神様とやらがいたらしかった世界
読んでいてあまり気持ちの良いものではありませんが、御目を通していただければ、幸いです。
かつてこの世界には、「神」という者がいたらしい。
その「神」様とやらは、俺たちの父親で、常に俺たちを助け、守ってくれたそうだ。週に一度は安息をくれ、過ちを犯した時には、怒ってくれたのだそうだ。
かつてこの世界には、「聖母」という者がいたらしい。
その「聖母」様とやらは、俺たちが悪いことをしても、慈悲を以て許し、厳格なる父、つまり「神」からですら守ってくれる。包容力を以て、常に俺たちの味方をしてくれたそうだ。
かつてこの世界には、「神の子」がいたらしい。
俺らは「神」に創造されたものらしいのだけれど、彼は正真正銘「神の子」で、
俺たちと共に、同じ高さを歩んでくれ、挫けそうになった時は、激励の言葉をかけ、俺たちを助けるために、あらゆることを、してくれたらしい。
・・・らしい。
しかし実際、年中に於いて、心休まる日はないし、そもそも今の時間もわからない。誰も「聖母」様のように味方なんてしてくれない。「神の子」のように励ましてもくれないし、ましてや、父なる「神」のように、正してくれる者は、誰一人としていない。
皆、自分のために生きている。俺たちに隣人愛?なんて欠片もない。
家の外に出れば殴られるし、盗まれるし、殺される。犯されるし、食われだってするかも知れない。
だからと言って、家の中に居ればいいわけでもない。家は焼かれるし、人は押し寄せてくる。
だから人は、自身を守るために、殺し合うしかないし、奪い合うしかない。
ナイフで指すし、AK-47も撃つ。グレネードは投げつけるし、場合によっては、RPG7を、人に向けて撃つこともある。
親にだって撃たれるし、自身の子供にだって刺されるし、祖父母にも爆破されるし、自身の孫にだって、人間に撃つべきではないもので撃たれる。
それが俺らの世界。
―――神様の、いなくなった世界。
―――何も正しくない世界。