竹刀の剣士、異世界で無双する ハルミ編 その3
「竹刀の剣士、異世界で無双する」の第2部です。ヨウスケの娘のハルミとその周りの人たちの活躍をお楽しみください。
この小説は、毎週木曜日に更新する予定です。
3 おおたちまわり
家に帰って、じいちゃんとばあちゃんとお昼ごはんを食べた。今日のおかずは、ばあちゃん特製だし巻き玉子に、きんぴらごぼう。ばあちゃんのだし巻き玉子は、甘くっておいしい!ちょっとピリッとするきんぴらごぼうと交代で食べると、ご飯がすすむ!
「ばあちゃんのだしまきたまご、だいすきー!」
「うむ、昔からばあさんは料理が上手かった。」
じいちゃんが、さらりとノロケた。
「ほほほっ。たくさん食べなさい。」
「ごちそうさまー。」
あたしは、お手伝いの食器運びをしてから、遊びに出た。
「じんじゃに、あそびにいってくるねー。」
「はい、気を付けて、行ってらっしゃい。」
ばあちゃんに見送られて、神社の境内に遊びに来た。ユカちゃんとナナちゃんも来たので、三人で遊ぶ。境内で石けりや鬼ごっこをしたり、神社の裏の森で木登りや虫探しをしたり、とても楽しかった。
いっぱい遊んで、ちょっと疲れたなーって、境内のベンチで休んでいた。境内の時計を見ると、もう3時半。そろそろ帰ろっか、と話していると、五人の男子が鳥居をくぐってやって来た。今日ケンカした2年生もいる。他の子はオレンジ名札の3年生と黄色名札の4年生。あたし達を見て、ベンチを取り囲んできた。
「こいつが、1年のハルミです。」
2年生が、あたしを指さす。
「ほう。お前がハルミか。ソウスケが、世話になったな。お礼に来てやった。」
4年生の一番大きい子が、威圧してきた。ふーん、2年の子はソウスケっていうんだ。でも、なに?こいつ?テレビの見すぎじゃない?あたしは、ジロリとにらんでやった。
「おめえ、生意気だな。あやまれば、許してやるぞ。」
もう一人の4年生が、おどしてきた。あたしは、左右のユカちゃんとナナちゃんを見る。ユカちゃんもナナちゃんも怖がっていない。それどころか、あたしを見てうなずいている。これは、あれかな?スケさん、カクさん、やってしまいなさい!っていうテレビドラマの定番かな?
「はあ~。」
あたしは、ため息をついた。
「みかみせんせいに、ケンカするなって、いわれたんだけど。」
「そうよ~。ケンカは~ダメよ~。」
ナナちゃんがのんびりと言う。
「わたしたち、ケンカはしたくないんだよ。」
ユカちゃんが、話しかけた。
「じゃあ、あやまれ!三人で、土下座しろ!そしたら許してやる。」
4年生の大きい子が、叫んだ。おそらく、この子がボスだろう。
「そうだ、そうだ!土下座しろ!」
他の子も、口々に叫んだ。
「土・下・座! 土・下・座!!」
なんか、変な合唱になった。
「でも~、あたしたち~、なんにも~わるくないのよね~。」
ナナちゃんが、答える。いい度胸だ。
「うるせー!おめーらのせいで、おれが先生に、おこられたんだ!どうしてくれるんだ!!」
ソウスケが、叫んだ。
「あなたがサキちゃんをいじめたからでしょ。おこられて、あたりまえよ。」
あたしが、言い返した。
「生意気な1年だな。もういい。ケガしても、知らないからな!」
ボスが言うと、ほかの子は拳を作って身がまえた。
「ユカちゃん、ナナちゃん。あぶないから、はなれてて。」
あたしが立ち上がると、ユカちゃんとナナちゃんも同時に立ち上がり、ベンチの後ろに行く。
「おい!逃げるな!」
3年生がナナちゃんを追いかけようとしたところを、あたしが周り込んで立ちふさがる。
「はい、ざんねん。あなたのあいては、あたしだよ。」
あたしは、両手を広げて、3年生の前に立った。
「たかし!やっちまえ!」
4年生のボスが叫ぶ。この子はタカシっていうのか・・・。ってミオちゃんをいじめてたのはこいつかな?
「あなた、タカシっていうのね。1ねんのミオちゃんをしってる?」
「おおっ?ミオ?」
おっ。なんか動揺した。
「たかし!余計なことをしゃべるな!ぶんなぐれ!」
ボスがまた叫ぶ。ふーん、ミオちゃんをいじめたのは、タカシひとりじゃなくって、こいつらみんなグルなんだ。
「あなたたち、サキちゃんやミオちゃんだけじゃなく、ほかのこにもなんかしたのね?」
「うるせえ!おめえら、ボコボコにしてやる!」
ボスが、横から殴りかかってきた。あたしは1歩下がってかわす。ボスは勢いあまって、つんのめった。
「おっと、っと、っと。」
「だいすけ!大丈夫か?」
なるほど、ボスはダイスケって言うのね。
「お前らも、かかれ!」
振り向きながら、ダイスケが叫んだ。
「このやろう!」
斜め前から、4年生の子が走ってきて、回し蹴りを出す。あたしは、身をかがめて蹴りをいなした。そのまま、手と体を伸ばして4年生のわき腹を押す。4年生は、見事に転んだ。
「痛ってー。」
「ひろしっ!大丈夫か?」
もう一人の4年生が駆け寄って、助け起こした。こいつはヒロシね。
「ああ、かずま。大丈夫だ。」
「ハルちゃ~ん!」
後ろから、ナナが声をかける。
「このこたち~、ダイスケグループよ~。がっこうで~、わるいことを~してるんだって~。おねえちゃんが~いってた~。」
なるほど、遠慮は無用ってわけだ。あたしは、五人から目を離さずに答えた。
「ありがとう、ナナちゃん。こいつらは、あたしがやっつける。」
「でも、できれば、けがはなしでたのむよ。」
ユカちゃんも声を上げた。
「やってみる!」
たしかに、ケガはだめだ。こちらが正しくても、ケガをさせたら悪者になるって、母さんからも、剣持先生からも教わった。
「くっそー!みんな、一斉にかかれ!」
ダイスケが、大声をあげて走ってきた。ほかの四人も、それぞれの方向から突っ込んでくる。あたしは、ちらっと後ろを見てベンチの位置を確かめると、タイミングを計った。2、1、今!五人の手があたしに届く瞬間に、あたしは後ろに跳んだ。そして、ベンチに着地。その反動を使って、すかさず思い切りジャンプ。体勢を崩した五人の上を跳び越えた。いくらあたしでも、4年生の男子の頭を跳び越えるなんてできない。ベンチの高さがあったことと、五人が小さいあたしをつかもうと、前かがみになっていたからできたんだ。跳び下りたところは、ダイスケの後ろ。あたしはすぐに振り返り、ダイスケのお尻を押した。五人は団子になっていたから、ダイスケに巻き込まれて地面につぶれた。
「2ねんのソウスケ、3ねんのタカシ、4ねんのカズマとヒロシとダイスケ。なまえとかおはおぼえたわ。あたしは、あなたたちにけがをさせたくないの。もう、ひきなさい。」
あたしは、ダイスケたちを見下ろしながら言った。
「そうだね、まだやるなら、おとなをよんでくるよ。やめるなら、わたしたちもだまっていてあげるよ。」
「でも~、1ねんせいに~いじわるするのは~、だめよ~。」
ユカちゃんとナナちゃんも、もう終わりにしよう、と言ってくれた。五人はつぶれたまま動けない。
「ユカちゃん、ナナちゃん、ケガはしていないはずだから、ほうっておいて、もうかえろう。」
あたしがユカちゃんとナナちゃんに声をかける。
「そうだね、もうかえろう。」
「じゃ~ね~、さようなら~。」
あたしたちは、三人で手をつないで帰った。
「すごいジャンプだったね。あんなにたかくとべるんだ・・。」
帰り道にユカが話しかけてきた。
「あたしも、びっくりした。もう2どとできないよ。」
それだけ、必死だった。後ろに跳んでベンチに逃げるとこまでは考えていたけど、あとは勝手に体が動いたのだ。
「けいこをしていると、じぶんでもびっくりするわざがでることがあるって、けんもちせんせいがいってたよ。」
「そっか~。ハルちゃんも~ひっしだったんだ~。」
ナナちゃんが、うなずいている。
「あいては、じょうきゅうせいで、ごにんもいたからね。からだのおおきいひともいたし。こわかっただろう?わたしたちをまもってくれて、ありがとう。」
ユカちゃんが頭を下げた。そして、頭を上げると、きりっとした顔をしていた。
「うん。わたし、きめた!もういちど、けんどうをならう!」
と、ユカちゃんが力強く言った。
「え~?やめときなよ。くさいし、いたいし、あついし、くるしいよ?」
あたしは、引き留めた。
「でも、ハルちゃんにばかりあぶないことをさせるのは、いけないんじゃないかっておもうんだ。」
「え~?あぶないことがあたりまえ?それは、ちがうんじゃ?」
「ちがわない!しょうがっこうにはいって、すぐ、こんなことになったんだよ。きっとこれからもあぶないことになる!」
ユカちゃんが、きっぱりと言い切った。
「そうね~。ダイスケグループの~ほかにも~、わるいグループがあるって~、おねえちゃんが~いってた~。」
ナナちゃんがいらない情報を出した。
「え~?そいつらとたたかうの?」
あたしがげんなりすると、ユカちゃんもナナちゃんもあたしの前に回り込んで、あたしの目を見つめた。
二人がそろって、腕を後ろに組んで、前かがみにあたしを見つめる。なんか、とっても可愛い!
「ふふっ?いやそうにいってるけど、めがかがやいているよ?」
「ハルちゃんの~めは~、うそを~つけないもんね~!」
「「だから、あたしたちも、たたかうよ。」」
二人そろって、こぶしを突き上げた。ユカちゃんのマッシュショートとナナちゃんのボブカットがゆれて、日光にキラリと光る。なんか、テレビドラマの戦隊結成みたい。こんな二人がめちゃ可愛い!
「「おうちにかえって、おかあさんたちにはなさなきゃ!」」
「ちょっとまって!ケンカのことをはなしちゃだめだよ。あぶないからってとめられるよ。」
あたしが注意すると、
「わかってる~。」
「もういちど、ハルちゃんとがんばりたいんだ!ってはなすから、だいじょうぶ。」
二人ともいい笑顔で答えた。
お読みいただき、ありがとうございます。
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