四話 異変はここから
「…………夢ー…」
博麗神社の上空から箒にまたがった少女がやってくる。霊夢の知っている人物だ。
「…なぁ霊夢。アイツ知り合い?」
「もち。魔理沙よ。霧雨魔理沙」
霊夢が簡単に名前を言って、魔理沙をまたみた。なにか焦っている。それ以上に―――。
「何かに…やられた?」
「なっ!?」
一紀は霊夢の言葉に驚いた。そしてまた魔理沙を見る。―――たしかにどこか怪我を負っているようだ。
「君!どうしたんだ!?」
一紀は魔理沙に呼びかける。ストンと降りてきた魔理沙。―――霊夢の言った通り、服が少しボロけているような気がする。
「あ?お前こそだれだよ?」
「俺は一紀。とりあえず自己紹介はそれだけ。で、どうしたんだよ?」
「…実はだな。私にやられたんだ」
「「…は?」」
全く訳の分からない言葉に一紀と霊夢は魔理沙を見た。
「だから!突然現れた私にやられたんだって!」
「どういうこと?分からないんだけど」
「私が知りたい!…とにかく!頼む!助けてくれ!」
魔理沙が必死に頭を下げて頼んでいる。霊夢は少しため息をつく。
「…何で私に?」
「…もしもだ。もし私以外にアリスにも襲い掛かっていたら?」
「………」
よくは分からない。でも異変が起こっていることは確かだ。霊夢はまた魔理沙を見る。まだ頭を下げている。
「…分かったから顔を上げなさい。行くわよ」
「あぁ!ありがとな!霊夢!」
魔理沙はお礼を言い、また箒にまたがる。その行動に一紀は思わず魔理沙の肩をつかむ。
「待てよ!お前自分にやられたんだろ?なのにどうして…」
「やられっぱなしは気にくわないんだ。…んで、霊夢にはアリスのほうに向かってもらう」
「…魔理沙。お前は?」
魔理沙は黙った。でも、視線は一紀を向いていた。止めてくれるな。そう言っている。その覚悟のある目に一紀は掴んでいた肩を放しかけそうになる。
「……そっか。だったら俺もいく」
「一紀?」
霊夢は一紀の言った言葉を疑った。たかが1日過ごしただけなのに、それにいきなり一紀にとっては見ず知らずの人間なのに。
「…足手まといになるわよ?」
「承知の上だ。…足手まといはそれなりに囮になるからな」
「………しょうがないわね。じゃあ魔理沙の言った通り、私はアリスのところに行く。魔理沙は一紀を連れて行ってあげて」
言うが早いか、霊夢は飛び上がって浮上し、さっさと何処かへと向かう。一紀は思わず驚いた。なにせいきなり飛び上がってそのまま鳥の如く飛んでいったのだから。
「いや、ちょっと待てよ!?俺飛べないと思うぞ!?」
「なんだよ?…しょうがないな。じゃあ乗ってくれ」
「え?大丈夫なのかよ」
「多分な」
恐る恐る一紀は魔理沙の箒に飛び乗り、魔理沙の両肩を掴む。そして浮上。
「うわっ!?」
「しっかりつかまっとけよ!!落ちるなよ!!」
魔理沙はそれだけ発すると高速で一紀を乗せつつ何処かへと向かう。
「早っ!?」
「あったりまえだぜ!目指すは私の偽物だ!!!」