第6話 (義妹Side)おのれアメリアめ‼①
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お義姉様を追放して、大事にしていたかも知れない婚約者まで奪い取って、私は胸の高鳴りを抑えきれずにいたわ!
ああ、なんて気持ちがいいのかしら!
あの義姉を追い出して、全てを自分の物にできるなんて天国よ!
暫くは家にある義姉の残したお香を売ってお金にして……そこまで考えて、マーヤ公爵夫人の依頼を思い出したわ。
「マーヤ公爵夫人嫌いなのよね……」
高飛車で何時も扇子で私を見る時は眉を寄せていて……。
私が姉の代わりに行くと、門前払い。
「アメリアを今度は連れてきて」だなんて、私を見くびってるわ!
本当に腹が立つったらありゃしない!
でも、義姉が居なくなったってことがわかれば、マーヤ公爵夫人からの依頼は無くなるだろうし、後はボチボチやっていけばいいのよね?
そう言えば、これからの依頼どうなっていたかしら?
セベクがいてくれれば、早く依頼は終わりそうだわ!
そう思って義姉の使っていた調香部屋に入ると、お香が全て無くなっていた。
いいえ、香木とかは、僅かに残っているわ。
「……え?」
本当に……なにもない。
もしかして、持って行っちゃったの⁉
私は慌てて注文の予定表を見ると、明日の依頼が既に十も入っていて、今から作っても間に合わないと焦った。
そこで、急いでセベクを呼んできてもらうと――。
「セベクも一応調香師でしょう? 調香出来るわよね?」
「かなり練度は低いよ……。アメリアの香りの足元にも及ばない……」
「え……?」
「君は?」
「……調香は苦手なの……」
「え? じゃあどうするのさ。この家の家業は〝調香師〟だろう?」
「そ、そうだけど」
「これだけの依頼をキャンセルしたら……大損害だぞ……」
「ええええ⁉」
「だってそうだろう? 教会からの依頼なんてアメリアは受けていたのか……」
「それって……どれくらい凄いの?」
「……普通なら、教会から個人の調香師に依頼なんて来ないレベル」
「うそ……」
「これは……相当不味いんじゃないか?」
お互いに汗が流れる……。
でも、どうすることも出来なくて……。
姉がいなくなったことを伝えて、その上で謝罪するしかないのだろうか?
私達の腕でやって、もし不評が出て責任問題になったら、そっちのほうが大変だもの!
「あ、姉が……いなくなったことを素直に話しましょう」
「そ、そうだな。そっちのほうが……アメリアに責任があるって事にして」
「そうよ、全ての依頼を姉の責任でキャンセルすればいいのよ!」
「は?」
「私達でも出来そうな依頼だけ、少しだけ受けておいて、それでなんとか」
「それで、生活していけると思ってるのか?」
「……今はそうするしかないじゃない。セベクだって腕がない癖によく言えるわね」
「腕がないって……」
思わず本音が漏れてしまったけれど仕方ないわよね?
それにしても、これだけの依頼を毎日受けていたんでしょう?
謝罪に行くのも一苦労なのよ……。
しかも、マーヤ公爵夫人に頭を下げるだなんて……絶対嫌。
「ねぇセベク」
「なんだよ……」
「マーヤ公爵夫人に、謝罪にいって? 私とっても怖いの……」
「そんな事言われたて困るよ。これは君の家の家業の事だぞ? 俺はまだ婚約者。この家の人間じゃない」
「セベク冷たいわ!」
「俺まで巻き込むなよ」
「そんな……」
「兎に角、謝罪ならひとりでしてくれ。俺はあくまでまだ婚約者であって、俺まで謝罪する必要はない」
「酷い……」
「酷くて結構。面倒事は全てアメリアに押し付けてたんだよ。全く、楽ができると思ったのに、誰だよ追放なんて言い出したクソ馬鹿野郎はよ~」
大きな溜息を吐いて、そんな暴言を吐いて出ていったセベクに、私は呆然としながら自分の失敗に気付いた。
姉は別に、セベクと婚約したくてしてた訳では……ないのかも知れない。
セベクは愛し合ってるって言ってたけど、本当は冷めきっていたのかも知れない。
本当は……義姉が私とセベクが影で浮気しているのを、喜んでいたのでは……?
「……だとしたら、まんまとやられたわ!」
セベクがあんな人とは思わなかった!
あんなに冷たい人だなんて思わなかった!
いいえ、私の前では義姉がいる時はとても優しかったわ!
それなのに、それなのに――‼
「義姉が居なくなった途端、何よあの態度! 信じられないわ!」
なんだか〝自分たちは真実の愛なんだ〟と騒いでいたのが馬鹿みたい!
そんなの、〝義姉がいて成り立っていた偽りの愛〟じゃない!
騙されたわ!
でも、まだ今なら婚約成立してないから理を入れることも出来るわよね?
急いでお父様にこの事を伝えて、婚約をなしにしてもらわなきゃ!
そう思ったら直ぐにお父様の部屋い飛び込み、セベクが私に言った言葉や、義姉がいたからこその彼の愛情だったのだと告げると、お父様は驚いた様子で立ち上がったわ。
「なんで今さら言うんだ! もう婚約の書類出してきたぞ⁉」
「ええええ⁉」
「最早どうしようもない……。諦めて結婚するしか……」
「そんな……お父様は私に死ねと仰るの?」
「そんなことは……。本当に離縁したくなったら言いなさい。なんとかしてあげるから」
「うん……うん!」
こうして、私の地獄は――まだ始まったばかりだった。
ああ、こんなことになるなら、姉を追放したほうが良いなんて言わなきゃ良かった。
でも、もうどうしようもないことなのよね……。




