九話 代わりのおつかい
そういえば、なんでアリスが食事取るんだよって人もいますよね・・・。
今までアリスを人間として見ていた自分がいました。
魔法使いは食事を摂らなくても大丈夫でしたよね。原作ファンのみなさま、ごめんなさい。
「はぁ…」
現在博麗神社の台所に一紀のみが大量の料理を作っていた。霊夢の他にも付き添ってきた三名。自分の分を含めて計五人分。一応食材はみんなで買ってきたものの、それを一人で作るのだから大変だった。
「……でもすげぇな俺。一体俺はなにやってたんだろうな」
とかいうのも、自分の無自覚な手さばきを見て、着々と料理を作っていっているのだから。味はいい意味でともかくとして、多人数分のを一人で作っていくのになんのストレスも感じてはいなかった。
「…まぁ流れに身を任せますかね」
自分の動きに逆らわず、今ある食材たちを料理していく一紀。
そして一方、博麗神社の中庭に四人はシートを敷いてお茶を飲みながら一紀の料理を待っていた。
「あれ、アリスは食事取らなくてもいいのよね?何で誘われたのかしら?」
「たまにはね。ちょっとあの子に興味を持ったし」
「え、珍しいな。アリス」
魔理沙は驚いていた。あまり人に興味を示さないはずのアリスがこんなことを言うとは思わなかったからだ。でもたしかに思い当たる節はあるので、興味がない方がおかしい。
「それにしてもあの一紀っていう人、どこかで見たような」
文は唐突にそんなことをつぶやいた。霊夢は目だけを文に向けた。
「アンタ、あいつと知り合いなの?」
「んー。なんていうか……昨日どころかその前の日にもあった気が……」
「バカね。昨日あいつ勝手に私の神社の上で寝ていて勝手に落ちていったのよ」
「え。マジでか?霊夢」
魔理沙の言葉に霊夢はうなずいた。でも霊夢にも一応思い当たる節がある。だけどここで言ってもいいのか迷っていた。
「(……いや、関係ないことないわよね。たしかにあの後帰ったらあいつがのんきに寝ていたし……)」
「おーい。霊夢ー」
「え?何かしら魔理沙?」
いきなり名前を呼ばれ、ちょっと驚きつつ魔理沙を見る。
「昨日の午前、それに一昨日お前どっか行っていたよな?何で私に何も言わずにいったんだよ」
「………あれは仕方ないじゃない。あのババアが勝手に来たもんだから」
「たく…。あれだけ待ってたのに来なかったから帰っちゃったぜ?」
「あーはいはい。分かったわよすみませんでしたー」
適当に霊夢は謝ってお茶をすすった。いくらなんでも遅い。いや、こんな人数だったら少し長引くと思うが。
そして一方一紀は……。
「あー…まだ終わらねぇな……」
さすがに自分の分を含めた料理を作るのはキツいのか、少し手を止めていた。一応食えるだけの分はある。問題はまだ食材が残っていること。でも作りすぎると食べられなくなって料理がダメになる。
「じゃあいいかこんなもんで。少し心残りがあるが……」
そう言って一紀は料理を片手に一つずつ持ってみんながいる場所へと向かう。
「おーい。待たせたなー」
「遅いわよ」
「悪い悪い。とりあえず作ったから適当に食っててくれ」
料理を四人の中心に置き、急いで残りの料理を運んでいく。少し手間をかけたが、特に何もなく料理を運び終え、一紀も霊夢とアリスの間に座った。
「じゃあ残さず食ってくれよ?いただきまーす」
五人はそれぞれ思い思いに料理を手に取り、口にしていく。
「うっわ!うめぇ!一紀には料理の才能があるんだな!」
「へぇ。これはなかなか」
魔理沙とアリスが称賛する。
「あやややや。これは美味しいですね!一紀さん。あなたはどんな能力を使ったんですか?」
「能力って……そんなものねぇよ。ただ…」
一紀は一旦咳払いをして言葉を止める。
「もしあるとすればそれは努力かな。……正直、どんなことにも努力しないと意味ないと思うんだ。でもそれを見せるにも勇気が必要。その勇気を出すための努力も必要。……結局、努力だと思うんだ」
一紀は魔理沙をチラっと見ながらそう言った。
「さむっ」
かっこよく言ったように聞こえたのか、霊夢が冷たい一言を放って、一紀は少し落ち込んだ。と、いきなり…。
「うふふ」
突然空間から声が聞こえて一紀は周囲を見る。今の声は今現在いる四人の声でも、ましてや自分の声でもない。と、見つけた。何故かひとり分空いている霊夢と魔理沙の間に空間に黒い亀裂が走っている。と、その亀裂が開き、中から一人の女性が顔を出す。
「何やっているのかと思えば……ちっちゃな宴会かしら?」
「げぇ。紫、なんでいるのよ」
「ゆかり…?知ってるのか。霊夢」
一紀は紫を見ながら霊夢に言った。霊夢は呆れているかのようにうなずいた。それを見て、次に一紀を見る紫。
「あらあら。あなたは?」
「俺ですか?………獅綱一紀です。よろしくお願いします」
「ご丁寧に自己紹介どうも。私は八雲紫。妖怪よ」
紫も自己紹介しつつ、料理をつまんで食べた。
「あら、もしかして一紀が作ったのかしら?」
「え?あ。そうです。……どうですか?」
「おいしい。とだけ言っておくわ」
紫にも褒められ、少し照れくさくなる一紀。だけど一紀の隣の霊夢は少し不機嫌だった。
「アンタねぇ。また私に地底へ行けと?」
「う~ん。そのようだったけど、私もちょっとお邪魔してよろしいかしら?」
「………まさか一紀」
「あぁ。一応まだ食材あるので、時間くれれば作りますが…」
「じゃあお願い」
何故か霊夢が一紀を押し出し、そして霊夢も一紀と一緒に歩き始める。
「何だ霊夢。どうも居づらい雰囲気だしてんな」
「………気が付かないのかしら?魔理沙」
「ああん?」
アリスが二人の後姿を見ながら魔理沙に言う。魔理沙はむかつきながら、でも原因は何かを探っていた。答え。分からない。以上。
そして台所に向かった一紀と霊夢。一紀は霊夢の顔を見て何やら不機嫌そうだった。
「どうしたんだよ霊夢。紫さんのことが嫌いなのか?」
「そんなもんじゃないわよ。……たく。今日こそはって思ったんだけど」
言いながら霊夢は自室へ戻って行く。すぐに戻る。一つの封筒を添えて。
「これ。守矢神社のアイツに渡そうと思ったんだけどね。だからアンタが直々に行ってくれないかしら?」
「あぁ。分かったぜ。霊夢も用事あるみたいだしな。……で、その守矢神社ってどこだ?」
「それはね………」
「という訳で、文。同行お願い」
「無理よ」
食事をまた作って持ち出し、文に先ほどのことを言ったら即答で拒否された。
なにせ守矢神社は妖怪の山の中にあるらしく、そこを通るのには妖怪やら天狗やらに話し合い(物理)をしなくてはならない。一紀は肉弾戦はともかく、弾幕はまだうまくできないものだから文と一緒に行ってすんなり解決(NOT物理)しなくてならない。
「いや、マジで頼む。どうやら大事な用事らしい」
「ダメって言ったらダメよ。私が許可したらダメじゃない」
「あーだめなのかよ……。はぁ。こうなったら(霊夢が言っていた)最終手段を………できるわけねぇよ!!!」
「え?」
一紀の視点が霊夢に向く。霊夢は料理をほおばってて紫を無視しているようだった。
「あのな!弾幕ごっこでケリつけろって無理だっての!!」
「しょうがないじゃない。ここではそれがルールよ」
「何だそりゃ、それにそれって女の子同士でのケリのつけあいだろ。俺が介入してもいいのかよ」
「んー。いいんじゃない?」
いいのかよ。と一紀はツッコミたかったが、よくよく考えると二回ぐらい、三人の女性と戦っている。もうこれで立派に逃げる手段なしと化した。
「……ということなので、弾幕ごっこは無理なのでお願いします。はい」
「………しょうがないわ。それに私も気にかかることあるし」
「あれ、意外とすんなり」
でも一紀は内心ほっとしていた。文の実力は先ほどので判明している。到底ガチで戦ったところで今の一紀にはかなう訳がない。それにあんまり体は動かしたくはなかった。さすがに三回も、一回だけ意味があったとはいえ、意味なくやるのも嫌だった。
「じゃあ飯食ったら頼むぜ。文」
「はいはい。分かりましたよー」