


 おっと、思わず口に出ていた。


「知識チートってのは、元の世界の知識を活かした行動ってところかな。

 この世界ではあまりされないことで、元の世界では当たり前なことをしたり、科学知識使ったりとか」

「へぇ……科学が何かは分からないけど、それは便利なの?」

「便利だと思うよ。具体例はパッと出ないけど、この世界に根付けば技術レベルとか一気に上がるんじゃないかな」

「なるほど」


 これは成功する可能性が高そうだから、ちょっと口元が緩むな。

 やっぱり最初は銃だろうか。

 自分で魔法が使えたなら、魔法と科学の融合とかやれるんだけどなぁ。

 テンションが上が――


「楽しそうにしているところごめん、望。出来ればその知識チートってのは止めて欲しい」


 な ん で す と !?

 またまたご冗談を、と言いたいけど、アッシュちゃんの顔が今までで一番真剣っぽい。マジですか。


「知識チートってことは、その知識を得たら誰でも出来る可能性があるってことだよね。その知識は短期的には僕の利益になると思う。

 でもね、そういうのを解析して応用するのは、人間たちのほうがずっと上手いんだ。

 だから、長期的には逆に僕の不利益になる。数もあっちの方が多いからね。最悪僕が殺されちゃうかもしれないし。

 そういうわけで、知識チートはやらないで欲しいんだ」

「え、マジで?」

「うん、マジで」


 そっか。

 ……そっかぁ。

 正直「そんなこと知るか、俺は好きにやらせてもらう!」みたいなノリで突っ走りたいけど、最悪殺されるとかまで聞いちゃうとなぁ。

 夢だと分かっていても後味悪くなりそうだし。

 せっかくの異世界でチートなしなのか。

 俺のチート……。

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