竹刀の剣士、異世界で無双する ハルミ編 その66
みなさん、お久しぶりです。このお話を投稿する際に、操作を誤っていたようで、別のお話として投稿されていました。再度、投稿しなおします。
ハルミたちも2年生になりました。新しい仲間ができる予感です。
66 2年生
3月の少年剣道大会は、結構注目されたらしい。日本全国初の1年生チームによる団体戦優勝が話題を呼び、地元のローカルテレビのニュースで取り上げられた。あたし達の試合の様子や、表彰式の様子がテレビで放送された。試合の時には、テレビ局のカメラは来ていなかったはずだ。
「フフフっ。わたしたちの撮影した動画を売ったのですよ。よい小遣いになりました。」
クミさんたちが、黒い笑顔をしていた。ちなみに、新しい絵や、フィギュア、物語の準備は着々と進んでいるらしい。
そのあと、全国誌の「現代剣道」や「剣道ワールド」からの取材依頼も来たらしい。でも、剣持先生が
「選手は、小学校1年生じゃ。取材を受けることが、選手の人間形成のためになるとは思えぬ。」
と、断ったらしい。
そのおかげで、あたし達は妙に騒がれることもなく、新年度を迎えることができた。
ちなみに、少年剣道大会の次の日曜日に、隣の松尾市で段級審査会があり、ユカたちが受検した。結果は、ユカとナナが3級、ミオとサキが4級に上がった。実力では、ユカもナナもミオもサキも1級に近いと思うけれども、剣道の段級に跳び級の制度はないため、3か月ごとに一つづつ級をあげていくしかない。
「まあ、1級になっても、中学生にならないと初段にはなれないから、ゆっくりでもいいんだけどね。」
「・・・ん。・・・役に立ちたい・・・。」
「そうよね~。早く~強くなって~、ハルの~役に~立ちたいよね~。」
「そうなのです!早くハルに追いつきたいのです!」
みんなが、話してくれた。
4月6日は、午前中が2~6年生の始業式。あたし達5人は、2年生でも、同じクラスになった。クミさんたちは6年生になった。やっぱり3人とも同じクラスだ。
「また、同じクラスで、嬉しいよ。今年もよろしく。」
ユカが優等生な挨拶をする。
「まあ、あたし達がそろうのは、運命なのです?」
ミオが、感想を言う。ちなみに、担任の先生も、1年生と同じ三上先生だった。
「皆さん、初めましての人もいますね。担任の三上です。今年も、楽しい生活を作りましょう!」
そんな挨拶を聞いて、午前中の始業式は終わった。
午後からは、新入生の入学式だ。今年は、美穂さんの弟の拓真君が入学してくる。
「いよいよ、ぼくも小学生だ!姉ちゃんたちの伝説に負けないようにしないと!」
始業式の後、拓真君が、やたら張り切っているって、美穂さんから聞いた。拓真君の中では、あたし達は伝説になっているらしい。
「拓真が、妙に張り切っているのが、怖いのです。」
美穂さんが、あたし達に拓真君を見張っているようにとお願いをしてきた。
「1年生と、2年生は同じフロアだけど、教室が違うから、いつも見張るのは無理だよ?」
あたしが、美穂さんに答えた。
「えぇ。分かっています。できる限りでいいのです。拓真が、何かやらかしそうな気がするのです。」
美穂さんが、あたし達に頭を下げた。
「分かりました。休み時間には、できるだけ拓真君の近くにいるようにします。」
ユカが答えた。
そして、次の日の休み時間。拓真君が、2年生の教室のドアから顔をのぞかせた。
「あっ!いたいた。おーい!ハル姉ちゃんたちー!」
「やあ、拓真君。どうしたんだい?」
一番近くにいたユカが、相手をする。
「姉ちゃんたちに、お願いがあるんだ。ぼくを、アスレチックに連れて行ってよ。」
「連れていくぐらいは、構わないけど。どうしてかな?」
「姉ちゃんたちは、全員、高学年用をクリアしたんでしょう?僕も早くクリアしたいから、まずは、下見に行きたいんだ。」
「それで、クリアしたわたしたちに案内を頼むと?」
「そうなんだ。ねぇ。お願いだよ。」
そう、あたし達5人は、去年の12月に、全員高学年用のアスレチックをクリアしている。その時は、クミさんたちが、写真やイラスト付きの壁新聞を校内の全フロアに貼ったので、結構話題になった。
「いいんじゃ~ない~かな~。」
ナナが賛成する。
「じゃあ、わたしたちが、お手本を見せるのです!」
ミオが張り切りだした。
そして、みんなで運動場に出た。
「アスレチックは、グランドの南の端にあるよ。こちらから見て、低学年用、中学年用、高学年用と3つ並んでいるんだ。今日は、初日だから、そんなに混んでいないかな?」
ユカが、拓真君に解説している。
「・・・ん。・・・そうでもない・・・」
サキが、指さしたところは順番待ちの行列ができていた。
「なに?これ?すごい行列。どういうこと?」
「・・・ん。・・・多分・・・わたしたちの・・・せい・・・」
「サキの言う通りなのです。わたしたちが高学年用をクリアしたって、学校中に宣伝されたから、みんな興味を持ったのです。」
多分、ミオの言う通りなのだろう。今までにないくらいの、大行列におののきながら、近づいてみる。
「この、行列じゃあ、あたし達にまで、順番は来ないね。あきらめようか?」
あたしが、拓真君に話しかける。
「あぁ~!ハル様たちだ!」
「ニンジャ・ガールズだ!」
「サムライ・ガールズだよ!」
「ユカ様も、ナナ様もいる~!」
「ミオ様や、サキ様まで~!」
あたし達に気が付いた子たちが、大声で、指さしてくる。みんなキラキラした目で、見つめている。
「なに?これ?どういうこと?」
「お姉ちゃんたちの~、話では~、ファンクラブの会員は~増えてないはずだけど~?」
ナナも、戸惑っている。
「会員にまではならなくっても、わたしたちの名前と顔は、よく知られるようになった、というところかな?」
クミさんたちの壁新聞と、3月のローカルテレビの影響だって、ユカが話してくれた。
「ちょっと、ユカ!冷静過ぎない?」
「えぇ?大丈夫だよ。何かされるわけじゃないんだから。」
「そりゃ、そうだけど。騒がれるのは、なんか・・」
「気にしないことだよ。ハルも、わたしたちも、それだけのことをしたんだよ。」
ウィンクを決めるユカが、かっこいい?・・・って、そうじゃない!
「この行列では、拓真君に見本を見せることができないのです。今日は、あきらめるのです?」
「えぇ~?そりゃないよ~!」
ミオの説得に、拓真君が不満の声をあげた。
「あ・・あのぉ・・・。ミオ・・様・・?」
行列に並んでいた女の子が、おずおずと声をかけてきた。ストレートなロングヘアーを、ツインテールにした、かわいい子だ。
「はい?どうしたのです?」
ミオが振り向く。
「今、ミオ様が見本を見せるって聞こえたのですが・・・」
「はい、なのです。今年入学した、拓真君にアスレチック攻略の見本を見せるつもりだったのです。でも、この行列では、無理なのです。」
「あの・・・わたくし達も、見てもいいですか?」
「それは、構わないのです。でも、すごい行列で・・・」
「ちょっとお待ちください!」
女の子は、ミオの返事を聞くと、行列の方に走っていった。
「みなさーん!聞いてくださーい!ミオ様たちが、アスレチック攻略の見本を見せてくださいます!みなさんも、見ていいそうでーす!さあ!場所を空けてくださーい!」
女の子が叫ぶと、あちこちから、声が上がった。
「おーい!サムライガールズの皆さんが、見本を見せてくれるんだって!場所を空けろー!」
「サムライガールズの、見本だぞ!見たい人は、ここに集まれー!」
何人かの声とともに、みんなが移動し始めた。
「さあ、これで、場所ができました。ミオ様、わたくし達に見本を見せてください!」
さっきの女の子が、ニコニコしながらやってきた。
「そ・・それは、いいけど。あなた、なに者?」
あたしは、思わぬ展開にドン引きだ。
「これは、自己紹介が遅れました。
わたくし、柳沢 玲香 と申します。皆さんに昨夏にお世話になった岩崎家の本家筋にあたります。皆様のおかげで、柳沢家も、岩崎家もひどいスキャンダルをまのがれることができました。一族郎党、皆様には感謝しております。」
そう言って、玲香さんはひざを折り、胸に手を当てて頭を下げた。
「・・・ん。・・・柳沢?・・・聞いたことがある・・・」
「柳沢?・・・あっ!昔のこの国のお殿様じゃない?」
ユカが叫んだ。
「はい。その柳沢です。でも、今は身分制度はありません。わたくしも皆さんと同じ安和北小の子どもです。わたくしのことは、玲香と呼び捨てにしてください。」
「そんな、初対面でいきなり呼び捨ては、できないわよ。玲香さんは何年生なの?」
「わたくしは、1年生です。皆さんより、年下なので、お姉さまとお呼びしても、よろしいですか?」
「それは構わないけど・・・じゃあ、あたし達は、レイカちゃんて呼ぶことにするわね。」
「はい。ありがとうございます。では、ミオ様。そろそろお支度の方を・・・」
そうだった。あたし達は、アスレチックの攻略を見せるんだった。
「じゃあ、時間もないし。わたしがちゃっちゃっと見せて来るのです。拓真君。よく見ているのです?」
「低学年用はミオに任せるとして、中学年用はサキかな?高学年用は、わたしが見せようか。」
ユカが、てきぱきと配置を決めた。
ミオが低学年用、サキが中学年用、ユカが高学年用をクリアするところを、みんなに見せた。見せるための技なので、ところどころ解説をしながら、わざとゆっくりと行った。
「これで、見本はおしまいです。わたしたちと同じようにクリアする必要はありません。その人その人のやり方があると思います。でも、うまくいかなくても、あきらめないでください。あきらめずに挑戦し続ければ、きっとクリアできます。」
ユカがそう言って頭を下げた。観客から、大きな拍手が起こる。いつの間にか、先生方も見に来ていた。
「なるほど、身長が足りなくても、あの方法でカバーすればいいのか。」
「子どもの柔軟な発想には、驚かされますなぁ。」
「それにしても、すごい身体能力だ。」
先生方が、感心しながらつぶやいていた。
新しい仲間の、柳沢令嬢の登場です。これからの活躍に期待しましょう。