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僕らの青春(あおはる)  作者: 鰤金団
8/18

六話 後編

 頼子は春夫が青子に好意を持っている事を知らない。照光は、頼子に告白するほどに好感度が高く、青子が入り込むような隙は無いという事実。

 なので、次の女子組の作戦は、男子組には待ちに待った夢の時間という事になる。

 当然、嫉妬などという感情が生まれる訳が無い。

 失敗確定な作戦は失敗だと誰にも気づかれずに進むはすだった。

 しかし、途中で組み合わせを変える予定が、人の多さのせいで、そのタイミングが無いまま、四人は出店の終わりに到着した。

「立ち止まるタイミングは無かったけれど、色んな出店があったね」

「そうだな。青子達はあそこで休んでろよ。俺ら、飲み物買ってくるからよ」

 休憩用のベンチを指差す照光。

「ありがと、照光、春夫」

「二人共、ありがとうございます」

 気遣いにお礼を言う女子組。

「良いって。青子はオレンジジュースが良いか? 何時もの百パーのあったから」

「はい。何時もので」

「頼子はメロンソーダ?」

「お、分かってるじゃ~ん、春夫。お願いねー」

 互いの幼馴染の好みの飲み物を確認し、男子組は一度離れた。

「青子、進展具合はどんな感じ? 私達はけっこう普通に喋れるように戻ったよ。おかげでね」

「良かったです。私も、久しぶりに照君とたくさん話せて嬉しくて、嬉しくて」

 互いに良い方向に転がっていると、はしゃぐ二人。

「でも、まだ足りないかな」

「あ、頼子さんもそう感じてますか? 私も、前と同じというだけで、前進したという感じがしないんですよね」

「うんうん。これはもう一歩踏み込むしかないよね」

「そ、そうですね。頑張りましょう」

 二人は、更に責めて行こうと励まし合った。

「なら、俺達と頑張らねぇ?」

 二人の知らない異性の声。

 振り返ると、本当に知らない二人組の男が居た。しかも、明らかにガラの悪い相手だった。

「だ、誰ですか!?」

「あんた達に興味無いんですけど」

 立ち上がり、ベンチから距離を取る頼子達。

「おいおい、冷たい事言うなよ~」

「そうだぜぇ。こんな日に女二人なんて、相手探してたんだろ?」

 一方的な決めつけで、ベンチを越えて近付いてくる男達。

「違うし。相手なら居るし」

「そうです。今は待ってるだけです」

「なら、そいつらは馬鹿だな。こんな上玉から離れるんだからなぁ」

 下卑た笑みを浮かべる男達。

 ドンドン距離を詰め、女子組の手を掴もうとする男達。

 このままでは強引に連れて行かれる。恐怖に、二人は悲鳴も出せなかった。

 そんな状況の頼子と青子の視界に、二つの影が通り過ぎる。

 その影は、男達も一緒に二人の視界外へと連れて行った。

「いくよ」

「走るぞっ」

 その声は春夫と照光だった。

 春夫は頼子を、照光は青子の手を取り、この場から全力で走った。

(今まで喧嘩なんてしなかった春夫が私のために……)

 暴力なら振るわれる方な春夫が、飛び蹴りで自分を助けてくれた事に、頼子の胸は全力疾走とは違う高鳴りを感じていた。

 それは、青子も同じだった。

(私のためにこんなに必至になって動いてくれた……)

 普段は自分を遠ざける照光が、もしもの時には率先して助けに来てくれた。

 女子組は、この事実に相手への好意を改めて強く認識していた。

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