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1話 聖女の生きた道

処女作ですよろしくお願いします

 とある小さな洞窟に作られた一室で、ベットに横たわった老女がいた。



 彼女はかつて、勇者と共に魔王に挑み多くの犠牲と共に勝利した聖女エリスである。

 勇者もその時の傷で亡くなり、彼女も左腕を失った。


 魔王を倒した後、聖女は勇者と仲間達の霊を慰める為にこの洞窟へ隠遁した。

 しかし魔王と戦い生き残った得がたい経験談を聞きたい者は多く、沢山の人が洞窟に押し寄せた。


『英霊を慰める』と隠遁していた聖女は、集まった民衆に憤った。


「勇者様達の英霊に不和をもたらす者は誰だ!私はその様な者に語る口は持たん!早々に立ち去れ」


 聖女の一喝に急に雨雲が立ち込め豪雨をもたらした。


「これは、亡き賢者グリエールの怒りだ。おお、剣聖ジンよ、お前もきたのか」


 そういうと、雷鳴が轟きだした。


「これ以上騒ぎ立てるな。さもなくば、私も彼らが何をするか保証しない」


 集まった者達はへたりこみ首を縦に振った。


「もういいだろ、二人とも許してやってくれ」


 聖女の言葉の後雷鳴は止み、雨雲もどこかへ消えた。


「私は誰とも話をしないとは言っていない。しかし、こう押し寄せてくるのはよしてくれ。そうだの…お主」


 聖女は一人の男を指差した。その男は遠巻きに今までの経緯を見ていた冒険者だった。


「そうだ、お前だ。最初にお主と話をしよう。その後、私との対話の選抜方法をお前に伝える。それ以外の方法で選ばれた者以外が近づく事は許さん」


 後半は周りの者全員に語りかけた。


「しかし…」と反対しようとした吟遊詩人は聖女の一瞥で口を閉ざした。


「よし、お前だけ来い。後は去れ」


 聖女の言葉に従い、冒険者だけは洞窟へ入り後は去っていった。



 その後、その冒険者-後に『最初の対話者ファーストコンタクター』と呼ばれる英雄-からもたらされた話が今に伝わる勇者の物語である。


 そして、聖女との対話の選別方法は『4年後に自分が「次代の英雄」と思う者』だという事だった。


 その次の対話者はその時に対話した者が4年後に「次代の英雄」と思う者を選ぶ、これを繰り返すという物だった。


 そして、その冒険者も次に指名した者もその後も英雄と呼ばれる活躍を果たす事になる。


 彼らはこぞって「聖女様のアドバイスのおかげ」と口にする。


 そして、彼女の洞窟は『英雄の霊洞』として呼ばれる事となった。




 そんな彼女もよる年波には勝てず、天寿を全うする時を迎えていた。


「イジェス・グリム・ジン・ファム・リン…ようやく約束を守れそうだ」


 聖女はベッドに横たわり右腕を天に掲げた


「神よ…大いなる神よ。我が人生で得た全ての徳を、魔王に穢されてしまった勇者フォルトの魂の浄化に使う事をお許しください」


 聖女の体から光があふれ、隣にあった棺に降り注ぐ、やがて光は収まり聖女は息を引き取った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 気が付くと光り輝く平原を歩いていた。神話に伝わる神の住む天界という場所なのであろう。

 しばらく歩くと目の前にファムとリンがいた。

 魔王を倒した後も、魂だけで私に付き添ってくれたかけがえのない友人達だ。

「エリスぅ~」走って抱き付いてきたのは獣人で狩人レンジャーのファムだ。


「やっとエリスに抱き付けたぁ」


  パーティの妹分だったファムを左手(・ ・)で撫で、もう一人の友人の探索士シーカーのリンを右腕で抱き寄せる。


「エリス…お疲れ様、ありがとうね」


「礼を言うのは私だ。死しても私を支えてくれてありがとう。皆がいなければ私は押し潰されていただろう」


 リンシャルは私を労ってくれるが、世界の危機を隣に置きながら祈り続けるのは私一人では無理だっただろう。


「エリス左腕戻ったんだね」


 ファムが左手の感触に目を細めながら嬉しそうにそう言った。


「ああ、無い状態の方が長かったが、魂は覚えていたようだな」


「そろそろ行きましょう。他の皆も待っているよ」


 リンに促され、歩みを進める。暫く行くとこじんまりとした神殿が見えてきた。

 その前に3人の姿が確認できた。

 向こうも気づいたようで一番大柄の男、私の兄であり守護騎士シールドガーディアンのイジェスが手を振っている。

 左右に『剣聖』こと剣師ソードマスターのジンと『賢者』こと魔法師ウィズダムマスターのグリムもいる。


「イジェス、この神殿にいらっしゃるのか?」


「ああ」


 イジェスはいつも無口でぶっきらぼうだ、だが魔王との戦いで私とフォルトを最期まで守ってくれた優しい実兄だ。


 兄貴(イジェス)が横にずれ、私を中へ入るように促す。

 リンは彼女の旦那のグリムの傍らに寄り添い、ファムは私の後ろからついて来ようとしたが、ジンに止められていた。

 私は扉を開け中に入ると噴水の周りに花壇があり手入れをしている方が居た。

 あれが彼の方であろうか、声をかけるのを躊躇っていたが、一段落したようで私の方へ顔を向けた。


「……!」


 間違いない。

 私はすぐに身を伏せ頭を垂れる。


「エリス。顔を上げなさい。感謝しているのは私の方です。よくぞ勇者の魂を救ってくれました」


「いえ、私だけの力ではございません」


「…そうですね。あなたの友の協力があってこそです。しかしそれを成し遂げたのは貴女です」


 私はその言葉がありがたく、もう一度頭を下げる。


「貴方が浄化した勇者の魂は輪廻の流れに戻す事ができました。貴方…いえ貴方達はもう一度彼と同じ時代に生まれ変わる事を望みますか?別の事でもいいですが」


 大いなる方がそういうと私の周りに友がいた。


「畏れながら、どういう意味でしょうか?」


 戸惑っていた私の代わりに答えたのはグリムだった。


「我々はこのまま輪廻に戻されるものだと思っていました。他に選択肢があるのでしょうか?」


「急いてしまいましたね。グリエール、貴方の言うとおりです。貴方達は魔王…いえ邪神を倒した事で徳が上がり|解脱できるようになって《ニルヴァーナに達して》います。それでもなお、彼と共に歩む事もできますし、この喜びのそので悠久の時を過ごす事もできます。他にもやりたい事があったら私の眷属として世界の為に働く事もできます」


「私は…次の時代より、今を救いたいです。確かに私達は魔王を倒しました。しかし統率を失った魔物達は好き勝手に暴れまわっています。次代の英雄たちに祝福を与えてきましたが、一向に改善しません。私がもう一度とは言いません。私は次代の英雄をこれからも育てて行きたいのです」


「それは良いな。エリスがやっている事に俺も興味があったんだ。私も同じです」


「私も夫と同意見です。こんな面白そうな事はみんなで分かち合うものよ」


「フォルトなら来世でも上手くやるだろう。それまでの時代を俺たちで繋ぐのも良いかも知れないな。それに来世のフォルトを育てられるかもしれないしな」


「ファムはみんなと一緒が良い。本当はフォルトも一緒がいいけど、ジンの言う通りまた会えるならエリス達と一緒にいる」


「……」


 (イジェス)は私の頭にポンと手を乗せて頷いている。


「それは……現世に関る事になりますね……。そうです!私の友人から聞いたアレであれば問題ないでしょう」


 私達はしばらく待つように言われ、神は奥の部屋に入っていった。




「まずかったか?」


 流石に死んだ後も現世に関るというのはことわりを乱す事になるのだろう。神の手を煩わせる事に恐縮し友に相談する。


「そんなに気にしていなかったようだし大丈夫だろ」


 グリムがいうなら大丈夫だな。


「それにしても、ただ世間を沈める為の方便だと思ってたが、そんな事考えてたんだな」


「いや、ジンよ。最初はその通りだったさ。しかし英雄の卵たちと話す度、世界の動乱には心を痛めていたのだ」


「手を出そうにも、エリスにはそれ以上の使命があったからな」


「……」


 したり顔でフォローするグリムとコクコクと頷くイジェス。


 ちなみにファムとリンは花壇の花を眺めていて話に参加してない。




 奥の部屋から話声が聞こえてきたので、ファムとリンも元の位置に戻り控える。


 誰か連れてきたようだ。


「待たせてしまいましたね。こちらは別世界の友人です。彼の知り合いの話でエリス達にピッタリの事がありまして…」


「この世界は輪廻転生で魔導力マナを巡らせているようだが、別の方法で魔導力マナを巡らせる方法があってね。俺の知り合いがその専門家なんだ。さっき相談したがこの世界でも大丈夫だそうだ」


「それで、私達はどうやって英雄を育てれば良いのでしょうか?」


「「ダンジョンを運営するのです(のだ)」」


 だ、ダンジョン?


「あ、ちなみにこの方は別世界で神様やってる方です」


「「「「「ええええええええええええええええええ!!!」」」」」


「????」


 驚く私達の中で、ファムだけはよくわからないといった顔で首をかしげていた。

前半は何だったのかというオチですが、次回からはコメディー要素が多めになります。


2016/05/07 最初の場面展開が分かりにくいという指摘があった為改善しました。

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