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5話 聖女とダンジョンの指針

長く期間が開いてしまい申し訳ございません

 先程からジョー殿には驚かされるばかりだ。先ほどもまだ見た事も無い配下に直接会わずに命令を下せてしまった。

 それからこの すてーたす という物は人の情報を出しているものらしい。一気に出してしまってよくわからないがな。

「な…な…」

 ん?誰の声かと思ってみたら、ジョー殿が肩をワナワナと震わせていた。

「なんじゃこりゃああああああ」

 なんだと言われても何がだ?こういう時一番冷静なのはイジェスなのだが、こういう時にも無口なので、グリムに顔を向け説明を求める。

「あー、なんだ。とりあえず。自分のすてーたす?をよく見てな」

 自分のすてーたす?


名前:エリス・リュカルド

種族:戦乙女長ヴァルキリーリーダー

年齢:98

職業:司祭・迷宮管理者

称号:古の聖女・リースバルド神の眷属

階位:SS


「ああ、そうか…私は…ついに98才になっていたのだな。それにしても、私はいつからイニシエと呼ばれるようになったんだ。古臭いと言われているようで不愉快だな」

「そっちじゃねーよ」とジョー殿が指摘する。

「冗談だ」

 半分はな。う~ん60代以降は数えていなかったからな。

「プッ!クーックク…」

 こんなくだらない冗談で笑い声をこらえきれてないのはイジェスだ。相変わらず笑いの沸点が低い。

戦乙女長ヴァルキリーリーダーか…これからやる事を考えたら英雄の魂の運び手っていうのは正しいのかも知れないな」

「いや、なんでそんなに冷静なんだ?神格化してんだぞ」

 冷静というより、なぜジョー殿がそこまで驚いているのがわからない。

「ん?神格化とはなんだ?聖女から変位したのかと思っていたが」

 私の疑問に答えたのはジョー殿ではなくグリムだった。

「変位と言えなくはないが、戦乙女は神の使途だ。人間とは別の種だろう。俺たちは戦乙女長ヴァルキリーリーダーであるエリスに復活してもらったから別の種(エインヘリヤル)になったのはわかるんだが…まあ、普通は使徒にもならず『祝福された人間』に変位するのがせいぜいだろう。考えられるのは神が天界からエリスを降ろす際に、復活させたのではなく、降臨させたんじゃないかと俺は推測する。それなら天界の役割のままになると文献で読んだ事がある」

「あ!この世界じゃ戦乙女は使徒なのか…。うちの世界(ムースガルド)じゃ小神になるから使徒を飛ばして一気に昇神したのかと思った。階位もSSだから使徒ってレベルを軽く超えているし、勘違いしてもおかしくないんだよ。まあ邪神の呪いを受けた勇者の魂を救ったんだ。破格の階位上昇も頷けるってもんだ。俺もそんなもんだし」

 グリムの説明でなぜかジョー殿は納得している。まあ、納得したのなら問題ないだろう。

「そういえば、ジョーのすてーたすはどうなんだ。人間だと聞いてはいるが、階位はエリスと同格ってどういう感じなんだ?」

 確かに異世界とはいえ小神と同じくらいの階位というのは気になる。

「俺か?俺は参考にならんぞ」

 と言いながらもジョー殿は水晶板を操作し自分のすてーたすを表示させた。



名前:ヤヴキ・ジョー

種族:人間

年齢:128

職業:迷宮管理者・迷宮作成師

称号:最高位迷宮管理者メイズマスターオブマスターズ・クリエイトマイスター・武芸百般・不老者・異界を渡る者・異界攻略者・邪神を屠りし者・鳥之石楠船神の友人・大商人・帰還者・魔王を従えし者

階位:SSS



 人間であることは間違いないだろうが、称号の数が多すぎる。あと階位は私と同じくらいと言ってなかったか?

「な、参考にならんだろ」

「むしろ、なんと答えていいのかわかりかねる。ちょっとわからない事もあるので、詳細確認しても良いか?」

 ジョー殿が頷いてくれたので、早速だが調べさせてもらおう。

まずは…


最高位迷宮管理者メイズマスターオブマスターズ:一つの世界のすべての迷宮を支配下に置いた者〕


〔異界を渡る者:自由に異なる世界へ渡る事ができる者〕


〔異界攻略者:異世界で最大の覇権を持った者〕


鳥之石楠船神トリノイワクスフネノカミ:異世界アースの日の本の国の神界(タカマガハラ)の管理神の一柱。船の神にして交易・交通の神。アース内に在る他の神界との交易を持ち、それだけでなく異界の神界とも交易をする天津神。別名天鳥船神(アメノトリフネノカミ)


ジョー殿の世界(ムースガルド)の全迷宮を支配下に置いているという事は、その世界の魔導力のコントロールもできるのではないか?」

 もともと魔導力を多く巡らせる事が迷宮の機能という話だった。

「まあ、そうだとも言えるし違うとも言えるな。ムースガルドも輪廻転生で魔導力を巡らせている。だから迷宮で天界に昇華できる魔導力は全体の1割未満なんだ。それよりも迷宮で鍛えた攻略者達が天寿を全うした際に天界に持ってくる魔導力の方が重要になるんだ」

 なるほど、私達も最初の目標を達成したら、そちらの方も考えていかなければならないな。

「それよりも、今後の仕込みは考えているのか?」

「仕込みとは?何を危惧しているのだ?」

「この世界の常識として迷宮は魔物の巣窟で悪しき物って認識なんだろう?それをどう払拭して認知させていくのかって事さ」

 ふむ、確かにそれは重要な事だな。

「あと十数日で最後の予定だった…対話者が来る。その者を使ってなにかしら外へ情報を流して誘導できると思うが」

 例えば、この土地や周辺の王や最近の英雄候補を呼んでもらって、神に祝福されたダンジョンだと宣伝する事だって可能だろう。うん、その方向でやってみるか。

「リン、ここを神に祝福されたダンジョンだと演出するプランで頼む」

「まかせなさーい。私が最高の演出をしてあげるわよ」

 ノリは軽いが【賢者】グリエールの妻を務めるだけに頭は良い。特に演劇などの文化的造詣は深く、私がこの場所でフォルトの魂の浄化に専念できるように詰めかける者共を一喝した時の演出は彼女によるものだ。

「一応構想はあるんだな。じゃあ、迷宮の構造についての考えはどうだ?」

 構造か…確かになにも考えていなかったな。

「すまない、まったく考えていなかった」

「だろうな。いや、別に責めてる訳じゃない。もし違う目的のダンジョンを1つや2つ踏破しただけで案が浮かぶんなら逆に驚きだよ」

 正直に答えるとジョー殿はニヤリとしてそう答えた。

「そういえば無計画に地下1層を広げているけどあれは良いのか?」

「行ってみるか?」

 ん?行けるのか。まだそんなに時間が経っていないから階段もできていないはずだが?

「さて、ここに取り出し足るわ只のツルハシDX。これで下層をつなごうぞ。って事でジンさん頼んだ」

 なぜかオカシナ言動をしながら袋から本来絶対に入る事の無いツルハシを取り出しジンに渡した。

「只のという癖にDXってなんだよ」

 と言いながらもジンはツルハシを受け取り上下に振ってみる。

「ちょっと重いか。しかしツルハシって事を考えるとこのくらいの重さは必要なんだろうな」

 ここでいうジンの重いというのはバランスの事で、本人は軽々と扱っている。

 では、掘ってもらおう…。まてよ私は”ここ”に階段を作るように命令したが、具体的にどこに作るか指定していないぞ。

「で、エリス俺はどこに穴をあけりゃいいんだ?」

 ジンの言葉に皆が私を見るが、私もわからないので、ジョー殿を見る。

「特に明確な指示をしなかった場合、その配下の裁量に任される事になる。まあ、まだそんなに時間も経っていないんだ。どうとでもなるだろ」

 なるほどそれもそうだな。

「それでは、この隅の方に穴を開けてくれ」


 ジンはものの5分程度で人が一人通れる程度の穴を開けてくれた。只のツルハシDXの性能も良かったらしく終わるころにはスッカリ気に入ってしまっていた。

「これでゴーレムとかぶっ叩いたら面白いように崩せそうだな」

 満足げに言うジンの頭を飛び越すように「じゃあファム行ってくるね」と音も無く穴へ消えていった。

 一瞬の間を置き、穴から小石が2個投げ込まれる。これはファムからの『安全』合図である。声を出して危険を呼び込む場合がある為、小石を使ってサインを出しているのだ。

 ファムからの合図を受け、イジェス、私、ジン、グリム、ジョー殿、リンの順で下層へ降りた。

 光は穴から入り込んだものだけで非常に暗かったが、なぜか辺りはハッキリと見えた。

「さすがに暗いな。『トーチ』」

 ジョー殿の魔法(?)で周辺に松明が出現し辺りを照らした。

「おお、意外と近くにいたな」

 階段の作成を命じた固体だろう。瓦礫を集めてz材料毎に分類をしているようだ。

「レイバーと言っても見た目は普通のスケルトンだな」

 ジョー殿はそういうが、私の目には今まで戦った無理矢理魔王に使役されたスケルトンよりも、目標を持って活き活きと行動しているように見える。まあ、アンデットに活きが良いなんて言葉を思いつくとは思わなかったが。

「さっきの部屋はほかの事に使うから、別の所に階段をつけようと思う。奥の物置にしている所に繋がるようにしといてくれ」

 目の前のレイバースケルトンにそう命じると、意外な事にうやうやしく頭を垂れた。

「すごい躾が良いスケルトンだな…」

 うむ、他のスケルトンの状況も見てみよう。

「そういえば、今の奴は道具を一切持ってなかったがどうやって壁を削ってるんだ?」

グリムに言われて初めて気づいた。ツルハシやハンマー等、道具が無ければスケルトンの細い手で掘ることになる。

「気付いたか。配置から道具を選んで配下に持たせる事ができる。まあ、その前に手で作業している様子を見てからにしようぜ」

 それもそうだな、階段を作るように命じた者も何やら工夫をしようと素材を選別していたようだし、他の者も何か工夫をしているかもしれない。

 一番近い壁際へ向かっているとカツンカツンと音が聞こえてきた。そして視界に入った光景を見てジョー殿は固まってしまった。

「なんで、自分の左腕を外して岩をくくりつけて自作のピッケル作って掘ってるんだよ!」

 ジョー殿も驚くくらいだ。工夫を凝らして仕事をするレイバー(勤労)スケルトンはどうやら当りだったようだ。

次回は今回出てきた気になる単語『変位』ついて(の予定)


最後のジョーの台詞がわかりにくかったので訂正しました

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