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ジジとアカネ  作者: 紫苑
17/25

第十七章:研修という名の拷問

木曜日の朝。

社内のスケジュール表には、赤文字でこう書かれていた。


「13:00〜16:00 社員研修:コミュニケーションと協調性」


(……終わった。)


ジジはPCの前で絶望した顔をしていた。


「協調性……この字面、アカネさんと同じ画面に並べたら爆発するやつじゃん……」


午後。

会議室に集められた社員たちは、ランダムにグループ分けされていく。


そして、無情にも——


「第3グループ:ジジさん、アカネさん、ナオトさん、他2名」


(出たァァァァァ!!)


講師は外部から呼ばれた陽気な女性だった。


「はい〜!じゃあまずは“2人1組で、お互いのいいところを1分以内に3つ伝える”ゲームをします♪」


(地獄か!?)


ナオトが小声で囁く。


「ジジ、これ……逆に燃えるな。」


「いや、俺燃やされる側なんだけど。」


順番が回り、ついにジジとアカネの番。


講師:「じゃあ、ジジさんからスタート!」


ジジは緊張しながら言葉を選ぶ。


「えっと……アカネさんは、仕事が正確で、冷静で、あと……その、無駄がないです!すごく信頼できます!」


「ありがとうございます。」


即答。無表情。


講師:「じゃあ次、アカネさんどうぞ〜!」


アカネは一瞬だけジジを見て、淡々と口を開いた。


「ジジさんは……話すのが得意で、テンションが高くて……」


(おお?)


「……静かにしていれば、もっと魅力的かもしれません。」


「改善点やん!!」


会議室にクスクス笑いが広がる。


ナオト:「それもう“いいところ”じゃねぇ!」


ジジは椅子に崩れかけながら言った。


「俺のメンタル、研修じゃなくて検証されてる気がする……」


研修後。


ジジはふらふらと自席に戻った。

隣のアカネは、すでに通常モードで資料を読んでいる。


「……さっきの、“静かにすれば”ってやつ、ちょっと傷ついたんですけど。」


「本音を言う機会だったので。」


「……さすがです。」


ジジは小さく笑いながら、画面に目を向けた。


(でもなんか、こういう距離感も……悪くないな。)


その日の社内チャットに、講師からアンケートが届いた。


設問:「今日の研修をひとことで表すと?」


ジジの回答:


「公開処刑 ..... 微笑み。」


送信。

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