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短編

真夏のコタツ【企画競作スレ】

作者: まめ太

「だって。」

 みのりは頬を膨らませて、言い訳のようにそう言った。

「今、何月?」

 むすっとした顔をして、修司が問いかけた。


「8月。……だけど! 聞いてくれたっていいと思う!」

 みのりの言い分は、押入れが狭いせいでコレは片付けることが出来ないのだ、といった感じの言葉。

 彼女の部屋はワンルームの一室で、確かに収納スペースは少ない造りのようだった。しかし。修司から言わせてもらえば、自分が今現在住んでいる場所よりは格段に広いこの部屋で、自分はきちんと片付けられるモノが片付かないのはおかしいだろう、という事になる。

「女の子は荷物がいろいろと多いもんなのよ!」

 それにホラ、こんなのお布団が二組あるよーなモンじゃない、とまくしたてた言葉は、あまり修司の心には響いていないようだ。むすっとしたまま、軽いため息。

「あのなぁ、みのり。お前の部屋、入っていきなりコレがどんと目に入るわけだよな? 友達とかは、なんも言わないのか?」

「別に、さと子も香苗もなんも言わないもん。そゆコト言うのは修司だけ。」

 まるで自分の方が理不尽な要求をしていると言わんばかりの目で睨まれ、修司も自然と目が据わる。

「それはお前に遠慮してるだけで、本当は言いたいところをぐっと堪えてるんだとかは、思わないわけか? お前?」

「思わないもん。」

 まるでリスだ。修司は腹立ち半分、おかしさ半分で、どういう顔をしたらいいのか瞬時に迷う。結局、怒りきれもしない中途半端な表情でみのりを睨み返した。

 ぷいっ、と横を向いたみのりは、急に思い出したかのように表情を明るくする。

「あ! スイカあるんだ、スイカ! 食べようよ、修司。」

 そして、いそいそと立ち上がり、流しの横に据えられた冷蔵庫へと向かう。ワンルームのこの部屋は、狭い割に家賃が高い。それは一重に立地条件のためだ。

 日当たりが良く、閑静な住宅街で安全だし、駅にも近い。お嬢さんをターゲットにした可愛らしい外観で、三階建てのマンションは全室が入居済みだ。もちろん、女の子ばかり。この部屋は三階にあり、窓を開けると小学校の校庭が見える。子供たちの騒ぐ声が少し聞こえる程度で、本当に静かな場所だった。

 白い、真新しい壁紙。本当はうっすらとピンクで、小さな花をあしらった柄がプリントされている。

 スイカを切って置くみのりを無視して、修司はクローゼットに手を掛ける。

「あ! だめー! そこは開けたらダメ……!」

「痛って!」

 バラバラと漫画雑誌が降ってきて、修司の身体に直撃した。

「整理できねんだったら、捨てろ!」

「やだ!」

 頭にきた修司の言葉に即答。

「あー、もー、修司が悪いんだからね! ちゃんと入ってたのに!」

 突っ込んでた、の間違いだろうが!とは言わず、寸前で言葉を飲み込んだ修司に、またみのりはリスの表情で頬を思い切り膨らませた。

 俺が悪いのかよ!言いたい言葉をまた飲み込む。

「お前さぁ、よく言う、片付けられない女なんだからさ、自覚持とうぜ、自覚。」

「ちゃんと片付いてたじゃん! 修司がヘンな開け方したからでしょ!?」

「これの何処をどう見りゃ、片付いてるって形容詞が出てくんだよ!?」

 崩れ落ちた漫画の山、何が詰まっているのか得体の知れないポリ袋、出したところを見たことがない座布団セット。それらがぎゅうぎゅうに詰め込まれ、カオスになった空間を指して修司が怒鳴った。

「これ、要らないモンばっかりだろ! 捨てたら、コイツが余裕で入るだろうが!」

 バンバンと掌で乱暴に叩くと、乗せられていたスイカが皿の上で跳ねた。

「要らないかどうかはまだ解んないじゃん、もしかしたら後からまた読み返したくなったり、着てみようかなーなんて思ったり……」

「す・て・ろ。そんで、必要になったらまた買え。」

 古本屋をおおいに利用しろ、と語尾を強めて修司が言った。ばっさり。

 本類はまだいいとしても、洋服など流行があるのだし置いておく意味がない。さっさと処分したら、空いたスペースにまた新しい服が入るじゃないか、とそう思っている。いつも、片付ける場所がない、と言って買い物を諦めているくせに、理屈が解らない。

 みのりはパズルのように本を並べ、押し込んでいく。クローゼットの戸を、全体重をかけて閉めた。

「うんしょ!」

「それ、絶対、意味ないから。」

「べー、だ!」

 修司の嫌味な台詞に、みのりが舌を出す。


 スイカを頬張るみのりの顔は、やっぱりリスのようだ。

 一口ずつ適量で齧るのは修司のほうで、大口でかぶりつく割りに、みのりの方が修司よりも食べ終わるのは遅い。必死に合わせようとしているみのりは、ちらちらと修司のペースを計っているのだけれど、やっぱり修司のほうが早い。どう頑張っても。頑張っているのに。

 むぐむぐと汁気をこぼさないようにともがく彼女を、一足先に食べ終えた修司が眺めている。

 いつもこんな感じ。

「なぁ、みのり。」

「んーん?」

 なぁに?とでも聞いたのだ。

「結婚しよっか。」

 俺、お前のこと放置出来ねーわ、これ。

 リスの顔で、みのりが固まった。


 ごっくん。


 みのりの部屋が片付いたのは半年ほど後。

コタツの描写はなしで、書いてみた。

2chの、小説家になろう・お題スレではこゆ事をしてますー。

おいでませ。

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