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15話 古の聖女の死と祝福の地

12月は忙しくなるとは思っていましたが、まさかこの時期に更新になるとは

 新しく対話者となったジェームスが王城へ報告に向かった日の午後。トスロン王国から交付された内容は激震を呼び、瞬く間に世界に広まる事となった。

 魔王を打ち破った勇者の仲間であり歴代最高の聖女として名を馳せるエリス・リュカルドが2年後に神の使途として召されるというのだ。各国の首脳が確認の為トスロン王家に使者を送る中、神聖ラーゼル教国の座主(ざす)が正式に「肯定の信託を請け賜わった」と公表した。

 また、実際に使徒天使から地上戦闘代行者と任じられているアークルシト帝国の皇帝は「東方よりすでに使徒様の気配がする。彼女しか御座すまい。2年後ではなく、既に成っていらっしゃるの間違いではないか?」と発言。これに対しトスロン王国は「エリス様が2年後に召されると神託を受けたとお聞きしている」とのみ回答。古き言い伝えによると「死期についての神託は神の使途へと迎えられる事である」とされているが、具体例がない為そういう物であると推測するしかなかった。



 そして2年の歳月が過ぎ、聖女エリスは亡くなった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 肉体だけ残し天界に行く事で、死んだように見せるのは造作もない事だった。まあ見せるも何も、今まで死んだ肉体に憑依していた様なものだから抜け出せば本当に死体になるんだがな。

 天界の喜びの苑の近くに使徒達が控える為の場所がある。神託を降ろす天使や世界の理を調整する精霊や、私の部下である戦乙女などがいる。私はその部下がいる部屋へと入る。

「あ、エリス様。髪型なんですけど、こう横に結ぶのとポニーテールにするどっちがいいですか?」

「ちょっと、ベス。戦乙女の威を顕示する目的もあるんだからね。可愛さより清廉さを表現するストレートにするべきよ。エリス様もそう思いますよね」

「ジョゼもベスもちゃんとしなさい。エリス様もお困りですよ。エイミーを見習いなさい」

「エリス様、メグ姉、私緊張してきた」

 口々に言ってきたのは私の天界での部下である戦乙女の面々だ。最初に髪型の事を聞いてきたのはマイペースなエリザベス事ベス。窘めるフリをして自分の好みに誘導しようとしていたのはジョゼフィーン事ジョゼ。ちゃんと窘めたのが姉役(自然とそうなったとの事だったが)のマーガレット事メグ。落ち着いたように目を閉じて座っていたのをメグにダシにされたが実は緊張してただけのエイミーだ。

 私はふぅと一息つくと「私は横に結んだ髪型がベスにあっていたと思うぞ」と答えた。

「エリス様!」

 メグは私のため息でお灸をすえるものと思っていたのだろう。

「エリス様が仰るなら」

「私もベスはサイドテールが似合うと思うな」

 ジョゼとエイミーは話に乗ってきた。

「それじゃ、そうしますねぇ♪」

 ベスはマイペースに鼻歌を歌いながら髪を結い始めた。

「メグは肩の力を抜いた方が良い。エイミーもな。私を起しに行くのだぞ、そんな固い顔を人々に見せるつもりか?」

「失礼しました」

「ううう…できるだけ緊張しないようにします」

 恐縮する二人に気にするなと告げ、人界の様子を見れるモニター(ジョー殿に作ってもらった)を見てみる。まずはそのジョー殿だが……流石だ。ぬかりなく準備済みのようだ。自分(うち)の迷宮のイジェス(兄貴)達は、まだ出番が来ないから日常業務をこなしている頃だろう。私の葬儀をはどうなっているかな。正教会の主教の説教が終わり、神聖ラーゼル教国の座主が説法をしていた。ふむ…私の出番まで後2時間といった所だろう。それまで、私への弔辞を聞きながら待つとしよう。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 霊堂の前の開けた場所、数十年前に聖女エリスが最初の対話者を指名したとされる場所に仮設された祭壇、その少し高い所に聖女が入った棺が置かれ、参列者はその前で祈りを奉げている。これはこの中で神に選ばれたエリスだけが特別な者であり、その前にはすべての者が等しいという事を示す物だ。

 参列者はトスロン王、正教会主教、神聖ラーゼル教国の座主、アークルシト帝国皇帝をはじめ、南方の小国家の首脳や引退した歴代の対話者(えいゆう)など、錚々(そうそう)たる者ばかりである。

 正教会の主教直々による葬儀は粛々と進んでいく。儀式も終盤にさしかかり、棺を勇者の墓標の近くに納める為、歴代の対話者から【雷瞳】カルファ【巨鬼殺し】リルム【魔牢】ミッチェルの3名と最後の対話者であり、一番若い英雄(たいわしゃ)【清祓】のジェームスが棺を運ぶ役を担っていた。

 4人が棺を囲んだ時、4人の肩に白い手が置かれた。引退した英雄と、現役の英雄に気づかれる事なく背後を取った存在にその場にいた全ての者はひれ伏した。

 白い手―正確には白い甲冑付けた手―の者は全て美しく、気高いオーラに包まれていた。

「お目覚めください。我らを統べる長よ」

「我等、戦場で強き魂を浄化する者の長よ」

「邪悪なる者に侵された勇者の魂を浄化せし偉大な長よ」

「我等、戦乙女の長よ。大いなる神の御遣いとして……」

「「「「お目覚めください」」」」

 その時、棺を中心に一条の光が差した。その光から顕現するように美しい女性が現れた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 という事があって出番が来たわけだが…4人の顔から判断するに私だと気付いていないな。

「カルファ、リルム、ミッチェル、それにジェームス久しぶりだな。よく来てくれた感謝する」

「な…エリス様…なのですか?」

 私の言葉にようやく気付いたようで、男ども3人は驚き、唯一女性のリルムは泣いてしまった。私が頷くと4人ともひれ伏した。

「全員。顔を上げなさい。そして、私の言葉を聞きなさい」

 メグに目で合図をし、4人の戦乙女たちも私の後ろに控える形で膝を付く。人々もそれに倣い膝を付いて私の顔を見た。特にラーゼルの座主は一言も聞き逃さないという真剣な顔つきで見ている。全ての者が落ち着いたのを確認し、私は言葉を続けた。

「今を生きる人々よ。私は戦乙女長の座を主より承ったエリスである。私は生前、長年に渡り勇者フォルトの魂の浄化を続けながら幾人かに魔族との戦い方をアドバイスし祝福してきた」

 私の目の前にいる4人をそれとなく見て示唆する。

「この世を離れるにあたり、今後アドバイスを降ろせない事が心残りであった。天界に上がり(かみ)は私にどういう仕事をしたいかと仰られた。私はより多くの者を祝福し魔族に蹂躙されている現状を改善する仕事をしたいと申し出た。(かみ)は最初か察していらっしゃったのだろう。(こころよ)く承認された」

 一度人々の顔を見渡す。リンが言うにはここは間を十分に開けた方が効果的だという事だった。

「歓喜せよ!今ここから人間の快進撃が始まるのだ‼神に奉謝せよ!私は神の威を持ってこの地を祝福の地としようぞ」

 間を開けたことで人々は私の言葉にすぐに反応し物凄い歓声が巻き起こる。片手を上げ、歓声を納め次のシーンに移る。ここは重要だぞ。

「よし、それでは主より任された内容だ……が………」

 言葉をきり、南西の方向を睨む。後ろに控えた部下達も同様な事をしているはずだ。人々は急に黙った私と睨んでいる方角を交互に見て、首を傾げている。

「マーガレット、この地を暫く頼んだ。エイミーも付ける。ジョゼフィーンとエリザベスは私について来い」

 そう言うと私は南西に向けて飛翔した。戦乙女の技能で私は飛べるようになったのだ。しかし左右を2人にフォローしてもらわないと儘ならない。正直、飛ぶのは苦手だ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 こうして古の聖女エリスは戦乙女の長となられた後、南西で起こった異変を感じ飛び立たれた。

 棺の周囲にいた対話者4人に戦乙女マーガレット様より葬儀を続けるよう仰られた。4人は棺を持ち用意されていた勇者フォルトの墓の横に納棺した。その後正教会主教により粛々と葬儀は進められたが、その場にいた殆どの者が「どうやって、人類を勝利に導くのだろうか」「南西の方角(あちら)に何が起こったのだろうか」「エリス様。美人だったな…」など様々な事を考えてしまっていたのは仕方のない事だっただろう。しかし、葬儀全てが終わってもエリス様が戻られるまで動かない様子の2人の戦乙女を前に解散する事もできず、戦乙女長エリスを待つしかできなかった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「エリス様、葬儀が終わった後の事を2人に指示してませんでしたが、大丈夫でしょうか?」

 あー、そういえば考えてなかったな。後は納棺して終わりのはずだから確かにすぐ終わるよな。

「こっちの要件の終わりが見えないからな。まあ、聖職者が沢山いるんだ。追加の説教なり説法なりいくらでもできよう」

 と何とかごまかしてみよう。

「エリス様が仰るならそれで構いませんが…」

「ジョゼは気にしすぎだよ。近くにグリエールさんもリンシャルさんもいるんだし、いざとなったら何とかしてくれるって」

「ベスはもうちょっと考えなさいな」

 すまん2人とも私がちゃんと考えるね事だったな。

『エリス、俺だジョーだ。そろそろ仕掛けるぞ』

「ああ、わかった。こちらも確認しだい介入する」

戦乙女の名前は某4姉妹から引用。次女はジョーと名前が被ってしまうのでジョゼに変更


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