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十二話 焦る気持ち。そして……

 「急ぐぞ!!」


 一紀があわてて二人に声をかける。今持っているお札。もしかしたらこれは……。


 「(何だ?俺は何か知っている…?)」


 何があるんだ一体?よくわからない自分の感覚にも焦っていた。だがそれよりも速く、文が呼びかけた。


 「急ぐんでしょ。だったら早く来なさい。……しょうがない。椛も来なさい」

 「え」

 「戦力増強のためよ。今は緊急用」


 どうやら文も少しばかり焦っているようだ。そして文はある方向を見た。恐らく、守矢神社の方角。一紀もすぐに飛ぶ。


 「よし!行こうぜ!!」





















 「………おい。今の状況……どういうことだ?」

 「「………」」


 一紀と文と椛は守矢神社につき、そして今の状況に唖然としていた。


 「あぁ。すまないね」

 「おい!!どういうことだよ!!」


 一紀は一人の女性に抗議した。


 「なんだってんだよ……!









  ただの風邪で寝込んでいるだけかよっ!!!」


 そうだった。今現在守矢神社の境内で、女性五名と男性一名がいた。その女性の一人は布団で寝ていて、一人が看病しているという、焦った気持ちはどこいったって気分だった。


 「まぁすまないね。本当に。早苗が風邪で寝込んじゃってね」

 「そうだよー。だからろくにいけなかったんだー」


 大人な女性と子供っぽい女の子が一紀に言った。思わず二人を殴りたくなってきた一紀だが抑えた。たしかにある意味焦った自分は自業自得だ。でもよく考えると……


 「文!!!お前が焦らせたんだろ!!」

 「静かに一紀。たしかに私は急げとは言ったけど」

 「……くそっ。ってか、もしかして椛………」


 一紀は椛をゆっくりと見た。椛は何故かため息をついていた。


 「私も言おうとしてたんだが……、一紀殿が勝手に話を進めたからだろう」

 「うぐっ……」


 返す言葉がない一紀。そして諦めたかのように頭をかき、思い出したかのように女性に渡す。


 「これ、霊夢が」

 「お。わざわざすまないね。あ、そうだ。アンタの名前は?」

 「俺ですか?俺は獅綱一紀って言います」

 「自己紹介ありがとう。私は八坂神奈子。んで…」

 「洩矢諏訪子だよ。わざわざごめんねぇ。一紀君」


 二人が自己紹介をして、一紀はまた一礼し、すぐに部屋を離れる。文と椛もついていく。部屋の中には神奈子と諏訪子、そして早苗の三人だけとなった。


 「何というか、騒がしい子だね。あの子」


 ふと、諏訪子がそう言った。神奈子もうなずいた。


 「そもそも、なんでだろうね。初めてあった気がしないんだよ」

 「うーん……実は私もなんだよね。……ん?」


 と、諏訪子は寝ている早苗の異変に気が付いた。まるでそれは………


 ところで一方外にいる一紀達は。


 「あー……なんて日だよ今日は。……いや、ほとんど自分の自業自得なんだろうけどな」

 「全くですよ。とんだ無駄足になりましたよ。さぁ。目的終わったから帰った帰った」

 「少しぐらい休ませてくれよ……賽銭払っておくからさぁ」


 そう言って一紀は賽銭箱へ近づき、また500と書かれたコイン一個を手に取って入れようとした。と、すぐに体から危険信号が発していた。後ろの二人ではない。神社の奥からだ。


 「………この感覚……まさか!?」


 言い終わった直後、爆発が起き、中から神奈子と諏訪子が飛び出してきた。そしてそれを追いかけるかのように、一人出てきた。寝込んでいた早苗らしいが、見た目がどうもおかしい。


 「魔理沙の時と……同じなのか?」


 そう。影に侵食されているように黒くなりかけている。早苗、いや、偽早苗は一紀をゆっくりと見た。


 「へぇ……あなたは……」

 「………急いできたらお前の本物が寝込んでいたって言うオチで焦ってきてしまった不幸君だよ。ったく……本気で不幸だな」

 「そうですね。でしたら……」


 偽早苗はお祓い棒を具現化させ、一紀へと弾幕を放つ。すぐに一紀は避けながらあまり当たらないようにガードする。


 「………折角だ。ちょっと試してみるか!椛!体ごと力を貸してくれ!!」

 「え?」


 何か打開策でもあるのかと問うように椛は一紀を見た。一紀は手を差し伸べている。よくわからないが、今は乗ってみようと感じた。

 恐らくだが、今の自分だけでは勝ち目はない。だったらせめて力を貸しておかなくちゃと。


 「分かった!!」

 「よし!いくぞ!【共同心身】!!!」


 一紀と椛が手を握り、そして言葉を発する。光が二人を包み、すぐに晴れ、一紀のみがいて、髪の色が白、目は赤色と化していて、椛を思い出させる雰囲気だ。


 「あやややや。もしかして………」

 「そうだぜ。言っていたやつさ」


 一紀は落ちていた椛の剣と盾を装備する。と、ふと神奈子は後ろを向いた。


 「ほう?どうやらお客さんだね?」


 三人は後ろを振り向いた。そして文と諏訪子は驚いていた。その二人の様子を見た一紀は椛に問う。


 「おい椛。これって……」

 『……えぇ。にとり殿と雛殿。でも雰囲気が……』

 「あぁ。今いる早苗と同じ状態だな」


 二人も影に侵食されているかのように黒くなりかけている。一紀は後ろの早苗を見てそしてすぐに前を見た。


 「文。それに諏訪子と神奈子さん。早苗は任せるので、俺はこいつらをやります」

 「え。でも」

 「なんとなく分かるんですよ。大丈夫ですって」


 一紀はそういって空へ飛んで、にとりと雛も一紀を追いかけるかのように飛んだ。


 「……椛。行けるか?」

 『分かりませんが……ですが、できるだけ……いや、最大限に力を貸します』

 「あぁ。オッケーだ!!!」


 そして守矢神社境内。文たちと偽早苗が睨み合っていた。


 「……巻き込まれたからには仕方ないわね。あなたの偽物と言えども手加減はしないわ!」

 「早苗……待ってな!早苗は自分の体の回復に努めてくれよ?」

 「んじゃ、この不届き者の偽物に私達神様の力と鴉天狗の力見せてあげるわ!」

次回。こちらでは一紀&椛VSにと雛です。

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