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第三十三話

 ――そしていくつかのボス系の魔物を倒し、順調に階層を進めていくレオ達。だが、ある階層に来た時のことだった。そこは本当になにもない。床と柱だけ。以前のような淡水すらないのだ。一同は気をつけながら探索するが何も起こらない。次の階層に進むための階段もない。


レオは不意に柱に触った。その瞬間、レオの足元に魔法陣。


「しまっ!」


 ガナードが即座にレオの腕を掴む。だが同時に柱にも触ってしまった。ガナードにも同様魔法陣の範囲へと入ってしまう。そしてそのままどこかへと転移してしまった。アイラやフィアンが慌ててその柱に駆け寄る。しかし、アイラが隠しスイッチを押してしまった。ガコンと足元の一部がへこんだ次の瞬間、アマサカとフィアンに向かって手を伸ばしながら助けを求めた。


「フィアンさん! アマサカさん!!」



 しかし、アイラもそのままどこかへと転移。フィアンは慌ててアマサカの手を握る。


「ちょっ、アマサカどうしよう!! みんなどこか行っちゃった!!」


「落ち着け。これまでの傾向からこのダンジョンの制作者は即座に死んでしまうような仕組みは作っていない。必ず何か解決の糸口を用意している。このままここでみんなが戻ってくるかもしれないという可能性にかけるか、同じように転移するか」



 フィアンは不安がりながら、アイラが踏んだ床に近づいた。そして足をおいたのだが反応しない。そしてガナードとレオの柱にも手を触れたがダメだった。どうやら一度の発動のみという使い切り。おそらがガナードはレオとの一回という区分なのだろう。



「……おそらく転移することが、次に進むためには必ず必要なピースだろうな。仕方ない。どこかしらに触れて転移できるようなスイッチを探すか」


 アマサカとフィアンは手をつなぎながら至る所を触る。そしてある変哲のない壁にふれると二人にも魔法陣が発動する。


「やっとか。注意しておけフィアン」


「ん、分かってる」


 ぎゅっとアマサカの手を強く握る。




 目を覚ますと狭い部屋だった。フィアンが止まっている宿の部屋二つ分ほどだろうか。壁、床と触りまくったが変化なし。アマサカはこう推察した。


「時間による解放か、あるいはまだ何かしら移動するための仕掛けがあるのか」



 だが数時間経っても変化無し。フィアンは大声でみんなの名前を呼んだがこれもだめ。


「あはぁー……ここでアマサカと二人野垂れ死ぬのを待つしかぁ」


 ぴたっと止まる。それもいいかも? とかちょっと思ったが、アイラやレオ達を残してそんなことにはいかない。しかし、一旦はできることはすべてやりきった。アマサカは休憩しようと提案した。あれからも何度も戦っていたのだから再び魔力を回復させるために休憩しようということだ。



 二人は座って、マジックバッグからパンと水を取り出した。現状、自由に飲めるわけでもない。ストックはだいぶあるが、脱出できるまでにどれだけの時間がかかるか。完全に打つ手がないとなると、フィアンにもかなりの不安が襲いかかる。


「アマサカ、手……」



 フィアンは手をアマサカに向かって差し出す。アマサカはその手をやさしく握る。


「これでいいのか?」


「ん、いい。出会った頃よりは女心分かるようになってきたじゃん?」


「そうなのか?」


「そうなのっ」




 パンも食べ終わり、いよいよ寝るくらいしかやることがない。フィアンは恐怖からか、少し距離感がおかしくなる。アマサカにぎゅっと抱きつき、自分たちを巻くように毛布を被せた。


「……ねぇ、アマサカ。誰も居ないね」


「……? そうだな」



「前言撤回。鈍感。バカ」


「なぜ罵られているんだ」



 ふと、キスのことを思い出すフィアン。顔が赤くなり、顔を横に振ってその記憶を霧散させる。


「あのさ。アマサカ。もうすぐ年、越しちゃうよね」


「……そうだな。ここで話すか。少し長くなるがいいか? 俺がどういう人間なのか。どういう存在なのか。そしてまだそれは誰にも言わないでほしい。自分でもどうするべきなのかを理解していないんだ」



「分かった。全部聞く。初めてあった時に聞けなかったこと。全部――ここで聞くね」




 フィアンはより強く抱きついた。アマサカの心臓の音が激しくなる。きっとこれは私じゃない。過去への恐怖だ。


「大丈夫だよアマサカ。私がいるじゃない」



 アマサカは、一呼吸置いてから語りだした。




「俺は……この世界の人間ではない」









 ――――アマサカがまだ別の世界に居た頃。物心をついた頃のアマサカは山を駆けていた。親友とおいかけっこをしていたのだ。親友の名をダイチ。ダイチは持っていたナイフをアマサカに向かって投げ飛ばした。アマサカはそれを一切見ることなく首を少し動かすだけで避けた。しかもそれだけではない。それを手で掴み取るとダイチに投げ返した。ダイチは持っていた他のナイフでそのナイフを弾く。


「さすがじゃんかアマサカ!! この俺様の攻撃を見ないで避けるなんてよ!」


「はっ! お前こそ空中で投げたり弾いたり、やるじゃん!」



 ピタッと二人は動きを止める。空気が振動している。空を歩く巨人。二人は息を潜める。この世界において人間の数は多くない。そして生きている人間のすべてがこのように自分たちを無機物のように存在感を消すことができる。そうでなければ命がいくつあっても足りない。


 空を歩く巨人が去ると、二人はまたおいかけっこを再開した。日が暮れるまで遊び続けていたが、一人の女の子が二人の頭をぶん殴った。


「こらっ!! いつまで遊んでんの! 夜の神の方が大変なんだからさっさと帰るよ!」


 アマサカは頭をさすりながら言った。


「いってーよハナねぇ!」


 ダイチはハナさーんと喜んでいた。たんこぶのことを忘れてしまうくらい。それから三人は巨大な赤い鳥居の中をくぐる。その瞬間世界が変わる。森の中から突然平和な村の姿へと。人々が農作物をし、動物を育て、家をもつ。商売なんてものはなく、それぞれがそれぞれの役割を持って生活していた。ハナはみんなに挨拶していた。


「ただいまぁー。バカ二人つれて帰ってきたよー」


「おーハナちゃん。いつも助かるよ」


 返事をしたのは一人のじいさん。ダイチとアマサカは「ちぇっ」と言いながら素直にハナについていく。もっと遊んでいたかったのにと。そしてアマサカは夕飯までの時間、ある道場に顔を出していた。必ず毎日おこわなわれる習慣。父はアマサカに居合の構えをとる。アマサカが柄に手をおいた瞬間、その手を叩き折る。


「っだぁ!! いってぇ!!」


「甘い。そのくらい避けろ!」


「見えねぇよ父さん!」


 文句を行っている途中で父親からの蹴り。ボキッとアマサカの首が蹴り折られる。ゴロンッゴロゴロッとアマサカは地面に転がった。だが次の瞬間即座に起き上がる。


「死ぬわ!!」


「安心しろ。この結界の中なら死ぬことはない。多分な」


「多分で子供の首へし折んなよな!」


「この結界内は気が充満しているからな。それにこの道場の中はそれがさらに集中している。お前は自然と気を回復に向けることができる。つまり死なん」


「だからって骨折るとこまでやるか?」


「やる」



「あぁもういいっ! 今日は終わり!! かあさーーん!」


 アマサカは母親の元へ行くと抱きついた。


「父さんが首へし折ってきた!」


「あらあら。でも油断はしないようにしないとね?」


「……そんなこと言ったってさー。なんで俺ばっかいつもこんな訓練しなきゃならないんだよー。ダイチはしてねーじゃん」


「そうねぇ。一番才能があって、一番強くなれるからかしら。ダイチくんやハナが危ない目にあったとき、見てるだけでいいの?」


「それは……」


 アマサカは不満そうに目を逸らしながら道場に戻った。そして夕飯。天井に突き刺さっているアマサカをハナが引きずり下ろす。


「アマサカ、ご飯できたよー」


「ありがと。ハナ姉。いつか父さんも同じ目に合わせてやるわ」




 そして同じ食卓にもう一人の女の子。アマサカはその女の子から卵焼きを皿に移してもらう。


「はい、アマサカ。いっぱい食べてね。好き」


「ナチュラルに告白してくんなオトハ」



「えー? 本当に好きだもーん。えへへ。早く結婚しよー?」


「年齢考えような? 俺等ガキだからな?」



 幼馴染でおんなじ年齢の女の子、オトハ。いつもアマサカにべったりとくっつき好き好き愛してると連呼。しかし日中は自宅の神社にて巫女としての仕事に勤しんでいた。隙あらばアマサカに近づきキスをしようとする。というかすでに何度もされてしまってる。



「今日も一緒に寝ようね―」


「毎日寝てるみたいに言うんじゃねーよ。あっ、そういや今日空を歩く巨人見たわ。あれも神?」



 父親は黒豆に手を伸ばしながら言った。


「あぁ。山を作ったとされる神だな。だが地の神に嫌われ地を踏むことを許されなくなったとのことだ」


「へー。世界ってなんか、神の遊び場みたいだよなー」


「そのとおりだ。所詮はそんなものだ。我々の先祖も国を築くほどの民がいたが、今や心なき魂となって地獄の神に管理されている。安らかにその生命を終えることすらできん」



「まぁ人間とは何もかも規模感が違いすぎて……」


「仕方のないことだ。こうして我々は静かにこうやって暮らすしかないのだからな」





 ――夜。オトハはアマサカに抱きつきながらアマサカの顔を眺めていた。


「ねっ、アマサカ。キスしていい?」


「ダメ」


 問答無用だった。舌が絡み、アマサカは呼吸ができなくなる。必死にオトハを押して距離をとる。


「おいっ! 節度持ってくれ。というか無理やりするんならなんで聞いたんだよ! 俺はねーるーの」


「ん……えぇ。もうちょっと起きててもいいんじゃない?」


 オトハはよだれを袖でふきながらそう言った。


「眠いって。父さんに何度殺されかけたことか」


「あと一回だけ。ね?」


「……その一回何分?」


「百八十分」


「ナチュラルに睡眠時間三時間削れるじゃねぇか。唇腫れるわ」


「分かった、三分にするっ。それでいいでしょ?」


「なに譲歩してやった見たいな立場なんだよ。あっ、おい。近づくな、まっっ」


「んっ……んー♡」


 バタバタと暴れ、なんとか約束通り三分で離れてもらうことができた。朝から晩まで疲れると思いながらアマサカは目を閉じる。最近、オトハの見た目が変わってきた気がする。はっきりとどことは言えないが普通の成長ではない何か。身体が大きくなったとかではない。明らかにもっと異様なもの。だがアマサカはそれについて、検討もつかないため考えるのを諦めた。

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