表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/85

コサックダンス

 翌日、俺とアッシュちゃんはアリスとイリスの家に来た。

 前回は助手らしいことは全くしなかったから、今回が初仕事みたいなものだ。


「おはようございます。依頼、受けてくれたんですね」

「おはようー」

「おはよう、そういうことになったね」

「ありがとうございます。ではついてきて下さい」


 軽く挨拶をして、先導するイリスについていく。

 途中で階段を上ったが、今日は二階の部屋なんだろうか。


「姉さんは今、一昨日の実験を発展させる方法を考えているんですよ」

「一昨日の……ですか」


 またゴーレムとの戦闘、なんてオチにはならないでくれよ?


「多分大丈夫だとは思いますよ。ゴーレムの命令をもっと穏やかなものにしたみたいなので」

「あぁ、そうか。命令の組み合わせにさえ気を付ければ大丈夫なのか」

「はい。なので安心して下さい」


 なるほどな。

 しかしイリス。微笑んでいるところ悪いけど、戦闘以外のことは普通にありそうだから安心なんて出来ないぞ?

 胸の内だけでそう返して、笑って誤魔化そう。


 少し歩いてたどり着いたのは、一辺が1mほどの銀色の立方体が置いてある部屋だった。

 何だアレ?

 立方体から数m離れた位置には、耐久性重視としてゴーレム屋で売られていたごつい石のゴーレムがいて、その横にはアリスがしゃがんでいた。


「おはよう。アリス」

「おはよう! 今準備中だからもーちょっと待ってー」

「おう。イリス、あの四角いの、何?」

「あれはマナミエールといって、魔法のマナを観測する魔道具ですよ。あの小さい二つの立方体に挟まれた位置にある魔法のマナが、大きい立方体に表示されるんです」


 マナミエールって……名前つけたやつ適当だな。

 言われた位置を見れば、確かに大きな立方体の影に一辺15cmほどの小さな立方体が置いてあった。

 全部立方体だから分かり辛いけど、カメラとテレビみたいな関係かな。


「ゴーレムのような魔法で作られたものの観測も出来るので、結構便利なんです」

「なるほどねぇ」

「よし、こっちは準備出来た。じゃあノゾムはマナミエールの小さいの持ってそこに立って。アッシュも小さいの持って、そっちに立って」


 言われるがままに、マナミエールの小さい方を持とうとする。もう名称はマナミエール(大)とマナミエール(小)でいいかな。

 銀色ってことは何らかの金属で、重そうだよな。

 これアッシュちゃん持てるのかな?

 そんなことを思っていると、アッシュちゃんがかなりあっさりとマナミエール(小)を持ち上げた。


「あれ、それ重くないの?」

「うん。かなり軽いよ。見た目とは全然違うね」


 俺も持ってみると、確かに軽い。

 中身が空なんじゃないかと疑う軽さだ。

 これなら多分昨日の水晶とかまとめた布の方が重かった。


「確かに軽いな。これなら持っててもそれほど辛くはなさそうだ」


 片手でも十分な軽さだが、念のために両手で持って指定された場所まで移動する。

 アッシュちゃんも移動を完了すると、俺とアッシュちゃんの間に丁度ゴーレムがいる位置取りになった。


「オッケー。大体こんなもんでしょ。イリス、マナミエール起動してー」

「うん。マナミエール、起動!」


 イリスがマナミエール(大)に両手を押し当てた。

 するとイリスが触れているところから、マナミエール(大)の色がどんどん黒くなっていく。

 数秒かけてマナミエール(大)が全て真っ黒になると、連鎖するかのようにマナミエール(小)も黒くなった。

 みんな平然としてるから平気なんだろうけど、なんかちょっと怖いな。


「よっし、じゃあ準備出来たし、とりあえずリベンジといこうか」


 早速といった感じで懐からファイアフライを取り出すアリスに、イリスさんが慌てて声をかける。


「姉さん、今回の命令はどうなってるの?」

「ああ。今回の命令は『疲れたら踊る』だね。で、ファイアフライには『三歩歩いたら疲れる』という情報を入れてるよ」


 ふむ。踊るだけなら安全……か?

 何故疲れたら踊る、なんていう更に疲れそうな命令したのかは謎だけど。

 前のゴーレムなら泥人形だから踊りはぴったりだったんだがな。

 ちなみにゴーレム屋で見たら、前回の泥人形は戦闘能力重視だった。あんな見た目なのに。


「じゃ、いっくよー!」


 アリスは一昨日の焼き増しのように、ファイアフライをゴーレムに入れた。

 しかし、ゴーレムは一昨日と違って動かない。

 まだ命令の条件が満たされてないのだから、当然だな。


「イリス、この状況は安定してるかなー?」

「うん、姉さん。普通の契約時みたいなマナの動きだから、ゴーレムに妖精を入れること自体は大丈夫そう」

「よしよし。じゃあ歩くねー。あ、ノゾムとアッシュもこっちに合わせて動いてね」

「おう」


 一歩、二歩とアリスがゆっくり足を動かす。

 すると、ゴーレムもアリスについていく形で足を動かした。

 命令の条件が満たされていない場合は、命令を出している人に追従するという、ゴーレムの基本機能だ。

 まぁそれがなかったら不便なんだろうな。

 少なくともなかったらゴーレム屋なんて成り立たなかったろう。

 俺とアッシュちゃんもゴーレムに合わせて移動する。

 そのままアリスが三歩歩くと、ゴーレムも三歩目を歩いた。

 途端、ゴーレムが深く腰を落とした。

 ……おい。やめろよ?

 微妙に違うとはいえ、その体勢は一昨日の泥人形に似ている。

 命令が違うと分かってはいても、攻撃されるんじゃないかとドキドキしてしまう。

 アリスはゴーレムが命令に従いだしたのを確認すると、素早くその場を離れた。

 ゴーレムは腰を落としたまま腕を組み、素早く足を交互に前に出す。

 その動きを見て、つい気が抜けたたのは仕方がないだろう。

 なんでゴーレムがコサックダンス踊るんだよ。

 ツッコミたいけど、ここにコサックダンスに該当する名称ってあるのか?


「なかなか独特な踊りだね。これも姉さんの指示?」

「いや、命令にどういう踊りを踊るかってものは指定してないね。だからあり得る可能性は三つ。ゴーレム屋が踊りといえばこれと認識していたか、ゴーレムの基本性能に組み込まれた踊りなのか。あるいは――妖精の影響を受けたのか」

「それって――」

「面白いねー! どうせなら妖精の影響であって欲しいね!」


 なさそうだな。

 しかし、二人してテンション上げてるけど、これ床平気なのか?

 ゴーレムの踊りで、若干床がミシミシ鳴っている気がするんだが。


「ここ二階だよな? 床がやばそうな音出してるけど、平気?」

「え? あー、ホントだ。まぁこれくらいならぎりぎり平気じゃないかな。飛び跳ねたりしたらまずそうだけど」


 と、アリスが言ったのはフラグだったのか。それともトラブルメーカーが言ったからなのか。

 ゴーレムは急にコサックダンスを終えると、高くジャンプし始めた。


「おいおい……」


 もしかしてあのジャンプも踊りの一部なんだろうか。

 止めないとまずそうだが、止め方など分からない俺は見守るしか出来ない。

 二回、三回、とゴーレムがジャンプする度、ドスンという音と共に床の軋みが大きくなる。

 四回目でパキっと鳴り、イリスさんが慌てて動き出そうとした。


「一人だけ・水属性――」


 だが、詠唱をすぐに終えることは出来ない。

 その間に五回目の跳躍が行われ、着地と同時に今までで一番大きい音が鳴った。

 途端、ゴーレムの体が床に呑まれ、更に派手な音を立てて落下した。

 お笑い芸人が落とし穴に落ちるときも、あんな感じだったな。

 轟音と共に生じた建物の揺れを感じながら、俺は溜息を吐いた。

 しかし、やっぱりトラブルは起きるんだなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ