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75.契り 

ここから先は直接的な描写はありませんが、軽い性的表現が含まれます。成人向けではありませんが苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。



時計の針がてっぺんを指した。

ようやく馬車に乗り込んだあたしたちは、見送る参列者に手を振りながらセリウスの屋敷へと向かった。



ぐるりと取り囲む堅牢な砦を抜けて、高台の屋敷へと馬車は到着する。このものものしい屋敷が、これからあたしの家になるだなんて不思議でしかない。


セリウスに手を引かれ、布だらけの純白のドレスを引きずって降りれば、彼にひょいと抱き上げられた。


「わっ!?」


あたしだって身長がある上に、絹地が大量に使われている重たいドレスごと姫抱きにするなんて。

相当重いだろうと思うのに、彼は涼しい顔であたしを持ち上げ屋敷の中へと進む。


門番をつとめる騎士達に

「お帰りなさいませ、旦那様。そして奥様。」

と声をかけられ、自分が本当に彼の妻になったのかと今更驚いてしまう。



「ようこそ姫君。今日からここが貴女の城です。」


扉を潜り玄関に立った彼が、腕の中のあたしに微笑む。


「ほとんど留守にするけどな。」


そうあたしが笑い返せば、彼は階段を登りながら答えた。


「陸にいる間は手放したくないので、寝室は俺と同室にさせていただきました。」


「さあ、どうぞ。」


彼が扉を開けば、ひたすらに広い部屋に二人掛けのソファと組まれたローテーブル、まだひとつも本のない豪華な本棚、大きな木製のクローゼットが二つ。その隣に鏡台まで二つ並んである。

そして最後に、巨大なベッドが部屋の中心に一つ。


「まさか、ずっと一緒に寝る気かよ!?」

「ステラさんが同衾されたいようでしたので。」

「いやあれは冗談...、」

「その為に、もともと二部屋だった間の壁を壊して一部屋としました。これなら俺たちの体躯で過ごしても息が詰まらないでしょう?それと貴女は異国の本をよく読まれるようでしたので、本棚はご自由にお使い下さい。要望があれば増やしましょう。」

「話を聞けよ。」


あたしの反応を楽しんでいるらしいセリウスは、相変わらず微笑んでいる。


「まあいいや、もう体がくたくただよ。早く着替えて寝ようぜ。」


セリウスとのダンスだけでなく令嬢達もあたしと踊りたいのだと詰めかけたおかげで、順番待ちをする彼女達とひたすら踊ったのだ。もう体は限界である。


「何をおっしゃいますか。今夜は初夜ですよ。」


当たり前のように言ってのける彼に、あたしはぎょっとする。


「はあ!?今から!?無理無理無理!明日にしよう!」


そう叫ぶも、セリウスは笑顔のままあたしをベッドに降ろす。


「あれだけ俺の事を誘惑し焦らせておいて、明日ですって?俺はこれでも根に持っているのですよ。ようやく訪れた待ちに待った機会を、貴女はさらに待てとおっしゃるのですか。」


そう言って彼はあたしをそっと寝かせると、そのままあたしに覆い被さった。

黒髪がさらりと落ちてしなだれかかり、金の瞳があたしの瞳を愛おしそうに見つめる姿はやたらと艶っぽい。

な、なんだこの雰囲気。

あたしはやけに妖艶な彼の表情に、言葉を詰まらせた。


「い、いや、それは...悪かったと思ってるけど...!」

「ならば、よろしいですね。俺はもう我慢が効きませんので。」


そう言って彼はあたしに口づける。

唇を割って、彼の熱い舌先があたしの舌に触れ、絡められる。ゆっくりと、蕩かすような長いキスはあたしの感覚を麻痺させ、恍惚とさせていく。


そして彼の唇が吐息だけ逃して、もう一度。


息継ぎの間も与えられず、彼は時間をかけてあたしを溶かしていく。彼の手があたしの両手に重ねられ、指を交えると沈むようにベッドに押し付けられる。

両手を塞がれて、身体の力が抜けていく。

深く、深く、奥までなぞられて、

あたしは彼にただ応える事しかできない。


彼がそっと唇を離し、銀の糸がつう、と伝った。


この手を押さえつけながら彼は金の瞳で見つめ、熱い吐息と共にあたしに囁く。


「...どうか、“許す”と。」


彼の熱に当てられ蕩け切った意識の中、その囁きに従ってしまう。


「...許す...。」


その答えを聞いて、彼は嬉しそうにその目を細めた。


「幸甚に存じます。我が姫。」






———————





ふと、目が覚めれば彼のベッドの上。

しかし隣を見れば彼の姿はない。


窓の外はまだ暗い。

感覚的にはおそらく、いつも通り6時台だろう。


起きあがろうとして、下半身に違和感を覚える。


いっ...痛い...!


腰の奥がズキズキと鈍く痛む。

おそらくこれは、セリウスのせいだ。


なんとか時間をかけて、ずるずるとその身を起こす。


あいつめ、最初は「痛みはありませんか」とか優しげに触れてた癖に。だんだん余裕が無くなって来たかと思えば、あたしの身体をめちゃくちゃにしやがって!


その上、あの凶悪なモノ。

あんなにあいつのあれが、恐ろしいものだなんて知らなかった...。


別に男のアレを初めて見たわけじゃない。

若衆達がしょっちゅう酒に酔って脱ぎ、ぺちんぺちんと見せびらかすのを馬鹿笑いするのは日常茶飯事だ。


だからそれってなんていうか、男の股にぶらさがってる滑稽で情けないものって認識でしかなかったのに。


なのに、あんな、あんなものだったなんて...!


嫌だ無理だと怯えるあたしを抑えつけて、ひたすら攻め立てられて。


連続で襲い来るわけのわからない感覚に、枕にしがみついて「許して」と泣いたなんて、

絶対、絶対、誰にも言えない...!


そう両手で顔を覆った瞬間、部屋の扉がガチャリと開けられた。


「おや、起きていらしたのですか。」


涼しげな顔でそう言う彼は湯上がりなのか、上半身が裸のままだ。


その厚い胸筋と腹から下半身まで続く引き締まった筋肉に、彼がつい数時間前にその姿であたしを見下ろしていた事を思い出してしまう。


あたしは顔が熱くなるのを感じて、咄嗟に彼に悪態をつく。


「お、お前のせいで起き上がれないんだよ!初めてだったのに...、限度ってものがないのかお前は!」


それを聞いたセリウスはにま、と口の端を上げてあたしを見下ろした。


「そういう貴女も最後にはもっともっと、とせがまれたではありませんか。俺にしがみついて腰を浮かせる姿の可愛らしい事と言ったら。」


「!?」


な、なんだそれ!?覚えてない...!!!


狼狽えるあたしにセリウスは満足そうに笑って、あたしの隣に腰掛ける。


「お忘れなら思い出させて差し上げましょうか?鍛錬後で湯を浴びて来たのでご遠慮なく。」


彼がそうあたしの顎を持ち上げるので、あたしはばっとその手を払った。


「今痛いって言ってんだろ馬鹿!自分だけすっきりしやがって!」


ていうか鍛錬って、あの後数時間しか寝てないはずなのにこいつの体力はどうなってやがるんだ!


あたしの叫びにセリウスはふふ、と笑うと痛む腰にそっと手を当てる。そして次の瞬間、ぎゅうう!!と絞られるような痛みが走った。


「ッ痛う!?」


驚きと共に思わず叫べば、腰の痛みが消えている。


「炎症を治しました。これで栄養のある食事を摂り身体を少し休ませれば今晩にはまたできますよ。」

「また!?もう今日したからいいだろ!」

「晴れて妻となったのですから。俺と同衾して抱かれない日があると思ったのですか?」


セリウスの言葉にあたしは絶句する。

そしてにこにこと微笑む彼にあたしは俯いてぼそりとつぶやいた。


「...一緒に寝るの、やめる...。」


「船に帰る...。」


そう言うとセリウスは、あたしの顔を見て疑問符をその頭に浮かべた。


「まだ新婚一日目ですよ?それに俺は陛下の御前で貴女を勝ち取ったのですから、そんな事が許されるわけがないでしょう。」


「俺は貴女に思いを告げた時から“お覚悟を”と言ったではありませんか。逃しませんよ。」


そう言ってあたしの顎を持ち上げ、彼はキスを落とす。あたしは青くなってその場から立ちあがろうとする。


「嫌だ帰る!!こんなとこに居たら死んじまう!」

「俺が毎朝治すと言っているでしょう。そんなに怯えずとも、そのうち俺なしではいられぬ身体にして差し上げます。」


そう言って膝の上に抱かれ、ぎゅうと抱きしめられる。あたしはますます青くなって、ぜ...、と声を漏らし、そして叫んだ。



「ぜったいに嫌だ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」





あんなに誘っていたステラですが、若くて鍛えている王国一の剣士の体力を舐めていたようです。セリウス的には最中の反応に手応えを感じているので、どうしてステラがそんなに嫌がるのかさっぱりわかりません。この後も番外編などちょこちょこと作者が書きたいだけ続きます。

ちなみに需要があるのかはわかりません!

自己満足で書いています。

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