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僕らの青春(あおはる)  作者: 鰤金団
15/18

十話 前編

「二人とも、少しお話を聞いてもらえますか?」

 登校中、何時もの合流する場所に一人で待っていた青子。

 足を庇う様子に心配する春夫達だったが、それよりも聞いて欲しいと彼女が言った。

「話って何? 青子」

「その足と関係があるの? 星田さん」

 二人とも只事じゃないと感じ、真剣な表情だった。

「今日、照君は風邪でお休みします」

「照光が風邪? なら、放課後にお見舞いにいかなくちゃ。ねぇ、より――」

 自然に頼子に声をかけ、二人の関係を思い出し、言葉に詰まる春夫。

「照光も風邪になるのね」

 春夫をフォローするように言う頼子。

「と、表向きにはなっています」

 青子の言葉に、二人は首を傾げる。

「表向きって、実際はもっと重いという事?」

「入院してたりするの? 青子、大丈夫?」

 頼子が青子に寄り添い、心配する。

「その……。心の方が弱っていて……。私では照君の力になれそうになくて……」

 声を震わし、涙を零し始める青子。

「分かったよ。じゃあ、僕が行って話を聞いてくる。男同士の方が良い話かもしれないしね」

 頼子は関係的に一緒には行き辛いだろうと、春夫が言った。

「うん。春夫、頑張ってね」

 頼子の声援に、春夫は頷いて応えた。



 放課後になり、春夫は青子と共に照光の家に向かった。

「頼子、一人で大丈夫かな?」

 一度家まで送ると提案した春夫だったが、頼子は照光の所に急いであげてと提案を拒んだ。

「やっぱり、頼子さんの事、大事なんだね」

 春夫の口から漏れた心配に、青子はフフッと笑う。

「い、いや、大事とかじゃなくて……。ほら、幼馴染だしさ。何かあったらって思うでしょ?」

 焦りつつ、そんなつもりは無いと誤魔化す春夫。

「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。それに、頼子さんにこの事を話したら、絶対に喜ぶよ。だって、頼子さんは丸山君の事、好きだから」

「そ、それは……」

 先の告白の事を思い出し、赤面する春夫。

「実は私達、同盟を組んでたんだ」

「え? 同盟?」

「そう。同盟。頼子さんの恋に協力するって同盟」

「それ、一方が得するだけじゃない?」

 話だけ聞くと、青子には何の旨味も無い話にしか聞こえないと、春夫。

「そうでも無いよ。同盟を組んだから、四人で遊ぶ事が出来たもの。楽しい事を沢山出来たから」

 青子の情報は、小中高と、黙っていても入ってきた。

 彼女は目立たないようにと地味を維持しているけれども、素材の良さを隠しきれていなかったからだ。

 春夫は、青子の悪い噂も知っていた。しかし、自分がどうにかする事は無理だと思っていた。

 何もしても、男子という事で彼女の悪評の信憑性が増すだけだったから。

 もしも青子が頼子のように振舞っていたのなら、表立って噂の否定も出来ただろう。しかし、青子は目立たない事を選んだ。それは周囲に居る人の力にも関り、状況を変えるほどの力にはならなかった。

 なので、青子は年々数が減り、一人になっていった。高校に入って、連鎖は断ち切れても、既に身に付いてしまった性質は簡単には変えられない。

 故に、青子は孤立していた。

 そんな中でも、噂を知る頼子と打ち解ける事が出来たのは、頼子が青子と同じく幼馴染に恋心を抱き、そのために悩んでいた事に気付けたため。

 春夫は、女子組の本当の繋がりについては分からなかったが、青子の発言を思い、言葉通りにそれが良かった事なのだと思った。

「そうなんだ。頼子と青子さんって正反対って感じがしてたから、一方的なのかと思っちゃったよ。それが苦にならないなら楽しいって思える奴だとは思うんだけどさ。ほら、頼子ってグイグイ行くタイプだしさ」

 青子は、色々と言いつつも頼子の事を一番理解し、心配しているんだなと、春夫の事を見つつ思った。

「それとさ。青子さんは、今みたいに柔らかい感じで行くと良いと思うよ」

「え、私!?」

 急に自身の事を言われ、驚く青子。

 振り返ると、二人で帰っている間中、照光と話している時と変わらない、本来の口調に戻っていた事に気付いた。

(何時の間にか、丸山君の前で身構えなくなってたなんて……。照君の事で頭がいっぱいで、そこまで頭が回らなかったのかも……)

 今までになかった失敗に、青子は困惑していた。

 そして、気付いていなかった。春夫に対し、何時の間にかそれだけ心を許していた事を。

続きは18時から!!

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