11話 古の聖女と異世界魔王の配下
今度はちゃんとエリスの話です
その日、私はいつもより早めに目が覚めた。
私の自室はまだ上層1Fにある。一応ロビー階にも自室を造っているのだが利用していない。こないだも現トスロン王がフラリと来たしギリギリまで気を付けないといけない。というよりまだ2年もあるのにフットワークの軽い王だ。
迷宮ステータス簡易表示
-----英雄の霊洞プロフィール-----
形態 :地下迷宮
階層 :上層 10F(88%)
下層 5F(26%)
試練の部屋(3%)
所属 :52(管理者1.眷属5.配下46)
MP :35720ポイント
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ふむ、上層の完成度が上がったな。上層はロビーがある関係上、石工のレイバースケルトン達がリンシャルがデザインした装飾を掘るのに時間がかかっている。実際はモンスターを配置すれば迷宮として稼働できるようになっている。といっても上層だけで、下層は各階で趣向を凝らす予定だ。とはいえ、まだ着工したばかりなので、最下層の試練部屋は階段のみで着工とも言えない状態だ。
さて、そろそろ日課の墓の手入れに行くか。寝衣から法衣に着替え皆の墓に行く。そういえば、この地上部分もどうしていくかを考えないといけない。まだまだ考える事が多い。迷宮を管理するようになってからもう1月以上になったな。そういえば、そろそろジョー殿が来る頃ではなかったかだろうか。
『その通りです。もう天上界には来ていますよ』
そこへ澄んだ声が聞こえてきた。
『明日、そちらに2人の連れを伴って降りてくるでしょう』
な…なんで、ジョー殿が主の声マネをしているのだ?
『あ、気付いた?ってか気付いてた?』
ジョー殿には悪いが、私は主の眷属で使徒だぞ。
『そりゃ、そうか。まあ、そういう事だから明日にはそっちに降りる。どこに降りればいいか後で座標を送ってくれ』
わかった。後で送っておく。
『おう、じゃーなー』
・・・・・・・・まあ、ロビーで良いだろう。
「到着っと、おお!凄いな」
キョロキョロと見回すジョー殿一行。
「ようこそ、私達の迷宮『英雄の霊堂』へ。客室を用意しているが、そちらに行かれるか?それともすぐに仕事に入られるか?」
声をかけると、ジョー殿が私の方に目を向け答えた。
「俺はすぐに仕事に向かう。こっちの二人を客室に頼む。お前らは荷物を置き次第俺の所に来るように」
ジョー殿から言われるまで、まだキョロキョロしていた二人がハッとして頷き応える。
「それでは、ジョー殿は私が案内しよう。二人は兄貴とファムに任せる」
兄貴はいつものように黙って頷き、ファムは「ファムわかったよ」と手を上げて応えた。
兄貴が二人が持っていた荷物を持ち、ファムが「こっちだよ」と二人の手を引いて歩いて行ったのを見送り「コアルームでよかったか?」とジョー殿に聞いた。「おう、頼むよ」と返事を返したので、現在コアルーム(仮)となっている礼拝堂へ向かった。いずれは試練の間のさらに奥に設置する予定だ。
「ほう、ここも凄いな。シンプルだが意匠を凝らして荘厳さがにじみ出ている。うちの世界でもこんな神殿ないぞ。これリンシャルがやったのか?」
デザインしたリンが胸を張っているのを見て尋ねた。
「トータルコーディネイトはわったし~。聖別化されたダンジョンと触れ込む為にもロビーは完璧に仕上げるよ」
リンはVサインを出して答える。
ジョー殿は「あはは」と笑いながら水晶板を取り出し迷宮核の近くの椅子に座り何やら操作しはじめた。そういえば、これは私も何をしているのか見れるのではないか?
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0010 1100 0011 0011 1010 0100 0100 0100
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な、なんだ…これは頭ががクラクラする
「あ、それ頭で直接見ると酔うからやめた方が良いぞ」
「ジョー殿は平気なのか?それよりもこの頭が痛くなる羅列は何だ?」
「ん~…迷宮核のシステムの中身を視覚化した物かな?俺は故郷で似た様な言葉があったからプログラムって呼んでいる」
そういうと水晶板の操作に戻り、また羅列を眺める作業に戻った。そこへ兄貴達が2人を連れてきた。
「伯父貴殿。荷物を置いてまいりました」
伯父貴?
「おう、適当に座って待ってな」
私も待っている間に暇なので、ジョー殿の近くに座った2人に話しかける事にした。
「改めてようこそ、私はエリスだ。この迷宮の管理者という事になってる」
「お邪魔しておりますぅ。私はサリーと申しますぅ。今後海の方で迷宮を管理する予定ですぅ。よろしくお願いしますねぇ」
なに?どういう事だ?
「あ、サリーそれはまだだ」
「そうなんですかぁ?」
「え~、私はリリアーナです。魔人族ですが、純血種なので魔大陸にいる偽物と一緒にしないでくださいね。お願いします」
魔人族だと?そういえば、魔王を倒した時に「だから人界への侵攻はダメだと…」と悲観していた輩がいたな。そいつらと雰囲気は若干似ているか?
「数十年前に魔王城で似た雰囲気の魔人を見かけたことがあるが、身内か?」
そう尋ねると二人はお互いを見て「あ~、え~っと…」と口を濁しだした。
「あははは、その二人はうちの世界から連れてきたから、こっちの世界とのつながりは無いぞ」
そうなのか。確かに純血種というだけあって記憶にある魔人よりも清廉されているようだ。
「まあ、人界にいる奴と、魔界にいる奴ですでに大きく違っているから、どちらかと言うと魔界にいる奴に近いというくらいだな。人界にいる奴は肉体的には邪神に弄られまくって強固になっているが、魂の質はゴブリン並だ。魔界にいる奴らも一応弄られているが、大きく変わっていない。それだけ抵抗した証なんだが、まあそれでも魂の質は落ちている。この世界で生まれた純血の魔人はこの世界にはもういない。一応称号で確認したが、魔界にいたのは『劣改種』、人界にいたのはよくて『劣廃種』、最悪『棄種』だった。魔界のは頑張れば『改種』に戻せるかもしれないが、『劣廃種』までいくともう手遅れ、『棄種』は理を乱す者として世界から認定されたようなものだからな。本来は破壊神側の担当がそれを抹消するんだが、そいつら自身がそういう状態だから…。そこでこの二人がリースバルド様の委任を受けてこれに当たる。エリス達は人間を成長させて追い込みをかけるっと。まあそういう訳で自己紹介がてら自分達のステータスを表示してみろ。丁度アップデートも終わったから自分から見せる様にやれば出来るぞ」
「えーっと名前伝えてますが…では」
名前:リリアーナ
種族:純血魔人魔女
変位元:魔人族
年齢:秘匿
職業:魔人王(仮)
称号:異界魔王の配下・破壊神の眷属候補・魔天
階位:AAA
「次は私ですねぇ」
名前:サリー
種族:戦斗水麗人
変位元:水麗人
年齢:ひみつですぅ
職業:海王(仮)
称号:異界魔王の配下・破壊神の眷属候補・邪神を退けし者達
階位:AAA
「凄いな純血と魔女の二重変位者と種族自体に究極と付く者か。…後、表示が若干変わっているようだが」
「まあ1ヶ月間この世界を廻っていろいろと肌で感じながら調整したからな。希望があった農場等の生産施設も準備万端だぞ」
それはありがたい。だが…
「それは後にしよう。次は私たちの番だな。全員分表示するぞ」
名前:エリス・リュカルド
種族:戦乙女長
変位元:戦乙女
年齢:98
職業:司祭・迷宮管理者
称号:古の聖女・リースバルド神の筆頭使徒・迷宮管理者
階位:SS
名前:イジェス・リュカルド
種族:エインヘリヤルガード
変位元:エインヘリヤル
年齢:享年27
職業:守護騎士
称号:徹壁・エリスの眷属
階位:S
名前:グリエール・フォスター
種族:エインヘリヤルウィザード
変位元:エインヘリヤル
年齢:享年32
職業:魔法師
称号:賢者・エリスの眷属
階位:S
名前:リンシャル・フォスター
種族:エインヘリヤルシャドー
変位元:エインヘリヤル
年齢:享年26
職業:探索者
称号:忍ぶ者・エリスの眷属
階位:S
名前:ジン
種族:エインヘリヤルブレイド
変位元:エインヘリヤル
年齢:享年22
職業:剣師
称号:剣聖・エリスの眷属
階位:S
名前:ファム
種族:エインヘリヤルビースト
変位元:エインヘリヤル
年齢:享年15
職業:狩人
称号:獣王・エリスの眷属
階位:S
「え!?凄い。この人達だけでも偽魔人どもを粛清できるんじゃないですか?」
魔人だけの対処なら…十数年でやれるかもしれないが、それでは私達の望みは叶わない。それに邪神と棄種のせいで減ったこの世界の魔導力を回収するには人々に棄種を倒して徳を積み還ってくれないと主が困るのだ。
「私は使徒だからな人々を導かねばならん。それに人々が自らで対処する事で魔導力を還せるからな」
「なるほどぅですねぇ。私達は、異物を排除するのが仕事ですけどぉ、管理神の眷族だと、そういう事も考えないといけないんですねぇ」
神の眷属としては駆け出しだが、一通りの事は学ばせてもらったからな。
「さすがリースバルド様から直接教えを受けただけの事はあるな。模範解答じゃないか」
なんだ知っていたのか、驚かせようと思っていたのに。そういえば、天界から来たのだったな。ならば主から話を聞いていたとしても不思議ではないか。
「まあ、なんにせよこのメンバーでこの世界の建て直しをしていく訳だ。そこでだ・・・第一回リズティールの勢力図を書き換えろ!チキチキ魔物封印会議ぃ~~!!」
たまに出るジョー殿の特殊な口調はなんだろうか、と首をかしげているとリリアーナが「故郷を懐かしんでらっしゃるので気にしないようにしてください」と耳打ちしてくれた。
息抜きに作った短編を上げております。こっちとは全く関係はありません。
そんな事してるから遅くなるんだろ?・・・・おっしゃる通りです。




