第3話
物語に順番違いがあったので修正しました
「……で、あるからしてだ、皆も登下校には気を付けるように。以上、ホームルーム終わり」
「きりーつ。礼」
お決まりの台詞と動作で朝の例のヤツが終了する。
なんつーか形式美ってやつですな。
いやー、壮観な景色ね。
「ちゃくせーき」
がやがや。
それはネクストタイムティーチャーがいらっしゃるまでのつかのまの時間。
俺達は刹那に生きてるZE、ヒャハー。
ごほんごほんっ。
「でさー、こえーな。通り魔だってさ、ヒッチィー」
「ヒッチィー言うな。Mr.カジック言うぞ」
「それは、やめて。手品なんて出来ないよヒトりん」
ぬはっ?!こっ、コヤツまさかっ。
「B・Hのアニキもまっさおだよ、お前ってやつぁ、これでは俺も態度を改めないといけないな」
「ちょ、おま、な」
「(こんなことで動揺するとは)だらしないね」
「ま、待て。はやまるな、俺は女が好きだ」
「(ま、まさか両刀?友としてあたたかく見守ってやるより)仕方無いね」
「ふう、わかってくれたか。ちょっと、した茶目っ気で……」
「(本当にその言葉は)歪みねぇ(のか)な(?)」
「申し訳ありませんでした」
………ふぅ、清々(すがすが)しい朝だ。
ちゅんちゅん。
あ、鳥が鳴いてる。
この季節にめずらしいわ。
そして、放課後。
「今日の部活は無しだっ」
開口一番に雪女さんはのたまう。
「例の殺人鬼というやつだなっ。全く許せん。そこでだ。我々で捕縛しよう。そうしよう」
雪女さんは即断即決だった。
「ということで、だ。取り合えずは、出現傾向を分析してみようと思う。紅女?」
「はい」
と秘書よろしく、紅女さんが地図を出す。
「傾向から鑑みて、今回はこの辺りじゃないかと思われます」
「ふむふむ、では、この辺りを巡回しよう。良いかねヒトりん?」
「何故にヒトりんっすか?」
雪女さんは、ふむ、と美しい顎に手をやり、一言。
「今、考えた。何と無くだ」
『武器は木刀で好いだろう。細身の重いやつがあるからそれで』
竹刀入れに入れて、と。
(なんか、本当に斬れそうな重みの木刀だなぁ)。
そして、現地に着いた。
ヤバイです。ガチです。
あれ、殺人犯じゃね?
人通りの少ない裏路地某処にナイフを持ったヤツが居た。
俺は何も出来なかった。
というか、何もさせて貰えなかったと言った方が佳かった。
雪女さんは突進してくるナイフ男を突きの一発で沈めた。
だが、その後、雪女さんが、
「オカシイな?」
と言って居たのが、耳に入った。
そのときは大して気が付かなかったが、それは、翌日にあらわれた。
目の前にナイフを持った覆面が居ます。
あれ?昨日雪女さんがやっちまわなかったっけ?
「耳と指どちらが良い?」
覆面は言った。
こういうときは、
「逃げるっ」
「それで、逃げて来たと、そうか、ないすです」
雪女さんはぐっと親指を立てる。
「あれ、俺はてっきりなんで逃げてきたと、叱られるかと思ったのですが?」
「ばか、そんなことして怪我でもしたらどうする。こちら、に得物がなかったら、逃げる。これは基本だ」
「そんなこと言って、自分が見掛けた場合は真っ先に捕まえようとするのよねぇ?」
紅女さんは言う。
雪女さんはムッとしかめっ面をすると、
「あたり前だろう?」
と、のたまう。
ここら辺が雪女さんの雪女さんたる所以である。
この前雪女さんが捕まえたヤツは狂言もしくは、模倣犯であることが判明していた。
雪女さんに言わせると、
「道理で、殺気が中途半端なわけだ」
だそうであった。
「買い被りでなければ、何人かやっているやつなら、それなりの殺気があるものなんだ」
雪女さんはこくこくとその綺麗な顎を、左手乗せ、右手を左肘に遣りながら、上下に揺らす。
「まぁ、中には、殺意も無しに殺せる人間も居るが、こういったタイプは厄介だから、出遭ったら逃げるように。でも、こういった手合いは気付いたらやられているケースが多いから。でも、雰囲気で、何となく、な」
こくこく。
「なんか、雰囲気が独特なんだ。鍛え抜かれたりすると、これに、近い感じになるが、強靭な感じ、それ以上になると、何かもう解脱してる感じ。私の祖父のような感じだな?まぁ、いい、つまりだ、赤ん坊に殺意は無いよな?稀にそんな感じの人間がいるのだ。
こいつは厄介だが、精神的に脆い、恐怖を与えてやれば、すぐに、コロリ、だ。
私がそうだったようにな。
つまりだ。
無に始まり、恐怖を知り、修行をし無に近い境地に達する。だが、これは完全な無ではない。色々な経験、試行錯誤、があって、それで、無意識思考とでも言う無だ。更に、それを鍛えてゆくその先にあるものが恐らく、私の祖父のような、境地なのだろうな」
うんうん。
ここで疑問。
「雪女さんは御祖父さんには勝った事あるんですか?」
フッ、と雪女さんは、珍しく自気味に笑う。
「懐かしいな、子供の私にも一切の手心を加えない人だった」
あれ?俺地雷踏んだ?
「ふふふ、そうかも」
紅女さんが言う。
「人の思考を読むの止めてクダサイ」
「ふふふっ、分かりやすいんだー?ひっちぃ」
「ふはははっ、君は誠に分かりやすいおのこだっ」
愉快、愉快、と笑う雪女さん。
うふふふ、と笑う紅女さん。
ずるいなぁ、この二人の笑顔は極上だから、なんも言えねぇ。
喩えからかわれているにしてもさ?




