12話 迷宮作成師の作戦会議
風邪、データの消去、やる気の問題などの色々の問題を乗り越えてようやく完成しました。
「第一回リズティールの勢力図を書き換えろ!チキチキ魔物封印会議ぃ~~!!」
大晦日の特番も良いけどあれは通常放送も面白いんだよな…。特番の方は出ている芸人さんと同じように笑いを堪える派と関係なく片っ端から笑っていく派がいるよな。俺は笑っていく派だった。
っとまあ、エリス達が微妙な顔をしているので、話を戻すか。
「え~なんだ。とりあえず今行ったアップデートの話だな。さっきもチラっと言ったが今までこの世界まわって色々な事を調べていた。それで、うちの世界との違いが迷宮核に及ぼす影響が無いか確認してた訳だ。そこで解った事だが、この世界は徹底したカルマシステムになっている。ムースガルドもカルマシステムだが、こっちみたく徹底した物になってない。……よし、サリー簡単に説明してみろ」
気分は教師だ。まあ長年生きているとこういう事もたまにあるからな。
「良い事をすると徳を積み、悪い事をすると業を背負いますぅ。死んだ時に徳を多く積んでいれば多くの魔導力を回収でき、次の輪廻で好条件の所に生まれる可能性が高くなりますぅ。あとぉ業が深ければ冥府で罪を償って貰って、更にぃ次の輪廻では悪条件の所に生まれてしまいますぅ」
うん、まあ及第点かな。しかし足りない。
「リリアーナ。何か補足はあるか?」
「え~…はい。輪廻転生を主軸とした世界では解脱と共に一般的なシステムだと言えます。徳が高くなると魂の階層が上がり、階位という形で現れます。業が深くなると階位も下がります。棄種共の魂の質が下がっているのもこれが影響していると思います」
うん、よく勉強しているようだ。だが…
「一応訂正しておこう。業が深くても、それはそれで魔導力を回収できる。ただし魂の質が落ちるのは避けられないので、冥府で罰を受けてもらう。そして冥府の維持は業で回収した魔導力を使うから世界の運営には利用できないんだけどな」
何か相違点が無いかエリス達の方を見ていたが、うんうんと頷いていたので大丈夫だろう。この世界では初歩の初歩かもしれないが、ここでサリー達2人に爆弾を落とすとしよう。
「では、この世界の住人から補足はあるか?」
ここでこの世界の常識を合わせてみよう。
「あー、今まで個の話しかしていないが、組の話はしない方が良いのか?」
流石はグリム良い所をついてくるな。
「組の話もやってほしい。違いを知るっていう点で重要な要素だからな」
基本がわかっていれば大丈夫だろう。
「俺たちも魔導力だなんだという話は1か月前に聞いた話だからそっちの話はできないが…」
前置きをしていたわりに、グリムとエリスを中心にリンシャルやイジェスからも話を聞けた。ってかイジェスが話しているのを見たのは初めてかもしれないな。まあ彼女等が次々に言っていたのは要するに
・徳と業は共有できる。 ―英雄色を好むとかそういう言葉に代表される、他が良くても一つ堕落している状態でもあり得るという奴だな
・組=2人以上の組織でもカルマは発生する。―例えば夫婦という単位でもカルマが発生し『世界に対し』影響を及ぼすって事だ
・個のカルマは組に影響を及ぼすが、組のカルマは個に影響は与えない ―個人が良い事をすれば、「あの人テランさん家のジェームス君よね。ディーン家はやっぱりすごいわね」と家のカルマが上がるが、ディーン家が徳の高い家だと言ってもそれだけで個人の徳が高くなるわけではない。悪い事でも同じ事が言える
・徳を積む為の正しい行いとして八正道が説かれている ―なんで仏教用語?と思うかもしれないが、実はリースバルド様はまだ創造されて間もない頃、地球に研修に降臨している。その時紀元前600年ほど前のインド。つまりお釈迦様が活躍した時代だな。そして仏陀の直弟子(十大弟子ではないそうだが)として師事してカルマについて学んだそうだ。当然お釈迦様も管理神の1柱だ。
ざっとこんな所だろう。にしてもこいつら元が知識階級の出が多いからこういう事については極めて詳しいし理解力があるのな。その階級の出ではないジンやファムでさえ話についてきているし。まあ死んでから習ったのかもしれないが。
「とまあ、こういう感じで徹底されているわけだ。それで分かったんだがやはり世界の法則の齟齬(カルマシステムの若干の違いや変位等の成長系)で迷宮核に影響が出ていたからそれを直した。モンスターなら少し違っていてもなんとかなるが、食べ物は少し違うだけで毒物になってしまう可能性があったからな。『範囲を指定する』『迷宮化する』等は単純な所だから影響はない。まあ技術的な事は以上だな」
時間的にはエリス達のカルマの話が一番長かったけど、まあうちの子たちには必要な事だしまあ良いか。
「次にこの2人がどこに拠点を構えるかだが…」
俺はサリーとリリアーナを招きながら、エリシェールでも使ったプロジェクターで地図を展開する。
「サリーがこの辺の海を支配して南から攻める。リリアーナは魔界に入り劣改種の比較的まともな奴を取り込んで、人界にいる棄種を排除しながら他のメンバーが追い立てた魔物を受け入れを行う。また、そのサポートとして2体のモンスターを迷宮管理者として配置する。場所はこことここだな。名目は火口に眠っていた竜王が騒々しい魔人族に怒ってってのと、魔王に滅ぼされた亡国の王がアンデットとして復活し魔物を手あたり次第襲う大氾濫が起こった・・・とかな。まあ細かくは後でこの二人に決めてもらう。基本は2人の補助だからな」
「それで、その竜王と亡国の王はどこにいるのだ?」
エリスの言葉にファムがキョロキョロしているが、まだ居ないぞ
「龍王はまだ作っていないし、亡国の王は冥界に相談しないといけないから手配できていない。なんにせよ、エリスの迷宮が公になるまで2年あるし、それまでは俺たちも準備期間だ。その間にやっていくさ」
うん?リンシャルが手を上げて主張しているな…普通に話せばいいのに。
「リンシャルどうした?」
「その2人とサポートの2体の設定が甘いと思う。私に考えさせてほしい」
確かにこちの世界の歴史に明るい人の助言は受けたい所だったし有り難い。
「正直助かる。後で2人と交えて作戦会議といこう」
「チキチキ?」
それは忘れてほしいな…。俺は苦笑いで逃げながら言葉を続けることにした。
「まあ、そういう流れに触発されて『私がなんとか王だ』とか言ってくるバカが出てくるだろうから、基本的にはそういう魔人族を滅ぼしていく。劣廃種や棄種以外は魔界に追い立てるように。そういう方針で行こうと思う。それでできるだけ棄種を減らしていくつもりだ。破壊神様の中には棄種の数で判断される方もいらっしゃるからな」
「そんなシビアな方もいらっしゃるのか。いくつもの世界を管轄してらっしゃるという事であれば、そういう事もあるのだろうな」
エリスの言うとおり、一見乱暴に見えるが棄種をそんな数になるまで対策を取れなかったという証明であり、そんな杜撰な管理をしていた者の打開策が本当に有効な物なのか?という事でもある。
この世界は勇者の魂の浄化が終わらないと他にリソースをまわせなかった(まあ、エリスを通して一部の英雄に祝福を与えてはいたが)関係で今まで大きな打開策を展開できなかったから、リースバルド様としてはようやくそっちの対策を練れるという所にちょうどエリスの眷属化やトリフネ様が話された俺の事があったので、渡りに船とばかりに利用したのだろう。
「ところで、俺ばっかり話してしまったが、エリスから何かないのか?」
一瞬きょとんとした顔をしたエリスだったが、少し考えて答えた。
「そういえば、ジョー殿が来た時に聞こうと思っていたのだが、ゴーレムの職業欄が他と違っているのだが…」
「ああ…いくつかのモンスターには特殊な物があるからな」
ゴーレムは無生物だろうから職業欄に記載が無かったんだろう。
「ああ、やはりそうなのか。それで、デリジェンスゴーストが憑依できるようだったから試したんだが、そうしたら職業が選択できるようになった。まあ、デリジェンスゴーストが生前に経験した事を見習いレベルでっという感じだったがな。それと、暫く憑けていたら解除しても職業欄がそのままだったのだ」
なんだと!?デリジェンスゴーストは職業付与ができるとでもいうのか?
「一応うちの迷宮でも調べてはいるが、そんな特性は発見できていない。デリジェンスゴーストとゴーレムのステータスを見せてくれ」
「ああ、ついでに変位もしたから見てくれ」
名前:ウッドゴーレム1(仮)
種族:ウッドアプレンティスゴーレム
変位元:ウッドゴーレム
稼働年数:1月
職業:大工(見習い)【変更可能】
称号:なし
階位:G
名前:デリジェンスゴースト1(仮)
種族:デリジェンスゴーストバイトリーダー
変位元:デリジェンスゴースト
年齢:享年18
職業:アルバイター
称号:努力家
階位:E
ん?ゴーレムにあるはずがない階位が表示されているな。物霊とか魔法生物とかの可能性が出てきたな。いや物霊にしては階位が低すぎるか。この世界のゴーレムを調べる必要があるな。
「そういや、魔界でゴーレムを潰したな…。リリアーナ持ってきてるよな」
「はい、珍しい鉱石だったので研究の為に持ち帰りましたが」
「よし、ちょっと今出してくれ」
「え…はい…。でも……ここでですか?」
確かに、まずいよな…。エリスの方にゆっくりと顔を向けながら、目で訴えてみる。
「ジョー殿…。はぁ、これから農場の事でも聞くつもりだったので、そちらに移ろうか。だからそんな目で私を見るな」
失礼な、渾身の青い猫型ロボットの『温かい目』の真似だぞ。
次回エリスの農場編!
その前に好奇心に突っ走るジョーを止めないと……どうするべか




