9話 迷宮作成師と破壊神の眷属
な・ん・と・か…今月中にジョーの出番までこぎつけました。
前話加筆してます。今回の話とはつながらないですが、読み返していただければと思います
『という訳だから、相談に乗ってくれ』
俺は大まかな説明をし魔王に打診していた。
『いきなりですな。まあうちの若い衆でよければ引き抜いてもかまいませんが、候補は私が選んでも?』
『ああ、任せる。今から向かうから軽く準備しといてくれ』
『わかりました。用意しておきましょう』
核を通じた音声通信を終わらせ、俺はクローゼットルームへと足を運んだ。今は従ってくれているが、グラードは正統な破壊神の眷属だからな。礼を失すると被害を被る可能性がある。まあ、そんな性格ではないのだが、妙な事になるよりマシだ。侍女に魔王城を訪問する旨を告げ服を用意してもらう。出された紋付袴にため息を我慢しつつ着替える。
転移門を起動し魔王城へ移動すると厳つい顔と体格の羅刹鬼が出迎えた。
「ようこそいらっしゃいやした。ジョーの伯父貴」
こいつは、昔から任侠映画のような奴で、魔王と協力関係を結んでからは俺を伯父貴と呼ぶようになった。なぜか魔王城中に浸透してしまい、紋付袴で訪れると受けが良いので頼み事をする時は着るようにしている。
「グラードはどこかな?」
「お連れ致しやす。こちらです」
羅刹鬼に連れてこられたのは、いわゆる応接室で一方的に見下ろすような感じの謁見室とは異なり、魔王と対等もしくは上の立場の存在にしか使わない部屋である。つまり、俺か破壊神を迎える時にしか使わない部屋だ。
「ようこそ、マスター。お久しぶりですな」
部屋に入ってすぐの所に黒のスーツを着た黄緑色の肌をした魔王が居た。アルカポネか故郷の副総理かと思ったぜ。まあ、身長が2mくらいあるから2人よりもでかいんだが。
「ああ、直接会うのは久しぶりだな」
簡単に挨拶を済ませ、魔王と向かい合うように座り、ヤクザの親分ルックな俺とマフィアの首領ルックな魔王と見るからに怪しい会談が始まった。まずは近況からだな。
「迷宮核の調子はどうだ?追加して欲しい機能とかないか?」
「管理を任せている者からは、今の所…。まだ導入して3年ですからな、落ち着いたら要望等上がってくるかもしれませんので、その時はよろしく頼みます」
「まあ、俺の所でもちょくちょくバージョンアップしているから、そうそう不満はでてこないと思うが。俺からもよろしく頼む」
魔王は魔王城の所有者であり管理者ではない。部下に俺が開発した迷宮核を使わせて管理している。
「さて、異世界で受けた仕事の事なんだが…」
「邪神のせいであふれ出た魔物たちを魔界やどこかの迷宮で元の任務に戻すという話でしたな。その旗印としてうちの部下を引き抜きたいと…」
「申請とかめんどくさいのは俺がやるから、破壊神の眷属としての仕事を理解している奴を紹介してほしいんだ。ゆくゆくはあっちの世界の破壊神に紹介するし、眷属として登用できるよう紹介するつもりだ」
破壊神の眷属であるグラードは世界の理を理解している。さらに正統な眷属である為本来上位である管理神に命令される事もない。その直属の配下となればある程度の知識を持つ者も多い。先ほどの羅刹鬼もそうだ。これは、万が一魔王が死ぬ事態になっても引き続き魂の回収を速やかに行う為だ。うちの配下も世界の理に詳しい者はいるが、迷宮核から生み出された者は破壊神の眷属になる事ができないから任せられない。
「のれん分けの条件としては十分だと思います。私の方で用意したのは、竜人、魔人、死者の王、竜王、水麗人の各1名づつです。いずれも単騎でクラニス軍1師団くらいなら滅ぼせます」
クラニス軍ってのはこの世界の大国、クラニス王国の軍の事だ。邪神戦でも一緒に戦ったが割と練度は高かった。
それはさておき、候補を1つづつ確認していこう。
まずは竜人か。ドラゴンと人間のハーフと言われているが創造神がそういう種を創ったってのが正解。見た目は大きな角以外は普通の人間だがたまに鱗が光る。頑張ればリザードマンからも進化可能だ。特徴は人間の賢さとドラゴンの強靭さを併せ持つ事だ。
次が魔人か。こいつは所謂悪魔の元ネタとなった種で見た目は人間だが、浅黒い肌と切れ目の三白眼なので、見た目が怖い。魔法特性があり強大な魔法を使う事ができる。ダークエルフとかと同じで肌の色で損をしがちな種族だ。ところでなんで、黒いと悪いと思われるんだろうな。
さらに次、死者の王。こいつはアンデットの最終進化系の一つ。真祖ヴァンパイアと並び最強クラスのアンデットだ。
そして竜王って、これはそのままだな。ドラゴンの中でも王になる資格を持つ者だ。
そして最後、水麗人。この種族名に惑わされてはいけない。人魚や半魚人の最終進化系ではあるのだが、水に限らず他の液体状の環境でも適正を持つ種族であり、ディープワンより更に進化した姿なのだ。おそらく、今まで紹介した中で一番厄介な種だ。
あっち世界の事を知ってもらう為に一度大きな町等に連れて行こうと思っているから竜王は無し。ドラゴノイドも大きな角が目立つから却下。死者の王なんてパッシブで狂気をばら撒く奴だから連れていけないし、そうなると魔人か水麗人となるか…。とりあえず2人を呼んでもらうか。
「魔人と水麗人を呼んでくれ。後は会ってから決めよう」
グラードは頷くと控えていた、俺をここまで連れてきた羅刹鬼に目配せした。
「リリアーナとサリーですね。かしこまりやした」
羅刹鬼はそういうと、部屋を出て行った。
どちれも女の名前だったな。いや、下手に口に出して「サリーが男の名前で何が悪い」と殴りかかられても困るし、見てからにしよう。
しばらくして、先ほどの羅刹鬼が2人の美少女を連れてきた。
いやまて、故郷には男の娘というジャンルもできたと聞く。気を抜いてはいけない。
「お初にお目にかかります伯父貴殿。リリエールです」
まず、魔人の方は切れ目の三白眼なのは種族特性上変わらないのだが、黒髪ストレートで唇が厚めの美人だ。故郷に連れて言って黒人のモデルさんだと紹介しても誰もが納得するだろう。
「私は2回目ですね。おぼえてますかぁ?サリーです」
水麗人の方は魔人とは真逆で真白な肌をしておりホワっと緩やかにウェイブした青みがかった髪と左目の下にある黒子が特徴的な子で、こっちは故郷でアイドルと通す事もできるかもしれない。ってか、いつ会ったっけか覚えとらん。
「なにか、伯父貴殿から変な視線を感じたのだが」
「ダメだよリリちゃん。面接だってグラード様から言われてたでしょ」
べ、別にエロい目で見てたわけじゃありませんからね!120年も生きてるけど不老のおかげで枯れてないだけだからね!!
「活きのよさそうな娘っ子どもだな。能力はグラードの折り紙付きってだけはあるな」
とりあえず虚勢を張ってスルーしとこう。あ、娘っ子って言っちゃったけど大丈夫だよな?・・・・うん大丈夫そうだ。
「これからやる事を少しだけ話とく。異世界で破壊神の眷属候補として、邪神によって地上にあふれ出てしまった魔物どもを迷宮に取り込んでほしい。近く…といっても破壊神様の時間感覚がおかしいのはお前たちもわかってると思うけど。まあ、近くその世界に破壊神様が来られるから、その時に新しい眷属に登用してもらえるよう紹介しよう」
随分破格の報酬提示だと思う。だけど、この世界の眷属の配下としてはだ。
例えば故郷から引き抜こうとすると破壊神そのものとか終末を告げる天使とかの配下になる。そっちからだと逆に報酬が少なすぎるのだ。
「邪神がらみの事件で溢れたって厄介事の匂いしかしないわね」
「でもでもー、報酬は破格だよー。私はこの仕事うけちゃうかなぁ」
「ちょっとサリー抜け駆けは許さないわよ。私もやりたい」
うん、ふたりともやる気だな。しかし、どちらか一方選ぶにしてもあっちの世界で新魔王として君臨するには迫力に欠けるな。だとしたら、俺がこの世界でやった様に影から支配を広げていくのも手だな。
「ふむ…。なあグラード2人ともってのは無しか?こいつらを魔王としてデビューさせるよりは別の勢力として魔物を取り込んだ方がよさそうだ。その場合あっちの世界の魔族を犠牲にする事になるが」
あっちの世界の魔族は魔人とは違い、魔王(として君臨していた管理神)によって魔人族を品種改良するがごとく角やら翼やら魔眼やらを生やした奴らだ。
「最初だけ、貸しましょう。眷属になれなかった方は返してください。ところで、そ奴らはいまだに邪神に忠誠を誓っているのですかな」
まー仕方ないか。最初だけ貸して貰えるだけでもありがたい。
「あっちのまともな方の管理神に聞いた話だが、どうやらそのようだ。魔王が倒された後もいくつもの国を滅ぼしたらしい」
「ならば、遠慮する必要は無いのではないですかな。邪神に与する者は殲滅するのみです。それで、片方はその魔族に当てるのですか?」
「それも考えたが、それはやはり人間にやらせたい。その為の試練の迷宮を作っているしな。魔王以外の勢力が1つだけ出てきたら不自然だからいくつか立ち上げる。その中の2勢力はこちらの手の内って事だ」
「では、私は魔王に虐げられた魔人族の生き残りとして魔人王を名乗りましょう」
「じゃあ、私は海の王者として海王ですね」
「あと冥王と竜王をでっち上げようと思う」
エルダーリッチとドラゴノイドを適当なMPで召喚すれば体裁は整うだろう。
魔王軍残党と人間側を合わせて6勢力だ。これが牽制しつつ最終的に人間側と破壊神の眷属の2勢力に分ければ良い。最終的に不可侵条約を締結すれば任務完了だ。
「まあ、話は以上だな。んじゃ3日後にうちの迷宮に来てくれ執事長のヤキヤンには話通しとくから」
「すぐに出発ではないんですねぇ」
とサリーはなぜか残念がっていたが、俺にもやる事があるからな。例えばレイバースケルトンの件とか…。そういやエリスちゃんと出品してるかな。購入はガルムに任せたから安心なんだが。あの子どこか抜けてるからな…。
「まあ色々準備が必要なんだよ。そいじゃ、グラードありがとうな」
「いや、たいした事ではありませんよ」
そう言って、魔王城を後にした3日後。リリエールとサリーが旅支度を済ませた格好で俺の迷宮を訪れた。
でも、お前は呼んでないはずなんだがね、羅刹鬼くん
次回はなんと!もう一回ジョーサイドです。
もしかしたらリリエールかサリー視点かもしれませんが…
ちょっと長くなり過ぎましたorz




