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23話 正義の名を背負う者と廃種の長

 オレの名は正義。正義と書いてジャスティンと読む。

 いわゆるキラキラネームを付けられたってわけだ。

 ジャスティスじゃないのは、少しでも名前っぽくしたかったと親は言うが、当時人気の海外アーティストの名前から取ったのはバレバレだ。家に、その人のCDあるし……。

 自分の名前に違和感を覚えたのは小学2年の頃。

 親に反発し荒れたが、しょせんは小学生で、何もできず遅く帰宅するくらいがせめてもの抵抗だった。

 そんな状況を救ってくれたのは、近所に住む兄貴的存在だった。


「お前、名前にコンプレックスもっているんだって? だったら、マサヨシって呼んでもらうようにしな。大人になれば改名する事もできるんだぜ。それまでに、マサヨシって呼び名が定着していれば変えやすいって聞くぜ」


 この時からオレはマサヨシを名乗り始めた。


 なんだかんだで、俺が高校2年の頃、異世界の神から勇者として召喚された。


『この世界は、今滅亡の危機に瀕しています。魔王と迷宮王の侵攻によって天界にも被害が及んでいます。これを打開するには勇者である貴方にかけるしかないのです。お願いします。勇者ジャスティン』


 ゲームが好きだったオレは勇者という言葉に乗せられて、(ジャスティンと呼ばれる事には辟易したが)魔物や魔族を討ち取っていった。しかし、とうとう天界に魔の軍勢が攻め寄せてきた時、オレは敵の親玉のひとりと教えられていた迷宮王と対峙した。


「なんで、なんでアンタが迷宮王なんだよ!丈次兄ちゃん!!」

「よう、マサヨシ。どうだ、一緒に俺たちを誘拐した腐った邪神を倒しにいかねーか?」


 目の前にいた迷宮王は、オレにマサヨシを名乗るようアドバイスをしてくれた近所の丈次兄ちゃんだった。

 そしてオレは戦い、敗れ、丈次兄ちゃんに保護された。

 その後、オレは地球への帰郷を望んだが、邪神と共にいたため浄化が必要とされ、天界の仕事を手伝う事になった。

 主神クラスが居なくなってしまい、小神ばかりになってしまった事で、決裁権をもつ神がいない。

 他の世界からヴァン神族に来てもらい、ある程度運用を任せる事になった。

 しかし、決裁権についてはこの世界(ムースガルド)の神が残っている限り、ヴァン神族にまかせっきりに出来ないため、今回の天魔大戦に関わらなかった(忙しすぎて関わる事ができなかった)冥界の神に決裁を取ってもらう事になった。

 天界の者の中で冥界に行ける権限を持つ神がいないため、勇者のカタガキを持つオレが冥界神の所に書類を持って行く任務を承っている。

 冥界は今もメチャクチャ忙しく、死者で溢れかえり、獄卒達がせわしなく働いている。


「おつかれ様ッス。これ、今回の分です」


 俺は顔見知りになった冥界の管理官に書類の束を渡す。


「おう、そこに置いててくれ、お前さん頑張ってんじゃねーか。もうすぐ、故郷の地も踏めそうだな。で……その後はどうすんだ?」

「そうッスね。丈次さん――こっちではジョーさんですっけ――は戻って日常生活を送るように言われているッスが、オレが迷惑かけちゃった人もいますし……それに、この仕事もヤリがいがあるんッスよね」

「そうか、お前さんも良い顔をするようになったし、その時には歓迎するぜ。でも、気を付けろよ。天界の管理が甘い状態ってのはまだ変わらんからな。いつ勇者召喚で別の世界に呼ばれるわからんぞ」

「ちょっと、フラグ立てないでくださいよ」


 そう言って、笑いながら別れたのだが、まさかこのフラグが本当に成立するとは思ってなかった。



 目を覚ますと薄暗い光に包まれた岩壁の部屋に居た。

 足元には魔法陣が描かれており、目の前には幽霊のようにかすんだ奴が立っていた。


「シューシュココシュシュ? シューシッシ……シシューッシ?」


 規則性のある、空気がかすれるような音がする。

 目の前の奴が何かを伝えようとしているから、アレは話をしているのかもしれない。

 だけど、オレには言語スキルなんて持ってないぞ。


「わっかんねーよ。ってか、勝手に呼び出しやがって、どういうつもりだ?」


 丈次さんに勝手に召喚する輩は全て邪悪な奴等だと聞いている。

 こいつらを信用する事はしない。オレが居なくなった事は丈次兄さんに伝わり、トリフネ様にも伝わるだろう。

 オレはそれまで、こいつらに邪悪な行いをさせないように見張っておくだけでいいだろう。


[それで良いのか?]


 自分の心に言葉が浮かんできた。

 邪神に召喚されてから、稀に『魔がさす』ことがたまにある。

 これも、その類のものだろう。


 それで良いに決まっているだろう。

 オレにはこいつらをどうこうはできても、元の世界に戻れるわけではない


[こいつらを利用して、帰らせれば良いじゃないか]


 ダメだ。そんなことをしたら、こいつらと同じになっちまう。

 オレは真っ当(まっとう)に帰りたいんだ。


[それで……帰れるのは何十年後になるんだ? あの人があの世界で過ごしたのは100年。だが、自分の主観だと5年前だと言っていただったろう]


 それは……そうだが。

 そんな事をしたら、丈次兄ちゃんの信頼を裏切る事になる。


[だが、どうするんだ? 今現在、囚われてるんだぞ。この世界に、奴等のせいで。何にせよ、奴等を利用していく事になるんだ。生活する中で、帰る方法を模索するなら真っ当な行為だろう?]


 確かに、行動しなければ変わらない……か。

 一利あるか。よし、情報は集めよう。しかし奴等に協力をするかは保留だ。


[まずは、それでいいだろう。よく考え何が自分にとって良いものかを考えろ]


 自問自答(?)を終え、目の前の幽霊みたいな奴に注意を戻す。

 奴は腕輪のような物を取り出し、身に着けた。


「コレでワカリマスかな? ユウジャどの」


 通訳の腕輪か。しかも、勇者だと呼びかけやがった。

 勇者で無いのに、勇者と名乗ると業をたんまりと背負ってしまう。

 俺はムースガルドの神(邪神だけど)から、正式に任じられているから問題ないがこいつらの動向を探るにはうってつけか。


「はぁ? オレが勇者? ってかここはどこなんだよ」

「ここは、ワレらがかくれスむドウクツです。チカラがワイテクルのでキョテンとしてオります」

「で、オマエたちは何者なんだ? なぜオレを呼び出した。あとちゃんと、顔を見せろ」

「コレはシツレイしました。ワレらは、マオウがやぶれたアトもアバれているマゾクたちにコマッテいるおです」


 魔王がいないのに勇者を呼んだ!?

 オレは驚きながらも先を促す。


「ワレらは、チジョウにスむカゲにイきるモノです。マのリョウイキにスむマゾクたちがチジョウにセめイり、ニンゲンとセンソウをハジめたのです。ユウジャによりマオウはウたれたのですが、ニンゲンとマゾクとのセンソウはツヅイております」

「俺の他に勇者がいたのか?」

「ハチジュウねんまえのコトです。ソノゴ、コントンとしたジョウキョウにもユウジャはアラわれず、ワレらのドウシによって、ユウジャショウカンのホウホウをオソワリました。そして、アナタさまをヨぶコとがデキたのです」

「ふ~ん、同士ねえ……。まずは、オマエ等の事を話せ。目的も偽りなくな……」

「ワレらはノーム。ドウシはガーストとイイます。マのリョウイキにスみヘンイしたノームがガーストです。マゾクのナカにもマのリョウイキにカエりたいとオモうモノもイるのです」


 なるほど、こいつの話が正しければ、指導者を失って軍が空中分解。

 それぞれが暴走して世界が大混乱ってところだな。

 指導者がいないのに、わざわざ人口へらすような戦争はしたくないって考えの奴がでるのはわかる。

 しかし、少数意見だろうな。

 多数派の


 俺が考えて黙っている間に、ノームの男(?)の隣に同じような幽霊みたいな奴が立っていた。


「スバラシイ。セイコウしたのだな。シュもミゴトにハイッテいる」


 シュ? 翻訳できなかったのか? それとも意味のない言葉なのか? いずれにせよ、嫌な予感がプンプンする。

 ……あれ? まてよ。なんで、今あいつの言葉がわかったんだ? 奴はまだ"翻訳の腕輪"はしていないぞ。


〔オレが解析したんだよ〕


 なんだと! オマエは誰だ? 勝手に解析するって、オマエ、オレじゃないだろ?


〔オレはオマエさ。オレはオマエ(オレ)の為に能力を発揮しているだけさ〕


 ウソだ! オレの意思に関係ない事をする奴なんて、信用するもんか


〔そうでもないぜ。オマエ(オレ)は言語スキルを求めたはずだぞ〕


 なに? 確かに、『言語スキルなんてもってない』と考えたが、欲しいとは……


〔思っただろ。便利だからな〕


 う……ムースガルド人との会話もようやくできてきたばかりだったし、丈次兄ちゃんを見て便利だとはおもったが。


「サて、ワタしも、ユウシュどノにアイサつをシようかの。……もうしわけゴざイマセン。ユウシャさま。アイさつがオくれましタ。ワタしはガーストのゾクちょウのヴぃーがすデス」


 腕輪をつけ、オレに挨拶をしてくる幽霊その2.いまいち信用ができないな。


「シツレイですが、ユウシャさまのナをオシエテイタダキませぬか?」

「オレの名前か? 名前を知ってどうする」

「アナタは、サキのユウシャフォルトをコエられるデショウ。そのトキにナをキザムタメに……」


 日本でもムースガルドでも言葉っていうのは力を持つ。

 真名を伝える事は非常に抵抗があるのだが……。

 ただ、オレの真名は戸籍上の方なのかどうかという問題がある。

 まだ、戸籍変更していないという心残りもあるから、今の所アッチが真名と考えるべきだろうか……

 え~い、ムースガルドもアッチだったんだ。


「オレの名前は、〔ジャスティンだ〕」


 え!!?


「クックック……ジャスティンどの。ようこそ、マのユウシャさま」


 オレは気が遠くなり…………

   そして、オレ、ジャスティンが久々に主導権を握る時が来たって事だ。

前話の大問題ってのは、このことです。


流石に、サリー達でも勇者には敵いません。

対抗できるのは・・・・・・・

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