八話 力の反動
「で?やるとは言ったがどうすりゃあいいんだ?」
「あ。そう言えばそうだな。とりあえずぶったおせ。以上」
「いやいやいや!?ぶったおせってお前!?」
「大丈夫だっての!……打ち所がよければな」
「逆に不安だぞそれ!?」
一紀と魔理沙が争ってて、それを見かねたのか霊夢は遠くでため息をついた。そして見てられないように霊夢は言った。
「とにかく弾幕撃ちなさい。んでもって接近されたら殴れ。以上」
「弾幕?そして殴る?」
つまりあれか。弾幕撃ちながら接近してダメージを与えろと。一紀はそう悟った。
「よし。じゃあやるか」
あまり乗り気ではないように一紀は言った。実際戦いは一応一回だけだがやった。でも不安だった。もし打ち所が悪ければ寝込んでしまうかもしれない。
「一応手加減…しとくよ」
「じゃあ、戦闘開始」
霊夢の合図と共に一紀が接近する。文は団扇を振るって風を飛ばす。その攻撃に一紀は危険だと悟って防御態勢を取る。一紀の腕と文の放った風が当たる。腕から衝撃が伝わった。
「やっべぇなこれ」
このまま防いでいたら危険だ。そう感じた一紀は攪乱戦法で素早く動き回る。自分でもよくわからないほどの動きだ。でも、文は笑っている。それどころかちゃんと目は一紀の動きについてきている。
「では動き方を教えてあげましょう」
文の一声と共に動き出す文。しかもそれは一紀とは比べ物にならないほどの速さ。しかも一紀は追いつけていない。
「こっちですよ!!」
「っ!!」
弾幕がどこからか放たれ、一紀へと突き進まれる。一紀はいつもの癖で防御を取るが、魔理沙から「避けろ!」と言う声が聞こえ、すぐに弾幕の間をかいくぐった。魔理沙はその光景を驚いていた。
「すっげぇ!一紀お前すげぇよ!私も負けてられないぜ!」
そう言って魔理沙はアリスを見た。アリスの周囲に人形が浮かんでいた。
「悪く思うなよアリス!」
「それはこっちの台詞よ。それじゃ……」
「いくぜー!!!」
双方から無数の弾幕が放たれる。一紀は思わずその光景に一瞬だが見とれてしまい、だがすぐにアリスの元へと弾幕をかいくぐりつつ突撃する。
「おっと!させませんよ!!」
それよりも速く文は一紀に立ちふさがり、突風を起こして一紀の動きを止める。あまりの風に一紀は足を止めてしまい、癖で顔面を隠すような防御体勢を取ってしまう。
「おい一紀!目を伏せるのは危険行為だぜ!」
後ろから魔理沙の声が聞こえ、あわてて防御態勢を崩して、前方を見る。文が立っていた。
「ほらほらほら。今あなたの力を使ったらどうです?」
「そんなことしたら戦力の半減だろ・・・っと!!」
一紀は前進蹴りをかまして距離を離す。一紀もどうやって打開策を取ろうかと思考を巡らせる。文の言っていた言葉に何かが引っかかる。
「まさか…」
自分のもう一つの力を薄々感じていた。もしかしたらこれは…
「……やってみるか!!」
一紀は飛び上がって宙に浮く。弾幕をかいくぐり、そして一紀も宣伝した。
「星風【独楽秒針】!!」
一紀がその場で回転をし始め、さらにその状態で動きまわりつつ弾幕を発射する。
「うわっ!?」
「え!?何!?」
魔理沙とアリスも思わず動きを止めた。そしてアリスと文は逆に回避することになった。
「…(もしかしてあれって私のスペルを真似たものか?)」
魔理沙はそう薄々と感じていた。自分のスペカの一つ、「星符【ミリ秒パルサー】」と酷似していた。でもいつの間に?
「まさか…あの時?」
一つだけ思い当たるとすれば、一紀に力を貸しているとき。その時の代償として一紀にも魔理沙のスペルを自分なりに無自覚に改良しているのかと。そうすればつながる。
「……へへへっ!楽しくなってきたぜ!!」
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「ふぅ…」
ひと段落が付き、四人は腰を下ろしていた。
結局勝負はつかなかった。なにせあのあと、一紀のスペカが切れ、さらには弾幕の出し方がよくわからなかったから一紀はずっと逃げっぱなし、魔理沙とアリスがさらに弾幕を発射していたのでなおさら。文にいたってはどちらにも攻撃できるような状況だった。
そこを危険と錯覚したのか、霊夢が休戦を申しだして、そして今に至る。
「じゃあ帰るわよ一紀。あ、アンタ飛べるのかしら?今見ていた限りではそうっぽいけど」
「えぇ?休ませてくれよ……。一応飛べるけど…あ」
と、思い出したかのように一紀は声を上げて魔理沙を見た。
「ん?どうしたんだよ?」
「……あー。やっぱり何でもないや」
何を言おうとしたのか、一紀も忘れていた。一紀は立ち上がり、飛んだ。
「じゃあ昼飯でも作るか……霊夢。行こうぜ」
「偉そうな口を叩かないでよ」
「え!?飯!?」
そこにくいついたのか、魔理沙も立ち上がった。
「一紀。お前飯作れるのか?」
「ん?あぁ。……作れるぜ。一応」
「ごちそうになっていいか?」
「……どうなんだ?霊夢」
霊夢に一応許可とろうと、一紀は霊夢を見た。
「……アンタ一人で作るんならね」
「じゃあいいんだな!よっし!アリスも行こうぜ!」
「は?」
魔理沙がアリスを誘ったことに一紀は驚いた。いいのか?と、一紀が問いただす前にアリスが…。
「そうね。折角だし」
「……」
一紀はゆっくりと文を見た。文もワクワクした表情で一紀を見ていた。
「……どうぞ」
「ありがとうございまーす!」
ハァ。と一紀はため息をついた。作れるのか?こんな人数。今は自分だけが頼りだった。