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鎌倉へ来て少しの話

 私は今鎌倉で温泉のあることで有名な稲村ヶ崎の駅から10分程度のところに住んでいる。

 なぜここに暮らすようになったかは順をもって知らせていきたい。

これはさておき精神科にいき問診を受けている。

「金は必要ないんですが、顎の調子も治ってきたんで、そろそろ仕事をしたいと思っているんです。」

それが、今日の議題であった。

「仕事ね。そろそろいいんじゃないの?」というこの先生は   医といい、紹介の紹介で教えてもらった先生だ。

歳は30後半といったところか。背は低く私より少し高い170程度で短髪、肌は白く、少し中肉中背といったところだろうか。

目をあわして話すのが苦手なのだろうか。目を合わせても直ぐに逸らされる。まるで医者には向かない性格だ。

「んで、どこに働きたいと思っているの?」と続けざまに話す。

「よく考えてないんですけど、記憶力を増やせそうな仕事かバイトしたいとか思っています。」

手帳をみながら、目を合わせずに私も応える。

    は困った顔をする。

これは当たり前だ。私はこれでこの医者とは2回目の問診であるが、こっそり前の医者の書いた紹介状を見たときに酷なことが多々書いてあった。

精神不安定、アルツハイマー、仕事困難者云々、本人秘密事項。

そこまで自分自身も知らされていない、又は捏ち上げだか知らないがここまで散残に書かれていると壊れた顎も上がらない。

「いますぐ?」

「うん。」

   は真面目にもこの に関して、真面目に頭を悩ました。ちょっと待ってねと言って携帯を取り出し電話をしだす。

私は彼が電話をしだす間に手渡された少年誌を読みながら、彼が部屋に戻るのを待った。

10分後に帰ってきて、  はこういった。

「いいバイトあるよ!」

  はニヤニヤしていた。私はいきなりそんなことを言われたことに戸惑ったが、念に念を押すように  にこのことについて問いただした。

「一応、どんなバイトだか聞いていいです?」

「本屋。」

「んで、なんか裏でもあるんですか?」

ギクッ…て微かに小さな声。

「いい人だから、安心して」

その後、聞けたのはこのバイト先までの地図とこの本屋の店長が酒好きだということだけだ。

このあとの問診でクイズみたいなクイズみたいのをするからとこの話は流された。

一応病院だから、二回目だし軽く君の能力を把握したいとのこと。

私は何らかのテストを受けたが、ほぼと言っていいほどその問題を解いた。

唯一、昨日食べたものを聞かれた時、全くと言っていいほど覚えていなかったが、医はそれは一般人とそう違いないと言われた。

そして、質問はまだ続く。

「君は交通事故にあった日のことを覚えているね?」

「いいえ。あったのも小さい頃ですし、覚えていません。」

「君の中で」



次の日すぐに私は紹介を受けた古本屋へといくことにした。

地図に沿って歩いていく。線路を超えて海が見えると思ったら坂があり、妙にまっすぐだが、上下にうねり捻った道だ。

車と塀だけの道を抜けた住宅街に入る手前に紹介された古本屋らしき店が見えた。

店の外には売れるか皆無な古錆びた本や巻物がガラスの内側に飾ってある。

巻物に描かれている絵には『百鬼夜行』を想像させる妖怪が行列を作る。

外見はボロい。中の様子は節電中なのか暗い。

一見、東京神保町の一角にありそうなな雰囲気ではあるが、大きな相違点としてこの建物は木造一軒家ということに限る。

まさか鎌倉が古都で有名だからといって、そこまで合わせる必要はあるだろうか。

笑止千万になりながらも中に入る。

中に入ると店には本がきれいに押し込まれている棚がいくつもある。

4,5列あったが、どれも古本であったが一角だけ新しい本がある。

奥をみると新聞で顔を隠す男と思われる人間がいる。

足音に気づいたのか、新聞を少し下げて目を確認することができた。

しゃーせーという小さな声が店に響く。

「あの…  の紹介できた  文太です。」

「おー、はやかったね。」

男は新聞を閉じ私を見る。

怖そうな感じではないが、私が思う江戸っ子とでもいった風格な人間だ。

芝生頭、耳に鉛筆、新聞は馬鹿の馬が書いてある。

「いきなりだけど、少し面接とか平気か?」

「そりゃ、平気です。」

んじゃこっちにきてと、男が座っていたイスの後ろの  を開き居間へと進んだ。

その居間には本屋のオヤジとは思えないビールのポスターや昔の女優と思えるポスターが貼ってある。

卓袱台前の座布団に座るように勧められ、座ると急須にお茶を組みながら私に問いかけた。

「今までのバイト経験は?」

「今までに2度バイト経験があって、1つはコンビニで、2つめは居酒屋です。」と言った。

  はそうかと言い、私の前にお茶を置き、話を続ける。

「本はよく読むんか?」

「はい。一応好きな作家ぐらい読んでます。」

誰が好きなのという質問に対して私は何人かここ最近の名前をあげたが、彼は首を傾げてしまった。そのあと、幾つかの話をした。

作家のことを離れ、終いには訳の分からぬ会話へと繋がった。

気づいた時にメモを確認した。

村上→東京→慎太郎→鎌倉→官能小説

何度読んでも官能小説という言葉がどのように繋がったか不明だった。


「フランケンシュタインは知っているか?」

一度は「はい」と言ったものも、いった内容に言われた内容に気づき「はぁ?」と聞き直した。

「君はそれとよく似ている。」

良いこといったな。ドヤ!と言ったようまっすぐ見ながらそう言ってくる。

私は少し考えた。彼の呈したフランケンと比べ背も低い、髪は中途半端に長く、ましてはオールバックみたいでもない。肩幅も痩せ狭まっている。

「えーと、どこがですか?」

いつも間に私は前のオヤジと同じぐらいニヤニヤしていた。無論、私の顔は引きずっていたが。

「君にはこんな障害を思わせないほどの努力の才能があるに見える。この仕事は記憶力がなきゃ難しいかもしれんが、大丈夫だろう。」

全く意味がわからないが…

手にある手帳には『俺、フランケン、似、才能、障害』…

私はこのwardからある一つの学者の名前を思い出す。

「これってフランケンではなく、アインシュタインではないですか?」

オヤジは少し考える素振りを見せて、そのことを    した。



 そんなことで私のここでもバイトが始まった。

次の日、何をするのかも忘れてしまった。いや、オヤジに聞きそびれたのかもしれない。とにかく明日10時に来て欲しいとだけ言ってた気がする。証拠に新しいメモ帳には『明日10時』とも書いてあった。

後々気づいたが、心が動揺していたのは確かだった。そんな素振りを見せないように平然を保っていたが、帰り道に汗と共に動悸が襲ってきた。

あそこで大丈夫か。。



そこでのアルバイトというのはそこまで大変では無かった。

どうやって商売が成り立っているのか皆無であるが、3日に1度は学者と思われるようなオンボロな服かスーツをきた人間が来ては棚にある本を見て「なんじゃこれ」と言い、二の言葉は売って欲しいという。

売って欲しいという言葉を聞くと私は冊子を見て値段を言う。

その殆どが何十万という本でボロボロであった。

渋々金を出す人もいれば、安くしてくれや店長を読んでくれという人もいた。

その場合、後日連絡と言い渡すのが常だ。

店長とはいうとどこに行ったか分からない。

釣りに行ったのか、冷凍ボックスに魚や海山物をもって来る日もあれば、パチンコに勝ったのかネックレスやらお菓子をもって来る日もあった。

家に帰ると夕方あがろうという自分の分の夕食を作り出す。

年寄りの言うことは断れない。

流石に酒は断りつつ(帰りが自転車なんで)、あまりにも多すぎる揚げ物に手を付け、米を口に運んでから家に帰った。

食事中は、特に今日売れた本の冊子や雑誌の話や連絡待ちの人の詳細を話した。

帰り道は春先なだけあって寒くもなく、明るかった。

海沿いを走っていると、何の仕事をしているか分からない4、50の男が外車替わりの外国犬の散歩をしていたり、部活中の学生が列を作って走っている。

国道三号は絶えることなく車で埋まっていて、海には平日なのに既に泳ぎにきた人間が数人いた。

サーファーは江ノ島方面に多い。

東浜海水浴場の夕方時はサーファーの方が夕日を見に来た人より多いと言っても過言ではない。

今日、夕日を見に江ノ島にいくと、やはり彼らは波に向かって戦いを挑んでいた。








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