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僕らの青春(あおはる)  作者: 鰤金団
7/18

六話 前編

 お祭りデートの日がやって来た。待ち合わせの場所は会場入り口。

 浮かれつつ向かう春夫。

(あ、あれはっ!?)

 人ごみの中、青子の姿を見つけた春夫は、浴衣姿の彼女に心を射貫かれた。

 普段から清楚で男子人気の高い彼女の浴衣姿は、古来から言われる美人を体現しているようだった。

 その証拠に、通り過ぎる男連中は、青子を通りし過ぎる時には必ず視線を向けていた。

(やっぱり、星田さんは綺麗だな)

 校内の男子以外からも視線を集める彼女とデートが出来る事を光栄に思う春夫。

 しかし、彼女に合わせていたフィルターを切り替え、その周辺も認識した時、その隣りに居た人物の存在に、春夫は自身の目を疑った。

 その人物の存在に驚き、受け入れられず、立ち尽くす春夫。

 そんな状態の春夫の姿を青子は見つけると、手を振った。

 普段見る事の無いアグレッシブな姿に我に返る春夫。

 その珍しい行動が自分にだけ向けられているという優越感はあったが、絶縁状態の頼子の姿を見ているため、素直に駆け寄る事が出来ない。

 青子は、二人の気まずくなる事は理解していた。

 頼子の手を取り、二人で春夫の元へと近付く。

「ちゃんと会えて良かったです。丸山君」

「う、うん。僕もだよ、星田さん。それで、その……隣りのは?」

 名前すら呼ばれない事にショックを隠せない頼子。言葉が出ない彼女の代わりに、青子は事情を説明した。

「この間の件はお互いにすれ違いがあったんです。私達は仲直りしました。今日は、仲違い中の二人にも仲直りしてもらいたくて、彼女も呼んだんです」

 春夫は二人が仲直りしても、自分と頼子との関係にはまだ深い溝あると、心の中で考えていた。

 けれども、余計なのが居たとしてもせっかく好きな人が誘ってくれた。だからここで台無しにする訳にはいかないと、浮かぶ言葉を飲んだ。

「おーい。待たせたなー」

「最後ですよ、照君」

「悪い悪い」

 照光まで合流してきた事に、春夫は驚いた。

「昔からの同級生同士でと思って呼んだんです」

 青子は春夫に笑顔で事情を話した。

「そうなんだ。確かに、こんな風に一緒に動くなんて無かったもんね」

 二人きりでのデートを想定していた春夫は取り繕ってはいたが、その動揺は激しかった。

 表面上は冷静で居ようと努める事に必死で、ちゃんと会話として成立出来ていたのか分からないほど。

 こうして、春夫にとってはまさかのお祭りダブルデートが始まった。

「ね、ねぇ、春夫。離れないでね」

 この機会にと、積極的に話しかける頼子。

「ん? そうだね。こんな人ごみの中ではぐれたら大変だもんね」

「だよね? だよねっ。腕でも掴んじゃおうかな」

 春夫の腕に頼子が手を伸ばすも、春夫はこれを押し止める。

「お互い、そこまで子どもじゃないでしょ」

 春夫の中ではまだ蟠りがあり、頼子への態度は冷たかった。

 しかし、頼子はそれでも嬉しくてしょうがなかった。あれほど避けられていて、これまでの人生の中で一番長く声を聞けなかった春夫と、またこうして会話が出来ているのだから。

 頼子は、今なら大丈夫と、積極的に春夫に話しかけ続けた。

 その時の春夫の視線は、二人ほど挟んで前に居る青子に向けられていた。


 

 一方の頼子も、今日ならと考え、照光と言葉を多く交わしていた。

「なんで頼子じゃなくて、お前が隣りなんだよ。頼子を呼んだって言うから、来たんだぜ」

「まずは落ち込んでる頼子さんに元気になって貰わないと。そうでしょ?」

「元気にする役目が俺なら文句は無いぞ」

 一途さには惹かれるものの、その方向が自分では無い事に、青子は傷付く。しかし、表に出さない事には慣れていたので、表には出さず、意地悪く照光に言葉を返す。

「丸山君との三人の関係が悪いままでも良いんだ? 照君、そんなに冷たい人だったんだ」

「ばっ、ちげーよ。そんな訳無いだろ」

 一番付き合いの長い春夫との関係を持ち出され、否定する照光。

「だよね。照君はそんな事しないもんね」

 青子は、久しぶりに楽しく照光と会話が出来た事を本当に嬉しく思っていた。

 青子も頼子も、心の中では第一関門を突破したと感じていた。

 女子組は、今回のお祭りのために、事前に作戦を練っていた。

 最初は四人で居る状況で行動し、今までの関係で交流をする。

 その後に、組み合わせを変えて交流を深めていく。

 こうする事で、春夫や照光の心にしこりを残し、嫉妬させ、自分達に視線を向けさせようと画策していた。

 しかし、この計画は穴だらけだった。

後編は7月6日の18時に更新します。

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