表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジジとアカネ  作者: 紫苑
2/30

第二章:無口な新人とおしゃべりな先輩

「じゃあ、ジジさん、アカネさんのフォロー頼んだよ。隣の席だし、ちょうどいいでしょ。」


「了解で〜す!新人指導なら任せてください!」


出だしは元気よく。でも、ジジの内心はちょっとだけ複雑だった。


(うん、まあ……悪い気はしないけど。まさか、あの電車の人が職場で横に来るなんてね。)


横目で見ると、アカネはPCの初期設定を始めていた。表情は読めず、声もなく、まるで人間というより高性能ロボ。


ジジは気を取り直して、声をかけた。


「アカネさん、今ちょっと大丈夫ですか?簡単に社内の案内とか説明しますね。」


「はい。」


それだけ。無駄な言葉は一切なし。ジジはPCの画面を指しながら説明を始めた。


「僕たちは営業部の第二チーム。上司はちょっと声が大きいけど、いい人ですよ。あの奥が会議室で、その向かいが給湯室。お昼はその隣の休憩スペースで食べてます。」


「……」


「あと、コピー機はちょっと機嫌悪くて、急に紙を食べたりします。気をつけてください。」


「了解しました。」


(……無反応!やっぱロボだこの人。)


それでもジジはめげずに案内を続けた。どんなに冷たくても、会社はチームプレイ。自分が明るくしないと雰囲気が重くなる。


昼休み。


ジジはコンビニで買ったサンドとお茶を手に、休憩室へ。空いていた席に座り、スマホを眺めていた。


すると、静かにドアが開き、アカネが入ってくる。彼女は何も言わずに自販機でブラックコーヒーを買い、別のテーブルに座った。


(同じ席には来ないか……うん、そりゃそうだよな。)


食べながら、ジジはぼんやりと考えていた。


(普通さ、新人ってちょっと話すじゃん?こっちから聞かなくても、「この仕事ってどうやるんですか?」とか。「慣れるまで大変そうです」とか。何もないの?空気より静かなんだけど。)


つい独り言が漏れそうになったが、アカネの無表情な横顔を見て、黙って食事を終えた。



午後の勤務中。アカネは黙々と作業を進めていた。


ジジはふと、彼女の無表情な横顔を見ながらつぶやいた。


(……ここまで無関心なの、ある意味才能じゃね?)


タイプ音だけがリズムを刻む中、ジジの脳内ではナレーションが始まっていた。


(告白してフラれたの101回目、記念すべきノーカウント!これは恋愛じゃない、もはや修行だ!!)


一人で勝手に敗北宣言をしながら、ジジは満足そうにうなずいた。


(でも大丈夫……俺は拒否され慣れてる男だ。むしろ、拒否されないと不安になるタイプ。)


その時、机の上に置いたコーヒー缶が倒れかけた。


「おっと……危ない危ない。」


アカネが一瞬だけ視線を動かしたが、何も言わず再び画面へ戻った。


(うん、これが“冷ややかな優しさ”ってやつだな。たぶん。)


自分に都合よく解釈して、ジジは今日もポジティブに生き延びるのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ