二話 今日からここで暮らします
神社の裏の家、そこには少年と巫女と鬼少女が縁側に並んで座っていた。一紀と霊夢はお茶をすすり、萃香はグビグビとお酒を飲んでいた。
「…しっかしよく飲むな…。鬼ってそんなものなのか?」
「そんなものよ」
一紀は萃香の飲みっぷりに思わず苦笑して霊夢に何気なく言う。すぐに返答が返ってくるので少し息が詰まったが、一紀が訊きたいことを思い出す。
「そういや、霊夢…だっけ?」
「え、なんでアンタ私の名前知っているの?」
「あ。萃香が霊夢って言ってたから。それよりもちょっと訊きたいことがあるんだけど」
「何?」
少年質問中…………………
「なんでそんなこと聞くのよ」
「いや、どうしてもな」
「…まぁ、アンタの服装からなんとなくは思ってたんだけど」
そう。一紀の服装は2人とは違って、青のコートに白いTシャツ、黒のカーゴパンツと、いわゆる現代風だった。
「で、ここはどこなんだ?」
「…幻想郷。それだけ言えばいいかしら?」
「十分すぎるよ」
一言言って一紀はこれからどうしようかと悩んでいた。いかんせん、記憶は多分、落下の衝撃で思い出せなくなってしまい、そもそも霊夢が服装うんぬん言っていたからここではないところだと思われる。でもどうやって暮らす?右も左も分からない幻想郷でどうすればいいか。唸りながらどうするか考えていた。と、霊夢はそれを見て分かったかのようにため息をついた。
「…ま、暮らすアテがないならしばらく厄介になってもいいけどね」
「え?いいのか?」
「……それなりにね」
やれやれと霊夢は首を振りながらそう答える。だがその言葉に一紀は驚きを隠せなかった。本当に見ず知らずの自分といっしょに暮してもいいのかと。
「しょうがないじゃない。ま、いつの間にか神社の屋根で寝ていて結局起きなくてほったらかしにしたら突然どっかに落ちたような、そんなやつを野放しにしていては困るからね」
「は!?ちょっと待てよ!?見てたのかよ!?」
今の霊夢の言葉にも反応した一紀。しかもいつの間にかと言っている。ということは寝ている間霊夢は自分を見ていた―――?
「だったら起こしてくれよ!あと、なんでほったらかしにしてるんだよ!?」
「落ち着きなさい。そこで萃香がハテナマークを浮かびながら待っているんだから」
「………やめた。これ以上は反抗できる気がしねぇ」
一紀は空を見上げながらため息をついた。どうせこのまま全力で逆らってもさまざまな手段で言い返せないようにしてくる。だったら早めに切り上げて負けを認めよう。それも交じったため息だった。と、一紀はまた霊夢のほうを振り返り、一言言った。
「……んじゃ、しばらく厄介になるよ」