神に会った男
「おじいちゃん、神様に会ったんだって?」
「ああ、会ったよ」
「すごい!ねえねえどんな人だった?神様って」
「そうだねえ じゃあちょいと昔話でもしようかね」
あれは 昔私が30才くらいでな 牧師をやっていたことだ
「神父様!また礼拝者様が」
シスターが駆け込んでくる
「また・・ですか 病院の方は?」
「もう見放されたと・・」
「・・そうですか では聖母様の前でしましょう」
当時私がいた町では 疫病が流行してね
ワクチンがすぐでたんだけど お年寄りには強い薬でね
かかってしまった人は 死ぬのを待つしかなかったんだ
そのとき見た人は老婆で かなり衰弱していた
「お待たせしました お祈りを?」
「はぃ 死ぬ前に 」
かなりかすれた声で老婆はしゃべった
「わかりました では手を合わせて」
お祈りの最中 終始老婆は震えていた
「汝に神のご加護あれ」
「神父様 どうも ありがとう ございました」
「いえ お体を大切に 心を生の執着で醜くなってはいけませんよ」
「・・・神父様 私は なにか間違った事をしたのでしょうか? 私は自慢ではないが真っ当な人間として生きてきました なぜ神は最後にこのような仕打ちをなさるのでしょうか?」
私は困った 理由は考えればつけられるが本当になぜか それを考えてしまうと
「あなたいまおいくつですか?」
「63になりました」
「これは神が与えた最後の試練です 見事乗り越えればあなたは神の元に召されるでしょう」
老婆は憂鬱そうな顔してうなずき 教会を出て行った
「可哀想ですね なぜ神はこのような仕打ちをするのでしょうか」
「真意は神に聞かねばならぬ 聞かねばわからん」
それからまもなくして あの老婆が亡くなられた
その最後は まるで毒を盛られたかのような無惨さだった
ベットのシーツは血で染まり 絶叫するかの顔で亡くなっていた
「母は 母は立派な人でした それなのにこの最後は 酷すぎます!!」
私とて悲しかった そして私は神を探しに出た
どうしても聞きたかった この真意を どうしても伝えたかった このむごさを
牧師の間で噂されていたノルド山脈 ここの頂上では神に直接声が届くらしい
ノルド山脈はけわしかった 人を寄せ付けない威圧感もあった
しかし私は進んだ 遭難と同じような環境だったが とにかく上を目指した
「着いた」
そこは本当に高かった まるで雲と同じとこに立っているみたいだった
私は息を切らしながら大声で叫んだ
「神よ!私の声が聞こえるなら!現れてください!私を導いてください!!」
私はしばらく叫んだ後 酸欠で意識を失った
「。。・・ぉぃ」
ん?
「・・ぉい」
私ははっと目覚めた
「俺を呼んだのはてめえか?」
上を見上げると 雲が集まって顔のようなものを作っていた
「はい!はい!そうです神よ! ああお会いできて光栄です」
私は童心に戻ったかのようにはしゃいだ
「ああうるさいうるさい まったくなぜそこの声はこんなにもよく聞こえるんだ」
神はいらつくようにしかめっ面になられた
「んで 何のようだ?」
「はい 私はあなたに真意をお聞きに参りました」
「真意だと?」
私は事情をお話しした
「ふーん まぁしょうがないんじゃね」
はい?
「疫病なんだろ?ならしょうがないだろお前ら生き物なんだから」
「いえ たしかにそうなんですが・・これは神がなされたことではないのでしょうか?」
「なんでわっしがそんなことせにゃならん できんこともないがな」
「そんな!あなたは神なのでしょう?全知全能なのでしょう?」
「そりゃ確かにそうだ しかしなぜ人間だけ特別視せねばならん?その疫病は自然が出したことわっしのせいではない」
「しかしなんの罪もない人々が苦しんでいます!」
「おまえの話だと若いやつらは助かっておるではないか それに罪ともうしたな罪などおまえらが勝手に作ったことだろうなぜそうも自分らが偉いと思える お前らはおまえらの枠を作っただけだろう」
私は混乱していた 信じてきたものが全て壊れたようだった
「ならば私はなぜここに来たのだ!?私が来た意味は?」
「そんなことはしらん お前が来たかったのだろう?それになにやら真実を知った上できにくわんらしいな お前らが勝手に築きあげた幻想に付きあわさんでくれ」
私は恥ずかしかった ”牧師”こんなものは脱ぎ捨ててしまいたかった
勝手に信じてしまっていた確かにそうだ だが私はだまされた感が否めなかった
「ならば私に!他人の命を救える力を授けよ!」
「だからわっしはバランスというのを一番に考えてこの星を作った それに干渉する力は与えることはできんな まあここまで会いに来てくれた事だし 貴様の一族が命を真っ当できるようにはしてやろう」
「私達だけが特別扱いですか!?」
「うるさいやつだな 言っただろうここまで会いに来た褒美だと わっしはほかの星を作るのに忙しいのだ そらこれでだいじょぶだろう さっさといけ」
そう言われた瞬間私は気を失い 気がついたら私が住んでいる町の近くで目覚めた
だが誰がこの事を信じるのだろう すでに大きくなりすぎた幻想
それを自ら壊す者など居るはずがない
「ただいま・・」
力なく私は教会のドアを開けた
「お帰りなさいませ神父様 無事でよかった毎日お祈りしたかいがありましたわ」
シスターがわたしに微笑む 心が痛かった
「それで神に会えまして?」
「ああ 会えたよ だが信じまい 誰も」
シスターが笑って答えた
「私は信じますよ 神父様の言うことですもの」
不思議に私は口を開き 全てを話した
そう 誰かに話したかった やりきれない気持ちをだれかに聞いて欲しかったのだ
神にではなく 人に
「そうですか・・ そんなことが」
「馬鹿らしいだろう?私たちは何を信じていたのだろう」
「私は神父様を信じていましたよ」
「ええっ?」
それから私 いや私たちは教会を去り 一介の農業家になった
私たちは結婚し 子供を二人産んだ
二人とも安産 そして子供ながら病気にはあまりかからず
医者に心配されたがずっと健康に生きた
だが・・・
「へー 神様って人間様みたいだね」
「そうだね だけど神様は強いお人だったよ」
「ちょっとおじいちゃん!なにを話してるの!変なこと子供に吹き込まないでください!」
「ねえママ ママは神様に会ったの?」
「神様はね いつか迎えに来てくれるのよ そのときに会えるの おじいちゃんの言ってることなんて信じちゃだめよ」
「私は感謝しているよあの神様に 子供達の健康はもちろん 全てのものの見方がかわった
死ぬ間際にもう一度いってみようかの あの自然の象徴 ノルド山脈に」