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雪の地平  作者: ユキ
2/7

第2話

今日も今日とて眠い目を擦り擦り学校への通学路を行く。家から駅まで歩いて

電車に乗り、三駅過ぎると目的の高校がある地区に入る。

(朝の電車は空いてて良いな)

などと思っている。眠いけど。

つぎで目的の駅で下車して改札を出て駅から出る。そして少し歩く。すると

高校に着く。

入学初日からの部活勧誘は流石にどうかと思ったが雪女さんに言わせると、

「フハハハッばれなきゃに良いのだよっ日十夜君っ」

だ、そうである。


これは後から聞いた話なのだが、雪女さんは相当におもてになるらしい。

何やらファンクラブがある程だということ。まったく、ごついやつらが

そろいもそろって……どちらかというと体育会系のやつらが多いように思われがちだが、

どうやら文化部系にも結構いるらしい。文化部系、体育会系両方に好かれているんだね

雪女さん。


だがそんなにおもてになるのなら雪女さん目当てに部員が集まるだろうとも思う、

が、どうやら雪女さんが「気に入った」と言った人間しか部には入れてもらえないそうである。

雪女さんに俺のどこが良かったのか聞いてみるとニヤリと笑って、

「…身体…!だな」

「そうですか」

うわ~い身体っすか、まったく…

「その均衡のとれた身体は細いように見えて相当に鍛え込んでいるな? 

私の目に掛かれば服の上からでも誤魔化せんぞ?」


ふふり、と笑う雪女さん。

まったく、良く見ているなこの人は。

俺は家柄もあり子供の頃から鍛えさせられていた。まったく、なんせ親父が

ムキムキだからなぁ、とてもじゃないがあれは50近い男の肉体じゃねぇよ、と

何やってんだろうなぁあの親父。

――!何かと謎の多い人物である。

まぁ謎って言えばうちのお袋も大した謎持ちだと思うが、さらに謎と言えば

雪女さんも謎だが、あの沢谷さんも謎だよな、と結局俺の周りは謎人だらけ

ってことになる。なら俺も謎人の一員だったりするのかなぁ。


まぁ良いかな? だってそんな暴き立てるような真似をしても…ねぇ。

…と、考えていたら高校に着いたね。

やっぱり高校っていったら正門から入らないとね。


格技場に行くと例の如く鍵は開いていてまったく雪女さんが少し太めの木刀で

素振りをしている。ゆっくりと太刀筋をなぞるように素振りをしている。

雪女さんの剣風は柔らかいが芯がしっかりしている言うなれば柔剛というやつだろう。


毎日の弛まぬ努力がなければあそこまではなれない。

「…ふぅ、おや、日十夜じゃないか」

「おはようございます」

戸口の所で止まっていた俺は挨拶をし、格技場の内へ入る。


「ああ、おはよう」

ニコッと笑う雪女さん。

…まったくファンクラブなるものが出来上がるのもむべなるかなななんという

笑顔であろうか。

「おはようございます」

沢谷さんがあいさつをする。

「おはようございます」

俺もあいさつをする、まったく、先輩に先にあいさつをさせちゃあ駄目だよな。

と考える俺と雪女さんが、


「さあさあさあ着替えたまえ、防具を付けたまえ、そして手合わせと行こうじゃないか」

ああ、なんか楽しそうだなこの人。


まったく雪女さん、貴女の体力は半端無い。

そして、雪女さんの返し技も半端無い。面に行ったらまず払われる。そして

そのまま面。かといって雪女さんはいつも返し技を狙っているのかというわけじゃなくて

こっちが気を抜いているとすぐさま面が飛んでくる。じゃあ籠手かというと

気付いたら籠手を落とされて面だし、何しろ狙って行うと何にしろ看破されるから

無心の技じゃないと雪女さんには看破されるな、と気付いたのが最近。そして

無心の技を出そうとしてもなかなか単調になるのかってゆーか隙無いね雪女さん。かれこれ

三十分位じっとしてるけれど、どうにもこうにもな―




キーンコーンカーンコーン。


すっと雪女さんが構えを下ろす。

俺も下ろす。


「よし、日十夜っ急がないと受業に間に合わんぞっ。学生の本分は勉強だっ学べることは

何でも学べっ、そして自分でも考えるんだっ。まぁ、この姿勢は一生涯続けるべきだがなっ」

ふはははははっ、と雪女さんは言う。

確かにその通りだよなーと思うので、

「はい雪女さん」と了承する。

うむ、と雪女さんは言う。


さ~て、着替えるかな~、と雪女さんは更衣室兼部室に入ってゆく。

雪女さんの場合あれは誘っているとかそういうのではなくてただ単に素である。

ていうことなだけなので、俺も早く着替えようと思う。でも、どうも俺も

時頃な男子である訳で、どうも気になってしまうような感じが…!




じぃー。


うっ、なんか視線を感じるぞ?


視線を感じる方へ眼をやると口元へ手をやっている沢谷さん。

そうね、口元は見えないけれど、あれはにやにやっていうのが一番似合う感じだね。

それで眼が合ったとたん。

あらまぁ、て感じでどうしたの? 日十夜くんって感じに大人~な微笑。

ああこの人、うちのお袋と同じタイプかとそう直観。すると茶釜か、この人、とね。


眼が合ったとたん眼を離すのは流石に失礼だし、何より俺から眼を

合わせたんだから、何か言わないとなー、と。


「沢谷さん」

「紅女で良いですよ?」

「じゃあ、紅女さん」

もう~日十夜くんたらぁ、みたいな眼で見てくる。だがそれも一瞬。

「なんです?」

「雪女さんと紅女さんは長い付き合いなんですか?」

「長いと言えば長いですし、短いと言えば短いですよ?」

「えーとそれは…?」

「はい、とりあえずは一年間ですね。一年前の入学式のときからです」

「まさか紅女さんも…?」

「はい、そうですよ?」


「やられたんですか?」

「…!やられちゃいました(はぁと」


片手を頬にやってはぁうぅ~、なんて、回想しているような姿はヤベ、この人も

随分と萌えポイント指数の高い人だなんて思っちまうじゃねぇかよちくしょーい。


まぁここで色々聞きたいのも山々だが、何せ時間が差し迫っている。朝の

ホームルームに遅れる訳にはいかない。だって、ねぇ、時間厳守は学生生活の

基本ですよ?

手早く着替えると、道着袴をハンガーに掛ける。いやー便利便利。いやいつも

ハンガーに掛けてる訳じゃないっすよ? 袴、放課後も使うんで、帰りの時には

畳みまさぁ。


「では続きは又の機会ということで」

むふぅといった頬を紅女さんはすると、

「はいはい良いですよ?」



ガラガラガラ。


「むうっ、おや? 日十夜、まだ居たのかねっ? はっはっはっ、授業に遅れるよ?」

「あ、はい雪女さん」

「ほら、紅女もっ」

「はい~」

「では行くとするかっ」

はっはっは~なんて雪女さんは言う。

そして俺らは各自の教室へと向った。!


教室では学友の沢口可時道が俺を見るなり、

「おう、日十夜」

と話掛けてきた。

「やあ沢口」

とあいさつを返す。

「しかし、どうだい? 朝練は」

「んー、まあ雪女さんは強いね」

「ふーん、そうかあ」

「…」


「…」

「しかしなぁ、朝練ていうシュチュエーションは実においしい」

「そうかあ?」

まったくこいつめ、煩悩の塊だなぁ。喝と心の中で唱える。

「いやねぇ、だって二人の時間ですよ?」

「お前は何を言っているんだ。まったく、それに三人だぞ」

「えなに? お前まさか複数プレ…」

「お前は何だって直ぐそっちの方に行くかな? からかってるなら怒るよ?」


「ばっきゃろう。俺は大真面目だぜ? 真面目に馬鹿やってんだ」

「この歌舞伎者めっ」

「ふははは、そこまで言ってもらえて冥利に尽きるね」

「…」


「…」

「さて、そろそろ席に戻るかな? 仁同さんがやって来るぜ?」

「そうだね。では」

「ああ」


俺は席に座る。



キーンコーンカーンコーン。


そして仁同教諭がやって来るのだった。

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