プロローグ-0
初めまして。興味を持っていただいてありがとうございます。
小説を書くのは久しぶりになりますので、感覚とかを思い出しながら書くことになります。
遅筆ではありますが、よろしくお願いします。
神天暦682年。
大陸の南に位置する、ごく一部の者にしか知られていない島。
認識阻害の魔法がかけられたその島にある館で、魔王は集めた情報を分析する。
問題が発生しているわけではない。
だが、魔王は情報の端々からきな臭さを感じ取っていた。
「めんどくさいな」
その内何か騒動が起こるだろう。
そして、巻き込まれる気がする。
先んじて芽を摘んでしまいたい。
しかし魔王が直に動けない以上、手足が必要だった。
今いる部下には無理だ。
であれば取るべき手段は――。
考えて、ふと最近読んだある論文を思い出した。
『異世界の扉』
この世界以外の世界に行く方法を論じたものである。
所々で間違った情報を用いているため、鵜呑みに出来るものではなかった。
だがこれまでの魔王の知識を元にその理論を再構築すると、一つの可能性が思い浮かぶ。
異世界からの召喚。
とんでもない量のマナを使用することになるが、やってみる価値はあると判断。
保険も用意することにして、魔王は準備に取り掛かった。
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神天暦685年。
嵐の日に、ソレイユ帝国はある兵器の開発に成功していた。
「南には海しかない。そちらに向けて試射しろ」
皇帝の指示に従い、兵器は稼動する。
マナの充填に二時間。
マナの変換に一時間。
発射準備に一時間。
たった一発のためだけにそれだけの時間をかけ。
「撃て」
放たれたのは、一瞬だった。
光弾が海を呑んで走った。
余波によって津波が生じ、雷雲が吹き飛ぶ。
十分想定されていたことだったため、国全体でその日の漁は禁止されていた。
船は港に固定され、住人は離れた場所に集められている。
それに加えて、大規模な結界までも用意されていた。
これで被害は出ないはずだった。
だが、被害を出さないために選ばれた方角には、一つの島と館があった。
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同刻。
魔王は召喚の準備をほぼ終えつつあった。
召喚用の土台を丘の上に置き、一息つく。
「あー、重かっ――」
独り言は轟音にかき消された。
光の弾が島の一部を削り、館を吹き飛ばしたのだ。
「どわあああああ!」
余波によって吹き飛ばされそうな身を、設置したばかりの土台に抱きつくことで押さえる。
慌てて館を確認し、魔王はドン引きした。
地面はU字に削られ、館は三分の一が消し飛び、三分の一は崩れ去っていた。
残っている部分も、余波でぼろぼろになっている。
館にいて巻き込まれたら、間違いなく魔王の命はなかっただろう。
だが、魔王が一番引いたのは遠方に見える光弾だった。
これだけの被害を発生させて尚、その勢いや威力に変動がなかったのだ。
「……人間やばすぎるだろ」