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竹刀の剣士、異世界で無双する ハルミ編 その51

「竹刀の剣士、異世界で無双する」の第2部です。ヨウスケの娘のハルミとその周りの人たちの活躍をお楽しみください。

 この小説は、毎週木曜日に更新する予定です。

51 年始回り その伍


 その後、あたし達は良子さんの部屋に行き、良子さんがお話を書いているところを見せてもらった。パソコンに向かって、キーボードをたたくのかな?って思ってたけど、ちがった。机の上には、原稿用紙の束が置いてあり、ペン皿に、何本もの鉛筆と、消しゴムと付箋が並べてあった。そして、おっきな国語辞典と、漢字辞典、インターネットで検索するためのタブレットが置いてあった。


「わたしは、自分の書いた文章がすぐ読める方が、続きを書きやすいのです。一つのお話を書きあげるのに、何日もかかりますから、前に描いたお話の内容が混乱してしまうこともあるのです。特に伏線をたくさん作って、ワクワクするようなお話を作る時は苦労します。前に作った伏線は、どうだったかな?と思い出せなくなる時もあるのです。なので、まずお話を作る時は、原稿用紙に描きます。そして、章ごとにこうして付箋を貼って、見やすくしています。」

良子さんが見せてくれた原稿用紙の束は、およそ千枚分もあるそうだ。そこに、びっしりと付箋が貼られて、メモ書きがしてある。

「書いている途中で、いいアイデアが浮かぶことがよくあるんです。そういう時は、アイデアを付箋にメモして、貼っておくんです。

 では、今日は、サムライ・ガールズの第3章の続きを書きます。サムライ・ガールズは、現代の小学校を舞台に剣道にみいられた五人の少女が大活躍をするお話です。序章は5人のサムライ・ガールズの出会い。第1章は、学校の不良たちとの対決。第2章は、学校荒らし達を捕まえるお話。そして、第3章は、町の暴力団の抗争に巻き込まれるお話です。今は、暴力団にさらわれた友達を助けに行く場面を書いています。」

 ん?どこかで聞いたことがある?・・・あっ!じいちゃんの話だ。でも、みんなに話したのは、じいちゃんが高校時代に県大会優勝をしたことと、仲間と洪水を止めた話だけだったはず。暴力団の話は、みんなにはしていなかったはずだけど・・。みんなを見ると、興味津々で良子さんの話を聞いている。やっぱり知らないんだ。じいちゃんを見ると、顔が赤い。母さんは吹き出しそうなのをこらえている。

「では、始めます。退屈をしたら、棚の本でも見ていてください。」

本棚には、たくさんの文庫本が並んでいた。一列では収まらないので、2列になっているところもある。現代小説や、ラノベもある。意外と、明治時代の小説もあった。


 机の方を見ると、もう、良子さんは集中状態になっていた。鉛筆をカリカリ動かし、途中で止めては、辞書を広げる。タブレットで、何か検索したかと思うと、付箋にさらさらとメモを取り、机の前の本棚に貼っておく。じっと考え込んでいたがと思うと、原稿の前の方を探して読みだす。そしてまた、続きを書く。

 クミさんの時は、一枚の絵が形になるのに数十分だったけど、良子さんはなかなか進まない。原稿用紙1枚を埋めるのに、40分以上かかった。2枚目に入り数行書いたところで、良子さんが、はっと気づいたように周りを見回した。

「すっ、すみません。皆さんがいらっしゃることをすっかり忘れてしまっていました。

 あっ、あの、退屈だったでしょう?こんなところを見ていただいて、ありがとうございます。」

良子さんは、慌てて立ち上がると、みんなに礼をした。

 あたしたちは、自然に拍手をしていた。

「良子さん。とても素晴らしい集中でしたよ。きっとあなたの頭の中では、お話のキャラクターが縦横無尽に動き回っていて、あなたはそれをうまく書きとめようと、必死だったのでしょうね。」

母さんが優しく言葉をかける。

「はっ、はい。その通りです。頭の中では、主人公たちの動きや、話が映画を見ているように見えるのですが、それを言葉にするとなると、どうしてもうまくいかなくて。それに、映像の途中で、前の場面や、今後の場面がふっと浮かんできて、それも忘れないようにって思うと、頭がぐちゃぐちゃになって来るんです。」

「うむ。その気持ちは、よくわかるぞ。わしも強い相手と立ち合うときは、相手の動きを探ろうと必死になる。そして、相手の狙いを考えたり、それに応じる技を考えたりしているうちに、頭がぐちゃぐちゃになるもんじゃ。」

「おじい様もですか?」

「うむ。みんなそうじゃよ。」

じいちゃんが、優しくほほ笑んだ。

「ありがとうございます。頭がぐちゃぐちゃになるのは、あたしの力が足りないせいだと思っていました。」

「それは、その通りじゃよ。

 しかし、力が足りないのは、良子さんだけではないということじゃ。わしらも、剣持先生や静子先生も、良子さんのお父さんも、力が足りない点では、同じじゃよ。じゃから、みんな努力するんじゃ。足りない力を、少しづつつけていくために頑張るんじゃよ。

 己の力を伸ばす方法は、ゲームの攻略とは訳が違う。テストで100点を取るのとも違うんじゃ。ゲームなら、攻略本を見て、その通りにすればよい。テストなら、出題の傾向を探って、模範解答を覚えれば済むことじゃ。

 しかし、己の力を高めることはちがう。参考書も何もなく、ただひたすら己と向き合うしかないんじゃ。良子さんの努力と集中は、素晴らしいものじゃった。」

じいちゃんがもう一度拍手した。あたし達も良子さんに拍手を送った。良子さんは赤い顔をして、涙ぐんでいた。

 そのあと、良子さんもサキに導かれて、モミジとつながることができた。

 お読みいただき、ありがとうございます。

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